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PKは技術です。~PKは運か技術か?~

2022年12月6日。
日本代表はクロアチア代表にPK戦の末、敗北した。
その約2週間後、2022年12月19日。
アルゼンチン代表はフランス代表にPK戦の末勝利し、ワールドカップ優勝を果たした。
PK戦は、チームスポーツであるサッカーにおいて唯一はっきりと白黒を個人に突きつける瞬間である、と僕は思う。
だからこそイタリアの至宝と呼ばれたロベルト・バッジョは
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持つものだけだ」
という言葉を残し、今でも語り継がれる名言となっている。
「PK戦はある程度のレベルまでいくと、運ですからね」
クロアチア戦を解説した本田圭佑はそう言った。
本当にそうなのか、考察してみよう。

PKは技術である

まずは僕がたどり着いた結論から始めよう。
「PKは技術だ」
これが僕の結論だ。
今大会メッシのPKを見た人であれば、そう言いたくなる気持ちも分かるだろう。
僕はアルゼンチンファンだから、気持ちが入りすぎているだけなのか?
いや、皆さんを納得させる明確な理由がそこには存在する。
「技術に間違いない!」
「何を言っている!運に決まってる!」
どんな意見でもいいから、PKというものに対する考えをぶつけながら読み進めて欲しい。

ゴールの広さ

基本的な知識として、ゴールの広さやPKの距離などを確認しておこう。
横幅7.32m、高さ2.44mのゴールが現在使用されている。
つまり、頭に少年ジャンプを縦置きしたチェ・ホンマンを立たせ、松坂桃李・坂口健太郎・福士蒼汰・荒川良々の4人を横に寝かせると完成する。
分かりにくい?
君がいつも使っているシャーペンの芯なら、縦に40本横に122本並べると良い。
そして、ゴールの中央地点から11mの距離をとってPKマークが存在する。
これは鎌倉の大仏を寝かせてみると丁度だ。
鎌倉に行ったことがない?
ならば、小学生の頃使っていたソプラノリコーダーを33本押し入れから引っ張り出して並べてくれ。
ちなみにPKマークからゴールポスト(ゴールを構成する左右2本の柱のこと、ゴール上縁の柱はバーと言う)の最下部までの距離は約11.6m、ゴールポスト最上部までの距離は11.85mとなっている。
もうなにかに例えるの面倒くさいから、自分でイメージしてくれ。

ゴールの広さ

サッカー選手のシュートスピード

さて、ここでひとつ質問だ。
「サッカー選手が蹴るボールのシュートスピードはどのくらいだと思う?」
すぐに次を読み進めようとするなよ!
「考えろ!お前らは奴隷ではないんだろ!自分の頭を使え!」
これ、高校の時のサッカー部の顧問によく言われました。
僕が懐かしい思い出に浸っている内に、皆さん解答できたかい?
正解は時速約100kmだ。
日本vsスペインの試合を観戦した皆さんであれば、堂安律の同点ゴールは忘れられないだろう。
ミドルレンジから放たれた強烈なシュートは時速120kmも出ていたそうだ。
もう少し調べるとロニーの221km、ハミマンドゥラルの266kmなどさらに速いシュートスピードを記録した選手が出てくる。
世界には怪物が多く存在するみたいだ。

キーパーから見たPK

ゴールの広さやシュートスピードなど、基礎知識を抑えたところでより具体的な考察に入ろう。
まずはキーパー目線でPKを考えると、キッカーが蹴るよりも先に飛ぶか、シュートを見て反応するかの2択となる。
これは、シュートスピードが100km/hであると仮定すると、PKにおいてシュートされたボールがゴールに入るまでの時間は0.4~0.5秒というかなり短い時間であるから、ほとんどのキーパーがシュートコースを読んでキッカーが蹴るより先に飛ぶ。
シュートを見て反応するとなると、シュートコースを確認して飛ぶまでの予備動作を行っている時点で、ゴールが決まっているだろう。
ちなみに知覚で捉えてから、筋肉が動くまでに約0.3秒かかるらしい。
だからこそキーパーに求められる技術は、鋭い読みとギリギリまで動かないことだ。
さらに身長が高いとなお良い。
リーチが長い分短い時間でゴール端まで飛びつける。
キーパーの選択肢は、コースを読んでシュートを打たれる前に動くのほぼ一択であると行って良いだろう。

キッカーから見たPK

次にキッカー目線でPKを考える。
キッカーに関しても、先にシュートコースを決めて蹴るorキーパーの動きを見てから蹴るという2択が存在する。
PKの名手と呼ばれる選手はキーパーの動きを見てから蹴ることが多い。
メッシやジョルジーニョ(イタリア)、そして元日本代表の遠藤保仁など、後出しジャンケンの技術を持っている選手はPKの成功率が高い。

僕も高校時代はPKが得意な方だった。
高校3年時の高総体で、PKのキッカーを任された。
我がチームの正ゴールキーパーは、バッグベッドでオウンゴールをかますという伝説を残した男。
僕はペナルティマークにボールをセットし、自陣ゴールを振り返った。
ゴールを守るその男が見える。
サッカーコートの縦幅は105mあるが、この距離からでも決められると思った。
そして相手ゴールを見るとかなり広く感じ、さらに少し相手キーパーが左に寄っていることが分かった。

この経験から言えることは我が守護神がヘボかったということではない。
いかに落ち着けるかということだ。
冷静に判断する余裕が無いと、相手キーパーの動きを見てから蹴ることはできない。
だからこそほとんどの選手はコースを決めて蹴る。
プロでも相手キーパーを見ながら間接視野でボールを捉えるという技術を、プレッシャーのかかる場面で体現させることは難しい。
コースを決めてシュートを打つとなると、ある程度確率論となる。
まず、キーパーが動くorキーパーが動かないの2択。
そして動いた場合、右or左の2択。
つまり、右に蹴って入る確率は単純計算だと75%となる。
しかし、実際はその場で動かないキーパーはほとんど居ないから、動く確率はほぼ100%だ。
そう考えると、キーパーが右or左に飛ぶという選択に依存するから、右or左に蹴って決まる確率は50%だ。
ならば、真ん中に蹴って入る確率は?
この理論だと、キーパーは必ず動くのだから100%となる。

ただ、サッカーキングさんの記事によるとこれまでのワールドカップにおいて真ん中の成功確率は57%程らしい。(ちなみに右or左は約74%)
真ん中に蹴って失敗となる理由は、バーにあたる又は枠外に外れるシュートが22%、キーパーの残り足など体の一部に当たってしまうことが21%である。(右or左に蹴ると、枠外又はゴールのフレームに当たる事象は4%ほどである。)

蹴るコース、キッカーの順番、日本「0%」とクロアチア「100%」…W杯の“PK戦事情”を分析

このデータから分かることは、真ん中に蹴ることに慣れていないということだ。
それだけ真ん中に蹴ることができる本田圭佑のような選手は肝っ玉が座っている。

結論

それでは結論に帰着しよう。
「PKは技術である。」
僕がそういった理由は、決まる確率の高いコースがあるからだ。
それは各コースの上部だ。
このコースに飛べばたとえ読まれていてもキーパーが届かないことが多い。
中央上部であればほぼ確実に決まる。
キーパーの残り足に当たる可能性も限りなく低いのだから。
つまり、PKを決める極意は、コース上部に蹴り込むorキーパーの動きを見てから蹴るを体現できる技術力であると考えた。
どこに蹴っても失敗する確率は存在する。
しかし、失敗する確率を減らす選択を持つために技術が必要である。
だから、PKは技術であると結論付けた。
僕的にPKを語るとすると、
「ある一定のレベルに行けばPKは運。しかし、もう一段階レベルが上がると圧倒的なキッカー有利な状況が生まれる。」


みなさんは、PKをどう考える?

~追伸~
今回はキッカー目線の強い内容となってしまったため、キーパーの目線から見たPKに対する皆さんの意見を聞きたいです。

〈参照記事〉


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