久々にはまった小説

子供の頃から「活字中毒」だった私。
ジャンル問わず読むし
好きな本も色々とあるけれど、「はまった」作品はさほど多くない。
そんな私が、久々にはまったのが…

『小説家になろう』で連載中
天壱先生の
『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜』
https://ncode.syosetu.com/n0692es/

もうね、ドはまり、しました。
私、活字中毒、とはいえ、コミックはあんまり好きじゃない。
小説版とコミカライズ版が出てたら、迷わず小説版を買う。コミックはめったに買わない。
だけど、この小説、書籍化もコミカライズもされてるんだけど
迷わず両方買った。

※以下、ネタバレを含みます

ゲーム世界のラスボスに転生した王女プライドのお話。
「悪役令嬢」として「異世界転生」する話、はよくあるけれど
多いのは「ゲーム世界の悪役令嬢に転生した女の子が、ゲーム知識を生かして断罪を回避し幸せをつかむ」というストーリー。
が、このお話はちょっと違う。

ラスボスに転生したプライドは、「ゲーム通りに自分が断罪される」ことを前提に、「ゲーム内のプライドが、傷つけたり苦しめたり死に追いやったりした『攻略対象者』や、その他の登場人物を未然に救う」
自分の幸せ、ではなく、『自分以外のゲーム登場人物』の幸せを求める、ところが異色。

結果、第1部では
ゲームでは「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王」(であるはず)のプライドは、「ヒロイン」にも「攻略対象者」にも、その他の多くの「モブキャラ」にも、愛され、
ゲームでは、ラスボスによって苦しめられた5人の「攻略対象者」を攻略して救い、彼らとともにラスボスを倒す(はずの)「ヒロイン」は、
登場人物で唯一救われなかった「ラスボス」を攻略し、攻略対象者や登場人物たちと協力して、ラスボスの「断罪」を回避して救う。
まさしく「情けは人の為ならず」である。

現在、連載中の第2部は、ゲームの続編(ただし、ゲーム開始の3年前)が舞台だが
ゲーム内ではすでに死亡している「第1部のラスボス」プライドが、
第2部の「攻略対象者」を次々救っている。
「第2部のラスボス」はうっすら影が見えているが、いまだ全体像はつかめない。
「第2部のヒロイン」は登場はしているものの、ゲームにそった動きはない。
1部と同じように、2部も「ラスボス攻略ルート」となるのか、今後の展開が楽しみである。

その他、第3部以降の続編キャラもちらちら見えており、まだまだ長く続きそうなお話である。天壱先生には、ぜひ完結まで頑張っていただきたい。

さて、ここから感想をいくつか。

☆お話のあちこちに伏線がちりばめられており、ずーっと後になって回収される。「アレが、ココにつながるのか!」と驚くことも多い。
また、登場人物は事情が分かっているのに、読者にはそれが明かされず、後になって明かされる場面も多く、読者としては続きが気になって仕方ない。
webでの長編連載小説ではあるが、最初からしっかりとした構想ができているのであろうと思われる。それが、この作品の読みごたえにつながっているのかと思う。
個人的に気になっているのは、
「プライドがステイルに毎年贈っている誕生日プレゼントは何?」

「カラムが騎士団入団時に親から突き付けられた条件って何?」
それから
「ヴェスト叔父さまの特殊能力は?」

☆同じ場面がプライド視点と、別の登場人物視点で並べて描かれることで
双方の心情がよくわかる。双方の思考が食い違ったりするのも面白い。
ただ、webでの連載小説であり1話の長さが限られるため、どうしても物語の進行が遅くなるという側面もある。作者は更新頻度が密なためありがたいが、そうでなければ、話の展開が把握しづらいかもしれない。

☆本来のゲームでの出来事が、登場人物の「悪夢」という形で描かれる。
目が覚めたら忘れてしまう夢だが、起きたら泣いてたり、「嫌な夢を見たきがする」という感情だけが残ったり…
その後に幸せな現実が描かれ対比される。
あとがき部分に「いま、〇〇は幸せです」と書かれ、読者側も「よかったね」とうれしくなる。
だが、「奪還戦」の最中には、この「悪夢」を見る登場人物は、夢の中で自分の行動に「なぜこんなことを?」と疑問を持ち、抵抗し、
そして目覚め
夢の内容はおぼえていないものの、「悪夢にうなされたな」と思いながら
「プライドの奪還」という幸せを目指して突き進んでいく。
奪還戦中に描かれる「悪夢」つまりゲームの結末は、当時のプライドが望む「幸せの形」であり、物語がどう進んでいくのか、ハラハラした。

☆プライドがもつ「前世のゲームの記憶」
そして特殊能力としての「予知能力」
プライドは「ゲームの記憶」と「予知能力」は別個のものと認識している。
だが、
プライド自身、はじめから「ゲームの記憶は曖昧」と言っている。
その上、成長に伴って前世の記憶も薄れてきている。
ゲームの登場人物も、本人に会うまで思い出さない。
ゲームで起こる事件も、「その時」になって記憶のフタが開く。
もともと曖昧なゲームの記憶が、登場人物に会うことではっきりと頭に浮かぶ。
うーん…これ、「予知能力」の一種と考えていいんじゃないだろうか…?
もともと記憶が曖昧なものって、きっかけがあってもはっきりとは思い出さないんじゃ…?
そういう類の「予知能力」だと割り切ったら、プライドも周囲も楽なんじゃないかな。
プライドは、ゲームの知識は、事実かどうかわからないから言えない、と思ってる。でも、予知だって、未来のことだから、変えることができる。
ゲーム世界と現実との間に差が出てきているのも、「予知していた事実が変わった」じゃだめなのかな?
第1部で、プライドが知っている「エンディング時のティアラの予知」と実際に「ティアラが視た予知」が違ったのも、10年の間に状況が変わったことで、予知も変わった、で、いいじゃんね?

☆プライドの「自己肯定感」の低さ。これは、幼いころの環境と「自分はラスボス」という認識にあるんだろう。
これだけ、周囲に大事にされ愛されているのに、本人には伝わっていない。
プライドは「言わなきゃわからない」タイプだね。いや、「言われてもわからない」かも。
周りの男性陣も、子供のころから王族として育てられた義弟と、未成年のころから男社会で生活している騎士たち。年齢の割に女性慣れしていない。
「自分なんかが愛されるわけない」と思っている無邪気な王女が、初心な男性陣に突撃する。
自分の人生を変えたといってもいい憧れの王女に突撃されて、あたふたする男性陣。
いつまでたっても、先に進まない気がする…
「婚約者候補」なんて肩書がついていても、その意味をホントの意味で理解してるのは、カラムだけなんじゃ?
たぶん、プライドもわかってない…

☆時々挟まれている「感謝話」「特殊話」
本編とは全く関係なかったり、本編につながる内容だったり、本編の補足だったり、別視点の物語だったりと色々だが
これはこれで面白い。
ぜひまとめて書籍化してほしい。
あと、書籍化で省かれたのであろう部分も「こぼれ話」として集めて書籍化してほしいな。

とまあ、色々書いてみました。
これからも、連載、楽しみにしています。


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