宇都宮 勝晃 / Shhh inc.

co-founder, designer @Shhh inc. / デザイン会社 Sh…

宇都宮 勝晃 / Shhh inc.

co-founder, designer @Shhh inc. / デザイン会社 Shhh(シー)の共同創業者、デザイナーです。書くのは年に一回、年末だけ。

最近の記事

2023年の振り返りと楔刺し(年間ベスト付)

2023年の個人的な振り返りを書き、意図的に表に出してみようと思う。 今年は自身にとって変化が大きい年だった為、言語化する事で一度自分に楔を刺しておきたいという意図が主。多分こんな事はもうしないと思うし、後になって消すかもしれない。 (自分に向けた言語化がメインなので文体も簡潔にしている、雑に感じられたら許して欲しい) 2023年の実績・受賞・メディア・個人仕事デザイン実績 Uzabase様『FORCAS』サイト制作 岩手町様『きこえるいわて』サイト制作 松竹株式会社

    • 2022年に観て、良かった映画(振り返り)

      今年良かったと思う作品の傾向の一つとしては、「余白とは、こうも豊かな感情を受け手の中に生むものなのか」という発見体験だったかなと思う。 その意味で象徴的だったのは『春原さんのうた』『MEMORIA メモリア』『ジャンヌ・ディエルマン』の三作。 『春原さんのうた』 / 監督=杉田協士劇中の、常に開かれた扉の光景が忘れられない。 開かれた扉から入り、肌を撫で、いたわる風の存在。 観ている間、やさしい余韻だけが、ずっと自分の身体の周辺をふわふわと漂い続けていた。よく説明のつかな

      • 2022年読んで、良かった本(振り返り)

        デザイン(というよりもどちらかといえば表現と言った方が正しいか)に関して言えば、『かざる日本』で出会った「貧しい簡素」と「豊かな簡素」の対比。 そして「かざる」行為が本質的に持っている「聖性」と「生」についてが、今年だけでなくこれからも影響を与えつづける、大きな出会いだったなと思う。 『かざる日本』 / 橋本麻里日本美といえば、削ぎ落とされたミニマムで清潔な美。そう思っていないか?囚われていないか? が、削ぎ落とすだけの簡素であれば、実はさほど難しい事ではない。 それを筆者

        • 2022年訪れ、良かった展覧会(振り返り)

          開催前から楽しみに待ち続けた大型の展覧会もあれば、事前情報なしに「なんとなく」で出向いたらあまりに素晴らしかった、というものもあり、展覧会とは出会いの場だなといつも思う。 作品と対峙する時間とは、自分が試される時間でもあり、再発見する時間でもあり、自分が変わる時間でもある、というのがやっぱり楽しい。 李禹煥 / 国立新美術館2022年、一番楽しみに開催を待ったのが李禹煥の回顧展。 彫刻や絵画、表現形態は多様に渡れど、一貫して共通するのは「関係性」というキーワード。 そこに

        2023年の振り返りと楔刺し(年間ベスト付)

          2022年出会った音楽(振り返り)

          普段自分はSpotifyで音楽を聴いてるのだけど、今年面白いなと思ったのが12月に入ってプラットフォーム側から届く例の「まとめ」。 再生回数の多い曲と、心に残った曲とはこうも乖離があるのかと思う面白さを見つけられた。数は真理を表すわけではない、をひとつ証明してもらったという事で。 こうして挙げてみると今年は「ピアノ」と「歌声」に特に惹かれた一年だったな、と思う。 Songs for Berta / Sandrayati, JFDR, Damien Rice今年出会って一番心

          2022年出会った音楽(振り返り)

          The Best Movies of 2021(2021年振り返り:映画編)

          『ドライブ・マイ・カー』 濱口竜介演技とは、役者とは、映画とは、こんなにも驚きに満ちた時間を作れるものなのか!息を潜めながらその瞬間に立ちあえた、至福の3時間だった。 みさきがサーブを運転し続けるあの永遠のような時間や、二人の関係性が演劇的マジックを生み出すあの公園のシーン、そしてあの長回しの高槻のシーン、、、。 本作は未だ、ふとした瞬間に、各シーンが脳内で再生されるときがある。それも頻繁に。 きっと自分の身体の中に入りこみ、棲みついてしまった作品なんだろうと思っている。そん

          The Best Movies of 2021(2021年振り返り:映画編)

          The Best Albums of 2021(2021年振り返り:音楽アルバム編)

          今年は良いアルバムが多すぎて、10枚選ぶこと自体が悩ましかったのだけど、2021年は新たに現れたアーティストたちの音楽が良すぎるあまり、結局ニューカマー表彰祭のようになってしまった。 音楽は、あらゆる芸術の中で最も速く社会の変化を敏感に感じ取り、それを反映、更新していくものでないかと思う。 そう考えると、それぞれのアーティストたちの背景を探ることが、もしかすると音楽を知るうえで一番の手助けになるのかもしれない。 Cleo Sol / Mother今年一番、何度も繰り返し聴き

          The Best Albums of 2021(2021年振り返り:音楽アルバム編)

          The Best Books of 2021(2021年振り返り:書籍編)

          2021年に読んだ本から、特記しておきたい10冊の本を。 今年は『こここ』や『壌(JYOU)』といった、福祉をテーマとするメディアサイトの仕事に携わらせてもらったこともあり、自分のマジョリティ性への無自覚さと無知さを知る機会が得られたのは、まず大きかったと思う。 仕事を通じて、学び直しのきっかけが与えられる事ほど嬉しいことはないし、こういう機会はなるべく今後も増やしていきたい。 後は、よりプリミティブな信じる心や祈りがもつ、有無を言わせない強さをストレートに伝えられた本に惹

          The Best Books of 2021(2021年振り返り:書籍編)

          The Best Exhibitions of 2021(2021年振り返り:展示編)

          2021年に訪れ、記憶に残った展示を。 共通項としては、日本的な美意識、特に相対化された視点で日本的な美とは?へ回答が示されている作家と、圧倒的な才能や好き!が突き抜けた作家。この二つにどうやら自分は惹かれた一年だった模様。 これは今年一年に限らない気もしなくもないが、まずは2021年の共通項らしきものとして。 篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち自然の中に漂い、とどまらず、移ろうもの。 それを墨の濃淡と線だけで、抽象画として表していく。 篠田桃紅の独自のスタ

          The Best Exhibitions of 2021(2021年振り返り:展示編)

          2020年振り返り — 価値観を新しくした映画作品10本まとめ

          2020年に出会って、良かったと思う映画作品を10本挙げてみました。 自分が映画を観る理由は、単なる現実逃避癖が8割くらいなのだけど、残る2割は「自分とはほど遠い(と観る前は思っている)他者の立場に、新たな共感と想像力とを養ってくれるため」という理由が一つある。 自分の無知を知り、偏見のほどを知る。そのためには価値観を改めるきっかけが必要で、優れた映画作品にはかならずそのための問題提起があるからだ。 それともう一つ、映画でしか体験できない貴重なものとして、「映像でしか語りえ

          2020年振り返り — 価値観を新しくした映画作品10本まとめ

          2020年振り返り — 何度も聴いたアルバム10枚まとめ

          2020年に出会えて何度も聴き、良かったと思うアルバムを、10枚挙げてみました。 仕事のときは音楽を聴くことはわりと少なく(TBSラジオリスナー)、夜や週末など限られた時間が多いのだけど、2020年はやっぱりキラキラとした音楽より、音数の少ない穏やかで暖かなサウンドを求めて再生する傾向があったと思う。 特にシンプルな「歌声」に救われたというか、声によって気持ちに希望を与えてくれたり、平穏を取り戻させてもらう事が多かった一年だったなという印象。この感覚はなんとなく多くの人とも

          2020年振り返り — 何度も聴いたアルバム10枚まとめ

          2020年振り返り — 分からなさを分かるための本10冊まとめ

          2020年に出会えて良かったと思う本を、10冊挙げてみました。 自分は普段デザインを仕事としていますが、すべてデザインの「デ」の字も出てこない10冊です。ただこうしてまとめてみると「人のしれなさ」をより知ることだったり、「世界の分からなさ」をより知ることだったり、「分からなさを分かるための10冊」みたいなテーマ設定が出来るなと思いました。 振り返るとあまりに分からなすぎる事に直面してしまったこの1年は、よりデザイン「以前」の骨や血に相当する部分を求める傾向があったのだろうと

          2020年振り返り — 分からなさを分かるための本10冊まとめ

          手近なデザインでなく「遠くを参照」する。ShhhのCIデザインのプロセス

          Shhh(シー)は、代表であるクリエイティブ・ディレクターの重松と共同で昨年12月に設立した、クリエイティブ・ディレクションとデザインの会社です。そのため会社のCIデザインも2人で行っていきました。 CIデザインとは、自分たちが目指すビジョンを共有できるよう、ビジョンの視覚化を中心に変換していくプロセスです。 そのためCIデザインと向き合う事とは、創業という「なぜ会社を作るのか?」「どのような会社にしていきたいのか?」「それによってどう社会と関わっていくのか?」への問いを深

          手近なデザインでなく「遠くを参照」する。ShhhのCIデザインのプロセス

          Hello, note. / 2019年振り返り(Webデザイン編)

          昨年末から始めたnoteでの自己紹介兼ねた「2019年に良かったもの10選」。 今回は最後となる「2019年に出会ったWebデザイン」です。これまでは自分の趣味的なものばかりを挙げてきたので、最後くらい自分が普段している事に関係するテーマで挙げてみます。 ちなみに優れたサイトを挙げだすと山のようにありすぎてキリがないため、今回は部門的に切り分けて選ぶことにしました。 またここでの良いサイトとは、単純にデザインやクラフトの目線で優れたもの、という意味です。総合的な視点からの評

          Hello, note. / 2019年振り返り(Webデザイン編)

          Hello, note. / 2019年振り返り10選(映画編)

          昨年末から始めた、noteでの自己紹介兼ねた「2019年に良かったもの10選」。今回は「2019年に出会った映画」です。 アマンダと僕 / ミカエル・アース 2019年はミカエル・アース監督と出会った年だった。劇場で心揺さぶられ、その後すぐに妻を連れてもう一度観に行った。二度劇場で観たのは、今年はこの作品だけ。 例は違えど、これから先自分も同じように不条理な悲しみに突然出会うことになるかもしれない。 その中で絶望せず、自分を傷つけず、他者を巻き込む傷つけあいへ発展させず

          Hello, note. / 2019年振り返り10選(映画編)

          Hello, note. / 2019年振り返り10選(展示編)

          明けましておめでとうございます。 昨年末から始めたnote.から、まずは自己紹介を兼ねて「2019年に良かったもの10選」を挙げるシリーズ。 3回目は「2019年に出会ったアート・展示編」です。 黒田泰蔵 白磁@ヴァンジ彫刻庭園美術館 ずっと直で見てみたいと思っていた、陶芸家・黒田泰蔵の白磁。 ぎりぎりまで削ぎ落とされ、高度に抽象化された円筒の白磁が語るのは、器というより一見器のように見える目の前の円筒を触媒とした「白の風景」と言う方がしっくりくる。 私の円筒の理想は、

          Hello, note. / 2019年振り返り10選(展示編)