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ノラ・ジョーンズ JAPAN TOUR2022の記憶を記録しておく

何もかもが最高だったライブで、一番印象に残ったのは彼女の「笑顔」かもしれない。

どの曲でも演奏が終わるその瞬間、観客に向けて、そしてバンドの仲間に向けて、毎回控えめに微笑む表情がとても、とても温かった。
ノラ・ジョーンズの歌声はよく「ハートウォーミング」と称されたりするけれど、ひと声で誰をも虜にするあのボイスは、彼女が心のうちにもつ優しさや、人間としての包容力が音としてあふれているもののように感じた。

ぼくも多くの人と同じくデビューアルバムで心つかまれ、その後の20年間、多少の波はあれど ”favorite” なアーティストとして聴き続けてきた。自分とほぼ同年齢ということもあり、様々な時代に発表された曲がそのときの記憶とともに蘇る。そんな思い入れがある世界的アーティストのライブをまさか地元のホールで見られるとは。しかも奇跡的に最前列といってもいい席。わくわくとドキドキの夢見ごこちでいたぼくの目の前に現れたノラ・ジョーンズは、とてもナチュラルな空気をまとっていた。
人を圧倒したり寄せ付けないオーラではなく、自然と惹きつけられ、その声に耳をすましたくなるような、心地よいオーラだった。

20年発売の“PICK ME UP”に収録された曲を中心に、過去のアルバムからも万遍なくセレクトされたセットリスト。バンドメンバーはドラムに
Brian Blade、ベースChris Morrissey 、ギターは
Dan Leadという精鋭による最小限の編成。

コロナ禍もあり5年ぶりとなった来日公演は、抑制と開放、繊細さと情熱がこれ以上ないというほどにうまく混ざり合った極上の時間で、気が付けばあっという間に1時間半が過ぎていた。

インタビューなどを読むと、衝撃的なデビューでまたたく間にトップスターとなったことで、様々な葛藤やストレスを抱えた辛い時期もあったようだ。でも目の前にいたノラ・ジョーンズは、若かりし頃の圧倒的な輝きにしがみつくのではなく、40代のノラ・ジョーンズとして自然体の魅力を存分に出していて、「今の彼女が一番」と感じさせてくれた。

これから自分自身も50代、60代と年齢を重ねていくなかで、いつまでも心のよりどころして、居続けてほしいアーティストだ。

最後に、オープニングアクトの
Rodrigo Amaranteについて。正直知らないアーティストだったのだけど、曲を聴いていると、何だか無性に覚えがある。記憶を探ってるうちに思い当たった。「ナルコス」のオープニングだ。大好きなドラマの大好きな曲。すべてがあの曲調に通じる。もしかしてこの人が歌っていたのか。あーググりたい。そんな気持ちが頂点に達した次の瞬間、彼のギターと声が奏でたのはまさに「あの曲」だった。
ノラ・ジョーンズのライブにきて思いがけない出会い。最高のオープニングアクトでした。

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