見出し画像

かぶきDOU其の16アフタートーク

皆さま今回もかぶきDOUをお聴きいただきありがとうございました!
いよいよ博多座チケット予約日が迫りました13代目市川團十郎襲名披露8代目市川新之助初舞台『9月博多座大歌舞伎』の昼の部より歌舞伎十八番『外郎売』について今回はご紹介しました。


かぶきDOUぽち解説 外郎売


まずは簡単なあらすじをご紹介のかぶきDOUぽち解説からお届けしました。 

外郎売
工藤祐経が仲間を引き連れて現在の湘南あたり、大磯の廓を訪れます。
そこに小田原名物の薬の行商人、薬の名前「外郎 ういろう」をとって「外郎売」と呼ばれる者がセールスでやってきます。
この外郎売は「透頂香 とうちんこう」という薬の優れた効能を早口言葉でPRできるのが特徴です。祐経も評判の話術をぜひ聴いてみたいとリクエストします。
外郎売が妙薬の効能を早口で高らかに言い立てるシーンが見どころです。この外郎売は実は曽我五郎で、父を討たれた復讐のために工藤祐経を狙っていたというストーリーです。



当代の新之助さんといえば「外郎売!」という印象をお持ちの方も多いと思います。
外郎売の中に「透頂香 」の薬の効能を早口で言い立てる貴甘坊(きかんぼう)という役があります。これは12代目團十郎さんが外郎売を復活させた時に生み出したお役です。

13代目は7歳の時に、この貴甘坊役で市川新之助襲名の初舞台を勤められました。
元々堀越勸玄さんにも新之助の襲名で貴甘坊を演じてもらおうと、團十郎さんは思われていたそうですが、当時6歳の勸玄さんが「やりたい!」と意欲を見せたため、令和元年の歌舞伎座7月大歌舞伎で、その意見を尊重しての史上最年少での外郎売 貴甘坊となりました。
勸玄さんの素晴らしい才能はもちろんですが、襲名まで待つように説得するのではなく、サポート側に回って、やらせてあげようという姿勢が本当にすごいです!
さらにこの時團十郎さんは歌舞伎座昼夜出ずっぱりで、大変忙しい状況だったと思われます。
この令和元年の歌舞伎座7月大歌舞伎でお父様が体調を崩されたときは、勸玄さんがお一人で貴甘坊を立派に勤められ大きな話題となりました。

團十郎さんが舞台復帰された後の外郎売を私は観劇しましたが、花道に現れたお姿は、お父様演じるの曽我五郎の姿そのままのミニチュアの様な感じで可愛らしさで溢れていました。
いざ花道での自己紹介そして早口での言い立てとなりますと、堂々と自信に満ち溢れていて本当に6歳?と思ってしまうほど素晴らしいパフォーマンスで、割れんばかりの拍手が送られました。
この外郎売を復活させたおじいちゃまの12代目に勸玄さんは残念ながら会うことは叶いませんでしたが、セリフの語尾の抑揚が不思議と12代目と重なって聴こえて成田屋の魂はしっかり受け継がれているのだな…と涙が溢れたのを覚えています。

昨年歌舞伎座での8代目市川新之助襲名では、貴甘坊ではなく、主役の外郎売実は曽我五郎を勤められたことでも大変話題となり、千穐楽の様子がオンラインで生配信もされました。
今回、新之助さんが初の地方公演となる博多座の舞台で外郎売を勤められます。


歌舞伎十八番の内 外郎売のルーツ

それではここからは歌舞伎の外郎売のルーツについてご紹介していきます。
1718年享保3年に江戸森田座「若緑勢曽我 わかみどり いきおい そが」という演目で2代目市川團十郎が外郎売の姿で登場し長い「言い立てのセリフ」を流暢に披露し大評判となったのが始まりだそうです。
成田屋のトレードマークである荒事の要素は少なかったのですが、長さ3分以上ある早口の長台詞をよどみなく述べ立てる2代目團十郎の演出は、江戸の團十郎贔屓の皆さんに絶賛され人気演目となり、のちに歌舞伎十八番にも制定されました。

12代目團十郎さんが外郎売を復活された際は、2代目團十郎が披露していた早口言葉を再現して、さらには曽我物のストーリーを取り入れて、薬売り実は父の仇討ちという荒事の要素も加えられました。
2代目團十郎の頃と比べますと、セリフの量はほとんど変わっていないそうです!
3分以上にもわたる早口言葉が大変難しいため、舞踊のリズムにアレンジしたり、明治から昭和にかけては、外郎売のセリフの部分が上演されること自体少なかったそうです。 

外郎売の早口な言い立ては、スピーディーに薬の効能をしっかり伝える技術が求められます。
そのレベルの高さから現在もアナウンサーを志す人(私もお世話になりました)や声優さん、俳優さんのバイブルとして活用されていることに納得がいきます。
そしてこの早口の言い立てを6歳で勤められた新之助さんの凄さを改めて感じますね!


ういろうの歴史

この歌舞伎演目となっている「外郎薬 透頂香」は現在もあるお薬です。
神奈川県小田原にあります「ういらう」さんは500年以上続く超老舗で、大変立派な白いお城の店構えが有名です。歌舞伎の題材となっている「ういろう」の歴史について、ここからはご紹介いたします。

ういらうさんのHPによりますと外郎の由来は中国に遡ります。
1368年に陳延祐(ちん えんゆう)という元(げん)の役人が亡命して、博多に辿り着きます。
当時の博多は外交の玄関口でした。海を渡ってきた人達やこれから出発する人達の宿場の役割も担っていた、妙楽寺に身を寄せたと言われています(妙楽寺は現在も福岡市博多区にあります)。

延祐は、元(げん)の国にいた当時の役職の名前を取って、陳外郎(ちん ういろう)と苗字を改めました。
医学の知識が大変豊かな延祐に、明との交流を目指す将軍足利義満は京に来るよう勧めたそうですが、一度も赴くことはありませんでした。

しかし延祐の長男、大年宗奇(たいねんそうき)は足利義満の招待を受けて京の都へ移り住みます。そして明から原料などを集めて本格的に薬を作り始めます。
当時の装束には烏帽子が用いられていました。暑い夏は烏帽子の中が蒸れて大変だったそうです。
そんな時に、宗奇が調合した小粒の薬を頭の上に乗せると熱でその薬が溶けて清涼感が出て爽やかな香りが広がると朝廷で評判になりました。
小粒なので携帯しやすく、時の天皇から「透頂香とうちんこう」と拝命するほど大変重宝されたそうです。そしてこの薬を産み出した、陳外郎大年宗奇(ちんういろう たいねんそうき)の苗字からとって「外郎薬 ういろうぐすり」という名前にもなりました。

お菓子としての「ういろう」ですが、砂糖が貴重だった時代に薬の材料としてサトウキビを仕入れていました。そこから黒砂糖と米粉で合わせて蒸したお菓子を作ったのがきっかけだそうです。
宗奇が外国からの長旅で疲れた人々などに精をつけてもらおうとふるまったお菓子の味が評判となり「お菓子のういろう」と呼ばれるようになったそうです。

外郎家は、京の都が戦乱となったのを機に1504年に北条早雲(ほうじょう そううん)に招かれて神奈川県小田原に移り住みました。外郎家はこの小田原を拠点としてから現在まで500年以上続くお店「ういらう」を構えています。

2代目團十郎が喉と咳の病で舞台に立てなくなったときに透頂香を飲んで復活!その御礼を伝えに小田原まで足を運んだそうです。
書籍 新版歌舞伎十八番によりますと、実は小田原の「ういらう」のお店では行商はされていなかったそうです。
2代目團十郎に懇願されて歌舞伎の演出として、外郎売の扮装と行商人という設定を許可したというお話もあるそうです。

透頂香は昔からの変わらない製法で作られているそうです。近年、原料の生薬が手に入りにくくなっているため店頭販売となっています。
お菓子のういろうは地方発送を行なっているそうですので気になる方は小田原「ういらう」で検索してください。 

ちなみに宗奇の父延祐が亡命先として選んだ博多の地では、近年「博多ういろう」も誕生しております。

2代目團十郎に関するこんなエピソードもあります。
当時歌舞伎が全盛だった大坂の舞台で外郎売りのセリフの場面に差し掛かったところで観客の1人が、2代目よりも先にセリフを言い切ってしまったことがありました。
すると2代目團十郎はセリフを終わりから逆さ読みで言い立てたそうです!2代目の胆力と頭脳明晰さが伺えますね!

今回、外郎薬の始祖がたどり着いた博多の地で、10歳の新之助さんが外郎売で主役の外郎売実は曽我五郎を勤められることは大変意義があることと思います。
ここまでご紹介したエピソードが外郎売の言い立てのセリフの中に入っておりますので、新之助さんの外郎売の舞台を意識してお楽しみいただけたら幸いです。

ちなみに…「ういらう」さんでは歌舞伎十八番の演目が描かれた湯呑みシリーズを販売されているのをご存知でしょうか?
私が15年ほど前に伺った際に、外郎売の絵柄の湯呑みを購入しました。先日「ういらう」さんにお電話で伺ったところ、
「鳴神」と「不破 ふわ」のみ湯呑みの在庫があるそうです。お値段は550円+消費税です。
新たに販売される予定は今のところないそうなので、夏休みに直接「ういらう」さんのお店に行かれる際はそちらもチェックして見てください。
今回トピ画になっているのは私物の湯呑みで、麻の葉さんの絵てぬぐいが背景です☆

本日は「外郎売」についてご紹介いたしました。
9月歌舞伎公演が始まりましたら改めまして観劇レポをお届けしますのでご期待くださいませ!       


縁の一曲 片岡愛之助さん


歌舞伎役者さんにゆかりの曲をご紹介する、えにしの一曲のコーナー。今回は片岡愛之助さんでした。
先日博多座より発表がありましたが2023年11月10日から23日に、日本テレビ開局70年記念舞台として博多座で西遊記が上演されます。大阪、名古屋、東京でも上演されます。

愛之助さんが主演の孫悟空を勤められます。三蔵法師役は小池徹平さん、猪八戒役は戸次重幸さん、沙悟浄役は加藤和樹さん、馬の玉竜役は村井良大さんが演じられます。
私は初期のドラマ、西遊記のキャストが強烈な印象で残っています。どのように愛之助さんがそのイメージを覆してくれるのか…
注目です!
今回は日本テレビで1978年から放送のドラマ西遊記エンディングテーマ曲、
ゴダイゴのガンダーラをお届けしました。


めでてえなぁ7/12〜7/18


お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナーです!
お名前と、所属 屋号をご紹介しています。五十音順となっておりますのでご了承ください。
7/12から7/18がお誕生日の皆さんでした

7/12市川喜猿さん
澤瀉屋 

7/16中村仲侍さん
中村屋一門 

7/18中村梅乃さん
高砂屋
 

今回は3名の皆様がお誕生日でした。お誕生日おめでとうございました!


次回のかぶきDOUは7/25㈫午前10:00〜10:25生放送でお届けします!番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます↓

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりません。ミキサールームからのトークの為スタジオは無人で音声だけの配信となっております。ご了承くださいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?