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失敗したら仲間外れ? チャレンジしたい若者は日本社会でどう生きる。

『海外留学してその後どうするの?』
『大学院まで行って、卒業したら何をするの?』

私の大学〜大学院までの留学中、こうした結果を気にする周りの反応が多かった。この反応に代表されるように、自分に理解できない未知の選択肢を取るものを、言い換えればリスクを取って挑戦するような人生を送る若者を

素直に応援できない大人。
二言目には結果を問うて背中を押せない大人。
・自分にできない自由な人生をただ羨ましがる大人。
・あわよくば、失敗するのを本音では期待している
シャーデンフロイデ人材。

…こういう人、日本に多くないだろうか?
筆者個人の経験を振り返っても特に大学院進学に関して日本と国外の友人知人の反応は差があった。


🇯🇵日本の同僚・知人『大学院も留学して何になるの?』
(※この反応は内資学部卒会社員に多い。院卒・外資の知人はポジティブ。)

🇦🇺🇬🇧🇸🇬🇺🇸海外の友人知人『You did amazing!!!!』


いや、この反応の差が社会レベルで起きていたら日本の若者留学しづらいだろうに…。
国外なら日本人なりにグローバルに通用する学歴を積もうという努力として受け入れられる留学やマスター・PhDに対し、日本社会の地元の大人・友人知人の反応はとても冷たいと感じた(もちろん一部の日本社会の大人にはトビタテへの協賛などで応援してくれる大人もいると思う)。
この冷たい反応は専門で世界1位の大学院に受かろうと、奨学金ももらっていようと、院卒の経歴が転職に活きようとあまり変わらなかった。

筆者の『日本社会、失敗やリスクに不寛容じゃない?』という見立ては留学の周りの反応に端を欲するものだが、裏付けるような研究も多い。

特徴1:日本人は不安傾向が強い?
日本人はもともと不安傾向の高い人が多い遺伝子プールであるとされています。日本には自然災害が多く、それに備えるには楽観的な性質よりも、不安傾向の高いほうが生き延びやすい環境であったわけです。

出典:脳科学者・中野信子が「人生では正解を選んではいけない」と言い切る理由
https://president.jp/articles/-/40006?page=4

特徴2:他人の足を引っ張る行動が多い
大阪大学社会経済研究所を中心とした研究グループによると、被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人はアメリカ人や中国人と比較して他人の足を引っ張る行動が多いという結果が得られた。

日本では何か新しい技術やビジネスが誕生するたびに声高な批判が寄せられ、スムーズに事業を展開できないことが多い。その間に他国が一気にノウハウを蓄積し、結局は他国にお金を払ってその技術やサービスを利用する結果となる。

出典:ニュースウィーク 日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか大阪大学などの研究で判明
元研究:https://www.iser.osaka-u.ac.jp/iser-rcbe/2006/siryo-saijo.pdf

筆者がこのように感じる身近な例が留学だったのだが、転職や起業、フリーランスへの転向などマイナーな選択肢に対するネガティブな反応はまだまだ根強いのが私たちの社会ではないだろうか?
厳密に言えば、日本社会にも多くの階層やグラデーションがあり友人知人の属性によって冷たい反応は変わってくるとも付け加えておく。
地方出身か都内育ちか、学部卒か院卒か、内資か外資かによって友人知人の反応は無視&冷たいものから暖かく見守る派まで様々だ。
ただやはり所感だと、少数派のキャリアを選択肢に取るとき応援するより人のやる気を削ぐ一言や態度を取ってしまう人が多い社会なのではと感じる。

ただでさえ海外のアカデミアに居場所を作って学べるようなガッツのある人材が、アジア諸国の中でも乏しい国だというのにこんな社会の反応ばかりでは、留学ひとつとっても挑戦するのが怖くなってしまうんではないか。

そんなわけで、もし地方や均一な都市部のコミュニティーで少し周りと外れるリスクを取りたい高校生や大学生がいたら以下の覚書をメモして授けたい。

挑戦したい若者向け、日本社会サバイバルメモ

一次処置>
1. ノートや日記をとる
(なぜその選択肢を取るのか、今どんな気持ちなのかとにかくメモする。
人に何か言われても、自分の決意や正直な気持ちを見返すことで心がブレるのを防ぐことができる。自分だけはいつでも自分の味方でいよう)。
🛠
振り返りや目標達成のノート術ではバレットジャーナルがおすすめだ。

2. 身近に味方を最低1人見つける・作る
できるなら家族でも、友達や知り合いの大人か先生で1人味方になってくれる人を見つける(会社の場合、経営陣が1人でも味方にいると心強い)。
筆者の場合は最初の留学では父が、大学院からは奨学金をいただいた財団の大人たちが社会の先輩として味方になってくれた。
時々嫌な思いをしても、相談できて理解してくれる人が1人でもいれば気にならなくなる。

3. 東京か海外に知り合いを作る
いろんな人が集まって多様なコミュニティーに知り合いがいれば、今閉塞感を感じている自分の所属先にいても外の風をもたらしてくれる通気口になる。


<二次処置(余裕があったら長期的に準備しよう)>
4. できれば奨学金を取るか資金調達する。
大人の世界はすこしでも収入があれば一目置いてくれるし、風当たりも少なくなる。読者の皆さんが高校生や大学生だったら、普段嫌味だなと思う大人も外では必死に稼いで生活している立場なのだという点をぜひ加味してあげてほしい。

5. 学生の場合その社会が認める所属をゲットする。
筆者の場合、院試と就活両方しがみついてなんとか社会人修士状態でマスターを蹴り出した。確かに、学生を見下す意識高い系会社員は一定数いる。(時々新卒〜社会人3年目くらいのペーペーでさえ学生か社会人かで態度が変わる方がいるから驚きだ)。
大学院生なんかになると、働いている同年代から会社員風を吹かされてイラッとすることもあるだろう。致命的に落ち込むわけではないのだが、micro agression と一緒で精神的には不愉快だ。
蚊みたいなものだと思う(噛まれたって死ぬほどではないのだが、不快は不快)。そんな時、社会人修士だと強い。
『一応、学生ですが社会人修士なんです。』

この一言を返すとだいたいこの会社員先輩風は吹き収まる。
フルタイムで働かなくても企業や国立の研究所でインターンをしていれば、同じような効果が得られるかもしれない。


6. 5の補足
社歴がある程度あれば、大学院卒業後などは転職市場で次の企業を見つけることもできる。起業やワーホリでも、万が一日本社会に戻る際、多数派である会社員の属性に戻りやすいだろう。

🎤おまけのフリースタイルトーク🎤
個人的に、一番反応が違ったのは日本の同僚とオーストラリアの友達の反応だった。上に書いた通り冷たいなと感じる日本の同僚に対し、落ち込んで思わずメンタルサポートが欲しくて久々にzoomで会話したオージー(Aussie:オーストラリア人のことを英語ではそう呼ぶ)の友達は大学院まで留学やり切ったこと、専門で世界最高峰の院で戦い抜いたことをとにかく褒めまくってくれた。おかげで帰国早々沈んでいた気分を取り戻せた。

そもそも、2000年代から叫ばれたVUCAも20周年以上すぎた現代社会で、留学に関わらず結果を保証された進路なんてない。地元の大学に行くにしろ海外に行くにしろ公務員でさえ安定なんてない世の中だ。今までの人生パターンが通用しなくなった2022年の超グローバル社会で、40歳になっても食いっぱぐれない人生が欲しけりゃ学生生活だろうが会社員だろうがリスクを恐れず自分で人生切り開く腕力がなきゃやっていけないだろう。
日本の若者が、自分の人生の選択肢を増やすため高校卒業時や大学卒業で海外に出ようというのは、そのリスクを取る行動の1つだと思う。

そんなわけで、なんとなく勘で『このまま日本だけで生活して大人になっても大した未来ないんじゃない?』と高校生ながらに悟った筆者はいきおいで大学から大学院まで海外留学した。

もちろんいいことばかりの留学ではなかった。
大学1年生1学期の時の気分なんて、惨めなもんで今になっては二度と味わいたくない(言葉の壁とか、友達作りに足掻いた日々とか辛すぎるから)。そういう負け犬気分を堪え忍び、自分が取った留学という選択をなんとか正解にしようと今日も海外でもがいている若者が何人もいるのだ。

そんな若者にはぜひ、『留学して何になるの?』など即効性の期待を試す言葉などではなく暖かく見守る雰囲気で包んであげてほしい。


同級生の半分ほどしか大学に行かない、地方の公立中学校から10年足掻いてやっと世界1位のアカデミアの一角にタッチできた…
そんな1人の日本人からのお願いです。

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