皆様かぶきDOUをお聴きいただき誠にありがとうございます。
開場25周年記念6月博多座大歌舞伎 夜の部は通し狂言「東海道四谷怪談」です。
かぶきDOUではシリーズとして大まかなあらすじをお届けしてきましたが今回のPART4で完結となります。

東海道四谷怪談大詰 かぶきDOUあらすじ

民谷伊右衛門（尾上松也）に勘当を言い渡した父 源四郎は庵の奥に入りました。
伊右衛門は父の勘当もお岩（尾上右近）の呪いの為と考えます。
決まった時間になると熱に冒される病で母お熊が苦しみだしました。集まった者たちが回復を願い再び百万遍を唱え始めます。伊右衛門も参加します。
念仏をよそに、お岩がお熊の側に現れ食い殺してしまう様子が伊右衛門から見えます。
斬りかかる伊右衛門ですが、お岩の怨念で太刀打ち出来ません。
伊右衛門がよろけたはずみで部屋の障子が倒れると、先ほど奥に入った父 源四郎が自ら命を絶っていました。お岩はどこかへ消えてしまっています。
伊右衛門はすべてお岩のせいと嘆きます。

そこに伊右衛門の元同僚の官蔵と手下の伴助が現れます。
二人は喜兵衛 お梅（中村莟玉）の殺害容疑で高家の家来 平内に捕らえられていましたが脱走してきたと言います。伊右衛門に落ちのびるよう促しますが、実はこの2人は伊右衛門の命を狙っていました。危険を察知した伊右衛門が二人を斬り倒します。
そこに平内と捕り手たちが現れ、伊右衛門を捕らえようとします。
捕り手の中にまぎれていたのは佐藤与茂七（尾上右近）です！
 非業の死を遂げた お岩の妹お袖（坂東新悟）の許嫁です。
雪が降りしきる中、お岩（尾上右近）の怨霊も加担して伊右衛門（尾上松也）は与茂七（尾上右近）に討たれるのでした。

 …いかがだったでしょうか？
大詰では、お岩の怨念に苦しみながらも伊右衛門が相手をどんどん斬り倒していくシーンも見どころかと思います。さすがは元、塩冶家に仕えていた武士です。
伊右衛門は性格に難がありましたが色男であること、武士の身分を失ったことがきっかけで多くの人々の人生を狂わせてしまうことになりました。

色悪（いろあく）

1825（文政8）年初演のとき民谷伊右衛門を7世市川團十郎が勤めています。
歌舞伎十八番を制定したのが皆様ご存知7代目市川團十郎です。
6代目團十郎が急逝してしまい、わずか16歳で7代目を襲名しました。7代目は伊右衛門の内職の傘張りの所作など細かい部分にも大変研究熱心だったそうです。
成田屋公式HPの言葉をお借りしますと…
四代目鶴屋南北の狂言の中で、強烈な個性を発揮した
とあります。

荒事の團十郎家で民谷伊右衛門のお役を通して二枚目でありながら女性をないがしろにして悪事を働く敵役「色悪（いろあく）」という新たなジャンルを開拓しました。
 
そして、お岩•小平•与茂七の三役を三世尾上菊五郎が勤めています。直助権兵衛は五世松本幸四郎でした。
 
新版歌舞伎事典によりますと…
三世菊五郎は生涯で9回もお岩を勤められたそうです。以来、音羽屋の家の芸として伝えられました。
 五世松本幸四郎は写実的演技で新風を吹き入れました。歌舞伎では敵役の首謀者を実悪（じつあく）と呼びますが1799（寛政11年）に5世松本幸四郎は実悪の首位に置かれたそうです。
 四世鶴屋南北の手によって名優揃いで上演された東海道四谷怪談は仮名手本忠臣蔵の外伝として描かれました。
2日がかりでの上演で四谷怪談の後は仮名手本忠臣蔵十一段目討入りの場に続いたそうです。
江戸時代の観衆は塩谷浪人たちによる高師直討ち入りへのボルテージがさらに高まったことでしょう！
これまで様々な演出で東海道四谷怪談は上演されていますが通しでも、よりぬきでも共通するのは

大がかりな仕掛けの多さ
人間の生々しさ
目が離せない展開 です。

これが4世鶴屋南北最大の魅力で代表作といわれる所以かと思います。
6月博多座大歌舞伎では尾上右近さんがお岩・ 小平 ・与茂七の3役を勤められます。どのような演出ストーリーになるのか今からとても楽しみです！
 次回は6月博多座大歌舞伎昼の部の解説をお届けする予定です。ご参考になれば幸いです。

黄金週間（GW）かわら版
  

ここからは大型連休に開催される歌舞伎公演についてご紹介します。

日本こども歌舞伎まつり㏌小松

2代目市川右近さん（澤瀉屋）が5/4,5/5に勧進帳ゆかりの石川県小松市で開催の「日本こども歌舞伎まつり㏌小松」にゲスト出演されます！
 

市川右近さんについて

前回めでてえなあでもご紹介しましたが右近さんは4/18に14歳のお誕生日を迎えられました✨
葬送のフリーレンがお好きという右近さんはお誕生日に葬送のフリーレン特製ケーキをプレゼントされたそうです🍰
4/22放送の徹子の部屋「梨園の輝くプリンス特集」で当時8歳の右近さんがお父様の市川右團次さんとご出演されていました。
今回右近さんはトークコーナーならびに素踊り併奴を披露されます。司会は葛西聖司さんです。 

私の地元でもあります石川県能登半島地震で心配されましたが、日本こども歌舞伎まつり㏌小松は無事に開催される運びとなりました。
まずは口上がありまして、全国の子供歌舞伎団体の皆さんによる歌舞伎演目の上演です。

岐阜県/東濃歌舞伎中津川保存会による 「御所桜堀川夜討 弁慶上使の場」 

東京都・大分県/すずめの会による日本舞踊・長唄「桜絵巻」
が披露されます。

そして地元・小松市の子どもたちによる「勧進帳」です。
毎回オーディションで選ばれた小・中学生の皆さんが役者や口上を務められます。
長唄と囃子方は応募のあった市内の小学生をはじめ、こまつ歌舞伎未来塾「こまつ邦楽舞踊教室」のメンバーや小松市立高等学校邦楽部の方たちで編成。
後見やツケ打ち、メイクや着付けなどの裏方は市民ボランティアの方々が支えます。

13代目市川團十郎さんが2020（令和2）年11月博多座で海老蔵として最後の勧進帳で弁慶を勤められた際に、右近さんのお父様 市川右團次さんが冨樫を初役で勤められました。

その際12代目團十郎さんがお召しになっていた冨樫の烏帽子を、頭の曲がり方がよく似ているということで右團次さんがそのまま使われたというエピソードがあります。
こども歌舞伎の皆様の競演から右近さんにも様々なことを吸収して頂き、将来大きなお役を勤められたら…この上ないですね！

チケット情報はこちらからどうぞ↓
https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/1016/ibento_omatsuri/3/1752.html

團菊祭5月大歌舞伎 歌舞伎座

続いて5/2（木）に開幕します歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」をご紹介します。
昼の部では四世市川左團次一年祭追善狂言として「毛抜」が上演されます。
市川男女蔵さんがお父様四世左團次さんの当り役である粂寺弾正（くめでらだんじょう）を20年ぶりに勤められます！
さらにお孫さんの市川男寅さんが錦の前（にしきのまえ）を勤められるということで話題となっております！

歌舞伎十八番の内毛抜 かぶきDOUぽち解説

歌舞伎十八番之内「毛抜」は2代目團十郎が初演した雷神不動北山桜（なるかみふどう きたやまざくら）の中のひとつです。
9代目團十郎以降途絶えていたものを1909（明治42）年2代目左團次が復活させて人気狂言となりました。さらに11代目團十郎が改定を加えたものが現在の主な型となっているそうです。
主人公の粂寺弾正は歌舞伎十八番の内で最もセリフが多いお役です。書籍 新版歌舞伎十八番によりますと「毛抜はお客様参加型」だそうです。
弾正が、好みの若衆（若い男性）や美しい腰元に振られては客席に謝ったり、事件解決が近づくと「さあ皆様」と客席に話しかけてくれます。
幕切れには花道で「この大役、今日ご見物のいずれの様のお陰にて」と挨拶をして引っ込みます。
歌舞伎十八番の大きなお役でありながら一期一会のお客様とのからみもこなすのは並大抵のことではありません。
さすが芸の幅が大変広く、チャーミングでお茶の間の人気者だった4世市川左團次さんの当たり役であります。
観劇される皆様には男女蔵さんが勤めます粂寺弾正とのやりとりを大いにお楽しみいただくことがお父様4世左團次さんへの何よりの追善であると思います。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お孫さんの男寅さんが勤めます姫君・錦の前の髪が逆立つ奇病と、その種明かしも見どころです！
さらに後見役として市川團十郎さんがご登場です。そのほかの配役の皆様も大変豪華となっております✨

黄金週間の参考にしていただけたら幸いです！ 

めでてえなぁ 4/24-4/30

お誕生日を迎えられます歌舞伎役者さんをご紹介するめでてえなあのコーナーです。4/24から4/30がお誕生日の皆さまです。
お名前と所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。

 
４/25市川福太郎さん
成田屋　

４/25坂東玉三郎さん
大和屋　

４/26 片岡當次郎さん
片岡我當一門

4/26 中村時蔵さん
萬屋

4/26 中村又五郎さん
播磨屋

4/27 上村吉弥さん
美吉屋

4/30 市川喜介さん
市川段四郎一門

4/30 山崎咲十郎さん
河原崎権十郎一門

 
今回は8名の皆様でした。お誕生日おめでとうございます！
 

4/30アーカイブはこちらからどうぞ

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりませんのでご了承ください

次回は5/7（火）午前10時〜FM77.7Mhzで25分の生放送です。Listen Radioというアプリ、コミてんYouTube生配信でもお楽しみいただけます