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近藤一樹に「火消し特性」があるか、データに語らせようとしたところ、……

 スワローズにやってきた2016年夏から、近藤一樹という投手の登板を、ハラハラドキドキしながら注視しているわけですが、自分の見る限り「この男には、火消し特性がある」という強い印象があります。
 イニングあたまからの登板よりも、先行する誰かがつかまるなどしてイニング半ばからマウンドに上がるときのほうが、好成績を残しているような「印象」がある、という程度の意味ですが。

 こうした場合、根拠を見つけて「データに語らせる」というのが常道ですが、われわれ一般人が追加の出費なしで閲覧することのできる場所には「イニングあたま/イニング半ば」登板別で成績が集計されているものが見つからなかったため、「なければ自ら集計するまで」と、作業にかかりました。
 ベースとして、nf3さんのところで2016年以降の当該投手の全投球成績を表示して、登板した200試合余をピックアップ。その一つひとつについて、日刊スポーツのサイトで「ニッカン式スコア」を閲覧して、「イニングあたま」「イニング半ば」「イニング跨ぎ後」に3分類して、成績を集計しました。

 最初に思いつく指標は、防御率ですが、……。
【2016年】
回当初 【試】8 【回】7.1 【責】3 【防】3.68
回途中 【試】- 【回】- 【責】- 【防】-
跨ぎ後 【試】3 【回】4 【責】1 【防】2.25
【2017年】
回当初 【試】37 【回】36.1 【責】23 【防】5.70
回途中 【試】17 【回】10 【責】1 【防】0.90
跨ぎ後 【試】9 【回】9 【責】5 【防】5.00
【2018年】
回当初 【試】57 【回】55.2 【責】27 【防】4.37
回途中 【試】16 【回】9 【責】2 【防】2.00
跨ぎ後 【試】12 【回】12 【責】2 【防】1.50
【2019年】
回当初 【試】52 【回】49.1 【責】18 【防】3.28
回途中 【試】5 【回】2.1 【責】1 【防】3.86
跨ぎ後 【試】2 【回】1.1 【責】2 【防】13.50
【2020年(9/12時点)】
回当初 【試】11 【回】10.1 【責】7 【防】6.10
回途中 【試】5 【回】3 【責】1 【防】3.00
跨ぎ後 【試】2 【回】2 【責】0 【防】0.00
 ……という具合に、この場合、「防御率」という指標は、役立たずです。
 なぜなら、回途中からの登板の場合「『仕事を終える』までに取る必要のあるアウト数」の平均が回当初登板と比較して少ないため、「自分が出した走者に生還された数」である「失点」の期待値も小さくなり、「自責点」ひいては「防御率」の数値が小さくなるのが当然だから。

 そこで、イニング半ばからのほうに厳しくなるように、また、登板の成功/失敗の印象に多少なりとも近づけるために、回途中のほうだけ、防御率(的数値)算出のために、自責点ではなく、自責点+【登板時に残されていた走者のうち、登板中に生還された数】で、集計し直してみます。
【2017年】
回途中 【試】17 【回】10 【modified責】7 【modified防】6.30
【2018年】
回途中 【試】16 【回】9 【modified責】11 【modified防】11.00
【2019年】
回途中 【試】5 【回】2.1 【modified責】7 【modified防】27.00
【2020年(9/12時点)】
回途中 【試】5 【回】3 【modified責】2 【modified防】6.00
 と、こんどは、なんともイニング半ば登板に厳しすぎる数値に。
 あたりまえの話で、分母になる投球回が少ないため、1回だけでも失敗すると、すぐに数字が跳ね上がってしまい、こちらも指標としては、ものの役に立ちません。

 登板の成功/失敗の印象に近い数字として、つぎに思いついたのは、「登板時に残されていた走者を生還させるか、自責点を記録した場合」=【失敗】、「登板時の走者の生還も、自責点もない場合」=【成功】と定義し、【成功率】=【成功数/登板数】を求めてみる、というもの。
【2016年】
回当初 【試】8 【成功】7 【失敗】1 【成功率】.875
回途中 【試】- 【成功】- 【失敗】- 【成功率】-
跨ぎ後 【試】3 【成功】2 【失敗】1 【成功率】.667
【2017年】
回当初 【試】37 【成功】27 【失敗】10 【成功率】.730
回途中 【試】17 【成功】13 【失敗】4 【成功率】.765
跨ぎ後 【試】9 【成功】5 【失敗】4 【成功率】.556
【2018年】
回当初 【試】57 【成功】44 【失敗】13 【成功率】.772
回途中 【試】16 【成功】9 【失敗】7 【成功率】.563
跨ぎ後 【試】12 【成功】10 【失敗】2 【成功率】.833
【2019年】
回当初 【試】52 【成功】40 【失敗】12 【成功率】.769
回途中 【試】5 【成功】1 【失敗】4 【成功率】.200
跨ぎ後 【試】2 【成功】1 【失敗】1 【成功率】.500
【2020年(9/12時点)】
回当初 【試】11 【成功】7 【失敗】4 【成功率】.636
回途中 【試】5 【成功】4 【失敗】1 【成功率】.800
跨ぎ後 【試】2 【成功】2 【失敗】0 【成功率】1.000
 こうしてみると、注目すべきは2017年のイニング途中登板の成功率の高さで、際立っています。定義上「無走者スタート」であるイニングあたまからの登板よりも良い数字を残しています。
 「平均1.58人(=27人/17)の走者が残された場面でマウンドに上がり、平均1.76(=30/17)のアウトを取ることが求められる」状況下で、「17試合中13試合で走者の生還を許さない」というのは、驚異的といってよいと思います。

 ことここに至って、自分の中での「近藤一樹には、火消し特性がある」という印象が2017年の活躍によってかたちづくられたものであると気づいたという次第。
 また、こうしてみると、今季のこれまでの成績は「火消し」としてわれわれファンの心をわしづかみにした2017年の成績とよく似た傾向を示しているので、「まだまだこれから」との思いを新たにしたという次第でした。




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