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株シミュレーション:株価の急落

(2024.3.3 補足を追記しました!)

 こんにちは😊
 株価下落に備えてほしいことを書いた記事がXで思わぬ反響となって、質問いただくことが多くなりました。ありがとうございます😊。
 今日は、株価の急落(暴落って書くと煽ってる感じが出るので・・・)とその対応について、実感が湧くように具体的な事例を用いてシミュレーション形式で解説したいと思います。

想定シナリオ

 日経平均が史上最高値で絶好調ですね。そんな中で聞こえてくるのが、クラッシュ(世界同時株安)と呼ばれる株価の大下落を過去に経験した人たちの注意喚起ですが、上昇相場の経験しかない投資家は実感が湧きません。いま、クラッシュが起きたとしてシミュレーションをしてみたいと思います。

 対象はTOPIX指数で考えます。
 TOPIXは2024/3/29までに2840ptに到達していましたが(ドルベース フィボナッチ分析の予想)、配当権利落ち日の下落を境に突然下落を始め、2024/5/25までに一昨年春の水準である1750ptまで38%急落するシナリオにします。(※ 仮定の話ですのでご注意を🥸)

想定シナリオ

 ここで、3人の登場人物を想定してみます👨‍🦳👩👨。
 2024/2/25 時点(TOPIX=2660.7pt)の株資産は同額とします(それ以外の資産は考えないものとします)。

  👨‍🦳辺手 蘭さん (株投資歴20年):株資産 1000万円
  
👩天地 優愛さん(株投資歴3年) :株資産 1000万円
  
👨新伊佐 肇さん(株投資歴6ヶ月):株資産 1000万円

辺手 蘭(べて らん)さんの場合👨‍🦳

 辺手さんは過去のクラッシュを経験したベテラン投資家です。今回の相場でも早いうちから急落を警戒していた一人です。
 辺手さんは株価が急落した際に備えて、3月中旬にTOPIXが2800ptに達したところで8割の株を利益確定して現金化しました。辺手さんの資産は、3月末の時点で次の通りとなっています。

  現金:850万円 株:213万円 合計:1063万円 👨‍🦳

 配当権利落ち日を境に3月末から株価が急落を始めましたが、辺手さんは株価急落とともに生じる円高ドル安の影響を受けづらい電力やエネルギー関連の円高恩恵株を株のまま残しており、これらの銘柄の株価は最終的に30%しか下落しなかったため、5/25には資産は次のようになりました。

  現金:850万円 株:149万円 合計:999万円 👨‍🦳

 資産の減額は2/25の時点と比べて、0.1%減に抑えることができました。
 辺手さんは現金化しておいた元手を使って、翌週から株購入を再開。上昇を始めた株価によって大きな利益を手にすることになります😊。

天地 優愛(あまち ゆあ)さんの場合👩

 天地さんはクラッシュの経験はないものの、情報収集を怠らない投資経験5年の投資家です。今回の上昇相場では急落を警戒しつつ、株価が下がり始めたら売ろうと考えていた一人です。
 天地さんは急落開始の時点で株を持ち続けていましたので、天地さんの3月末の資産は次の通りとなっています。

  現金:0万円 株:1067万円 合計:1067万円 👩

 このあと株価が急落を始めましたが、天地さんが「これはおかしい」と気づいたのは配当権利落ち日の3営業日後です。いつもなら配当分の株価下落はあるものの業績好調銘柄の株価はすぐに戻るはずが、今回は大きな下落を続けています。
 それでも天地さんは、「最近の調子ならすぐに上昇するはず」と自分に言い聞かせてしまいます。1週間後、下落を続ける株価が心配になってきた天地さんはTOPIXが10%下落した時点で手持ちの株の半分を売りに出します。ところが株価はその後もグングン下落を続け、残るすべての保有株が含み損を抱えるようになってしまいます。「明日は上がるかも」「そのうち上がるかも」と逡巡する間にもさらに株価は下落し、売るに売れない状況ができあがっていきます。4/25、このまま株を保有していたらさらに損が膨らむと考えた天地さんは、残りの株をすべて売ることを決意し、株価が最高値から25%下落したところで残りの株を損切りします。
 天地さんの5/25の資産は次のようになりました。

  現金:880万円 株:0円 合計:880万円 👩

 資産は2/25の時点と比べると、12%減額しています。
 天地さんはクラッシュを警戒していたのに、あと少しの利益を欲張ってしまった結果、大きな損失を生んでしまいました。資産をここから14%増やせば1000万円に戻りますが、うまくいっても1年かかります😣。
 しかし、早い段階で資産の半分を現金化していたことによって、最終的なTOPIXの下落幅よりも小さな損失とすることができました。

新伊佐 肇(にいさ はじめ)さんの場合👨

 新伊佐さんは新NISAの投資ブームに乗って昨年12月から投資を始めた初心者です。投資を始めてからの株価は上昇を続けており資産はグングンふえています。株価はまだまだ上がり続けると信じており、マスコミやSNSが言う「いまはバブルではない」「実体がある株価上昇」という自分に都合の良いニュースを信じています。SNSではクラッシュを警戒する声があるものの若気の至りか「ビビってる人は資産が増やせない」とまで思っていました。
 新伊佐さんも天地さん同様に株を持ち続けていましたので、新伊佐さんの資産は3月末の時点で次の通りとなっています。

  現金:0万円 株:1067万円 合計:1067万円 👨

 4月に入って株価が急落を始めましたが、新伊佐さんは上昇相場しか知りませんから「そのうちまた上がる」程度にしか考えていません。これまで上昇相場しか経験していなければこう考えるのは無理もありません。
 そういう新伊佐さんも、あまりの下落に心配になりはじめて、保有銘柄のうち含み損になりそうな株を手放そうかと考え始めます。ところが、買った株価と同じ指値をしても取引が成立しません。クラッシュの際は売り手が揃って成行で売りを出すので、買い手の激安指値でも取引が成立することで下落が続くのです。
 損を出したくない新伊佐さんが指をくわえて見ているうちに、ついにすべての保有銘柄が含み損の状況になり、売りたくても売れない状況になってしまったため、新伊佐さんは「そのうちまた上がるだろう」と考えて保有株を売らずに塩漬けすることに決めます。
 新伊佐さんの5/25の資産は次のようになりました。

  現金:0万円 株:662万円 合計:662万円 👨

 資産は2/25の時点と比べると、34%減額しています。
 新伊佐さんは、「そのうち上がる」と考えてしまった結果、経験したことないクラッシュによって大きな損失を生んでしまいました。資産を元に戻すにはここから50%増やさないといけませんから、うまくいっても3年程度はかかります😣。
 新伊佐さんは「もともと800万円を元手に始めた投資なので、これくらいの損失は勉強代」と考えることにしました。

株価回復

 幸いなことに1年後の2025/2/25に株価は約50%上昇し、TOPIXは2625ptに達し、1年前の水準に近づいてくるところまで回復しました。
 辺手さん👨‍🦳は、株価が5%回復したところで手元の現金をすべて株投資に充てました。
 天地さん👩も、株価が5%回復したところで手元の現金をすべて株投資に充てました。
 新伊佐さん👨は、手元の現金がありませんから株を保有したままです。
 1年後の2025/2/25時点で、各人の資産はどうなったでしょうか。

  辺手 蘭さん :株資産 1456万円(8501.45+1491.50)👨‍🦳
  天地 優愛さん:株資産 1296万円(480
1.45+4001.50)👩
  新伊佐 肇さん:株資産   993万円(662
1.50)👨

 新伊佐さんはまだ1年前の資産を回復できずにいます。元手の800万円は回復できていますが、2024/2/25には同じ資産額だった他の二人とは差が歴然としています。株価がそのうち元に戻ればいいという人がいますが、下落の底からまた上昇しても、これだけの差が出てしまいます。
 じつは、億り人に短期間でなれた人たちはこのクラッシュからの反動上昇時に現金を株に変えて儲けた人たちです。現金がなければ株は買えません。現金の重要性がお分かりいただけたでしょうか。

おじさんのクラッシュ体験

 何を隠そうおじさんはチャイナショックの際、新伊佐さん👨と同じ行動を取ってしまいました。出した損失は約1500万円。ショックでした😅。
 この苦い経験を株投資を始めたばかりの皆さんに味わってほしくないので、せめて天地さんのような行動が取れるようになってほしいと思って、このような形でお伝えしています。

 もちろん、クラッシュが起きずに株価が上がり続ければ最高ですよね。でも株価はいつか下落します。なぜでしょうか。
 株というのは現金に換えたときに初めて価値が生まれますよね。株で買い物はできませんから。株を現金に換えるには買ってくれる相手が必要です。買い手のいない株はただの紙切れです。
 では株価が上がり続けたらどうなるでしょうか。皆さんは買い続けますか?高いものは買いづらいですから徐々に買い手がつかなくなってきます。すると上昇スピードが鈍ってきて今度は利益を現金に換える人が出てきます。現金にしないと買い物はできませんから。現金をたくさんもらうのは早い者勝ちですから少しくらいは安くなっても売りますよね。これが下落です。
 たくさん現金を得るのは早い者勝ちだと知っている人は他の人が売り始める前に株を売るのです。下落に気づいて売る人が多くなれば株価は下がります。そうなると株価が下がる前に多くの人が我先にと売り始めます。これが暴落です😣。
 「早い者勝ち」という投資市場では、当たり前の仕組みを知らない人はいつも痛い目に遭ってしまいます。

 株市場で投資をすると企業にお金が届くと思っている人、間違ってますよ(企業にお金が届くのは企業が株を発行した時だけです)。投資をしたと思って株の代価として払った現金は、株券を売ってくれた誰かに渡っているだけです。株は配当金や議決権といった特典が付いた、ただの紙切れです。
 
アイドルの握手券というものがありますが、握手ができる権利(株の場合は配当や議決権)が付いたただの紙です。人気絶頂のアイドルの握手券は皆が欲しがって価値が上がっていきますが、他のアイドルに人気が流れてそのアイドルの人気がなくなれば価値はどんどん下がっていくのと同じです。
 株はお金ではないのです😎。

まとめ

 シミュレーションに登場した3人の行動は何が違ったのでしょうか。
 「そのうち株価が上がるだろう」「今はたまたま下落しているだけ」のように、直観や先入観、願望や他人の意見によって論理的ではない判断や選択をしてしまうことを「認知バイアス」と呼びます🥹。
 認知バイアスは誰もが持っている心理現象ですので避けることができませんが、経験や知識によって克服できます。一番危ないのは「多数派が正しい」という勘違いです。論理的な根拠のない多数派意見に騙されてはいけません。投資の世界は複雑な金融理論や経済指標が飛び交う難しい分野だという思い込みによって、専門家風を装ったメディアから自分に都合の良い情報が示されると、多くの人は簡単に流されてしまいます。投資の世界では少数派の狼が多数派の子羊が持っているお金を狙っています(以前の記事を読んでみてください)。

 もちろん、株価の下落に怯えていては利益は得られませんので、いつも怖がっている必要はありません。
 大切なのは備えること。下落が起きたとき、上昇が起きたとき、自分はどうするのかを考えながら資産運用することをお薦めします。

 ではまた!😊

※ インデックス投信のような商品で行われる積立投資は、ここで紹介している個別株取引とは性質が異なります。積立投資で用いられるドルコスト平均法はこの下落や上昇のタイミングリスクを減らすための手法で、一時的な下落や上昇を長期の継続的な積立によって平滑化します。但し積立投資は「将来にわたって株価は上がり続ける」という大前提に基づく投資です。この大前提を信じられる人だけが実施すべき投資方法だということを知っておきましょう😉。

[追記]

 Xにポストしたことを補足して追記します。
 おじさんはもうすぐ暴落が来ますよと言うつもりはなくて、暴落が来ても大丈夫なようにアセットアロケーションを考えましょうとお伝えしたいのです😊。
 過去の日本株相場では30~60%の下落が起きています(下落幅はフィボナッチどおりですね)。下げ相場での急落は60%、上げ相場での急落は30%くらいのようです。

日経平均の暴落の歴史

 じつは、あまり報じられていませんが、ドルベースの日経平均は2021年から2022年にかけて、37%も暴落しています😱。この間、為替はドル高円安がかなり進行したので、円ベースの日経平均ではこのような下落が生じませんでした。ですので、海外投資家から見れば今は暴落からの回復途上で、日本株がチャンスと見られているということですね😊。

ドルベースで見た日経平均の暴落(2021年)

 長期ドルコスト法や分散投資のメリットやデメリット、現金比率といったことを真剣に学ぶことで備えはできます。しっかり学んで大切な資産を守りましょう。
 為替も重要です😉。米国が同時株安になれば利下げ発動でドル安になります。海外株・海外債権・GOLD・暗号通貨はいずれも為替影響を受ける資産です。資産下落した上に円高になれば為替差損も加わります。例えば、株価が30%下落して為替が15%円高(ドル150円→128円)になれば資産は40%のマイナスになります。自身の資産全体がどれくらいのマイナスまで許容できるかを考えて、投資先のポートフォリオを考えましょう。その際、リスクの種類(株価、景気敏感、為替、金利政策、世界情勢 など)をしっかり理解してくださいね😉。

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