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【企業分析】ユニリーバ

ULVR (LON)
時価総額:1,132億ドル
売上高: 507億ユーロ
営業利益: 83億ユーロ
(2020年)

事業内容: 生活用品製造及び販売
設立年: 1930年
本社: 英国🇬🇧(ロンドン)、オランダ(ロッテルダム)
従業員数: 15.5万人

概要

イギリス・ロンドンに本拠を置く世界有数の一般消費財メーカー。食品・洗剤・ヘアケア・トイレタリーなどの家庭用品を製造・販売する多国籍企業。戦後から世界進出に積極的であり、現在世界180ヵ国以上に支店網を擁する。

イギリスの石鹸会社のリーバ・ブラザーズとオランダのマーガリン会社のマーガリン・ユニが1930年に合併して誕生しました。紅茶、アイスクリーム、食品、化粧品やパーソナルケア分野において強力なブランドを保有しています。紅茶事業は2021年11月に売却を発表しました。

ロンドンの本社

プロダクト・ビジネスモデル

世界最大級の消費財メーカーとして、150カ国でブランドを提供している。食品、パーソナルケア、ホームケアの分野で暮らしに根ざした幅広い製品を提供。

なお、1年間で10億ユーロ以上を売り上げているブランドは13もあり、高いブランド力を有しています。

売上構成

セグメントでは、Beauty & Personal Care、Foods & RefreshmentとHome Careに分かれます。さらにサブセグメントベースで売上高構成を見ていくと以下の通りとなります。

紅茶:リプトンとブルックボンドの二大ブランドを擁しています。売却中です。

食品:日本でも有名なクノールやマーマイトといったブランドで世界展開しています。スープと調味料の分野では世界大手です。調味料は、Knorr(調味料、ソース)、Hellmann(マヨネーズ、マスタード、サラダドレッシング、ソース)ブランドで展開しています。

スキンケア・日用品:Axe、LUX、Dove、モッズ・ヘア、レセナ、ヴァセリン、クレンザーのジフ、ドメスト等のブランドを擁し、日用品・トイレタリー業界の世界シェアではP&Gと首位の座を争っています。化粧品・香水業界でもロレアルやコティ等と世界上位を争っています。

アイスクリーム:ウォールズ・アイスクリーム、マグナム(Magnum)、ポプシクル、ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry's)、Breyers、Cornetto、Carte d'3等のブランドを世界展開しています。アイスクリームの分野では世界シェア首位級です。

オーラルケア:Mentadent、Close Up、Pepsodent等の世界的なブランドを有していて、歯磨き粉業界では上位に位置しています。

ユニリーバはアムステルダム証券取引所とロンドン・ニューヨーク証券取引所にそれぞれユニリーバNVとユニリーバPLCを上場させていましたが、2020年に二元上場制は廃止しています。

主なM&A(合併買収)

2000年 ベストフーズを242億ドルで買収
2010年 イタリアの冷凍食品をIglo Foodsへ売却
2010年 米国の調味料メーカーのAlberto-Culverの買収
2011年 ボディケアブランドのSanexをコルゲート・パーモリーブへ売却
2011年 ロシアの化粧品会社のOJSC Concern Kalinaを買収
2011年 北米の調味料会社(Culver Speciality Brands)をB&G Foodsへ売却
2013年 米国のドレッシング事業をPinnacle Foodsへ売却
2014年 パスタソースのRagu(ラグー)及びBertolli(ベルトーリ)をミツカンへ売却
2016年 大豆飲料をコカコーラへ売却
2016年 会員制髭剃りのダラー・シェイブ・クラブを買収
2017年 フェイシャルマスクやクリームを手掛ける韓国Carver Koreaを買収
2018年 チーズスプレッド事業を68億ユーロでKKRとGBL連合に売却
2019年 米国のスキンケアブランドであるTatchaを買収
2019年 フランスのスキンケアブランドであるGaranciaを買収
2020年 Hindustan UnileverとGlaxoSmithKline Consumer Healthcareが経営統合
2021年 ユニリーバが紅茶事業をCVCキャピタルパートナーズへ45億ユーロで売却

市場動向

食品飲料

調査会社のザビジネスリサーチカンパニーによると、2021年の同業界の市場規模は5兆8174億円です。2022年にかけて、年率9.7%で成長し、同年には6兆3835億円に拡大するものと予測しています。

調査会社のリサーチアンドマーケッツによると、2019年と2020年の同業界の市場規模は5兆9438億ドル、6兆1111億ドルです。2019年から2020年にかけて年平均2.9%で成長しています。
2020年の同市場規模は5兆8388億ドルです。2021年にかけて年平均6.1%での成長を見込みます。

食品飲料メーカーの2021年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年の食品飲料業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はADM、2位はペプシコ、3位はネスレ、4位はJBSとなります。

食品飲料メーカーの市場シェア(2021年)

日用品・トレイタリー

調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによれば、2019年の家庭用洗剤(洗濯、食洗器、トイレ等の洗剤)の世界市場規模は1640億ドルです。2027年にかけて年率約5%での成長を見込みます。

一方で調査会社の360リサーチレポートによれば、2020年のトイレタリー(デオドラント、ヘアケア、スキンケア、洗顔、ボディソープ等)の世界の市場規模は2542億ドルです。2026年にかけて4.5%での成長を見込みます。

1位の英蘭ユニリーバは、祖業のマーガリンや紅茶事業の戦略レビューを行うなどトイレタリー事業へ資源を集中しております。2位の米国のP&Gは、ヘアケアではパンテーン、ヴィダルサスーン、ファブリック&ホームケアではアリエール、レノア、ジョイ、ファブリーズ等の強力なブランドを擁しております。3位のロレアルはヘアケアとボディケアに強みを持っています。

日用品・トイレタリー領域のイメージ

日用品・トイレタリー業界は非常に広範な商品を含むことが特徴です。海外においても、パーソナルケア、ホームケア、ビューティーケアなど様々な表現がされています。

化粧品はコスメティックスとされ、日用品・トイレタリー業界とは異なる位置づけです。しかし、基礎化粧品はスキンケアの一部ともみなすことができ、日用品と化粧品の定義は各社別々です。
また、日本においては、入浴剤は医薬部外品とされる場合もあり、コンシューマーヘルスケアとも一部重複しています。

口腔衛生(オーラルケア)系の歯ブラシ、歯磨き粉なども、広義のパーソナルケアですが、製薬メーカー系が手掛けることもあり、通常は独立したカテゴリとなっています。

パーソナルケアも、ボディケア(石鹸、ボディーソープなど)、ヘアケア(シャンプーや整髪料など)、スキンケア(日焼け止めなど)、シェービング(シェービングクリームなど)、フェイスケア(洗顔料など)へと細分されます。
ホームケアには、洗濯用洗剤、室内消臭、トイレ用品などが含まれます。

アイスクリーム

2021年の同業界の市場規模は790億ドルです。2030年にかけて年平均4.2%での成長を見込みます。
調査会社のモードーインテリジェンスによると、2020年の同業界の市場規模は624億ドルです。2026年にかけて年平均2.87%での成長を見込ます。

アイスクリームメーカー各社の2021年度の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2021年のアイスクリーム業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はユニリーバ、2位はフロネリ、3位は伊利となります。となります。

オーラルケア

調査会社プレシデンスリサーチによると、2021年の同業界の市場規模は494億ドルです。2030年にかけて年平均8.1%で成長し、規模は998億ドルへと拡大することを見込みます。

2021年の世界1位はコルゲートとなりました。歯磨き粉と歯ブラシの両分野でコルゲートブランドの強さが光ります。2位はP&Gです。歯ブラシはブラウン、歯磨き粉とマウスウオッシュはクレストのブランドで世界展開をしています。3位はGSK(グラクソ・スミスクライン)です。アクアフレッシュやシュミテクトをはじめとした歯磨き粉や入れ歯用のポリデントなどでグローバル展開をします。4位のジョンソン&ジョンソンはマウスウオッシュのリステリンが強く、5位フィリップスは電動歯ブラシに強みがあります。日本からはライオンやアース製薬が上位に入りました

オーラルケア・口腔用品業界は、大きく歯ブラシ、歯磨き粉、マウスウォッシュ、入れ歯用品に分かれます。各市場規模の相対的な大きさをグラフ化すると以下の通りとなります。

オーラルケア業界では歯磨き粉が最大の市場で、マウスウォッシュ、歯ブラシ、入れ歯と続きます。

業績

2021年度の売上高は、買収によるプラスの影響と為替によるマイナスの影響を受け、3.4%増加しました。営業利益は、原料費の増加もあり微増となりました。
2017年以降、売上成長はないものの、規模として売上高500億ユーロを維持しながら、営業利益率は15%超です。

地域別の売上高は、以下の通りです。

・アジア等:234億ユーロ、前年度比▲2.9%

・アメリカ大陸:161億ユーロ、前年度比▲2.4%

・欧州:112億ユーロ、前年度比▲1.5%

アジア等は、アジア、アフリカ、中東、トルコ、ロシア、ウクライナ、ベラルーシを指します

キャッシュフローの推移

FY2020(2020年1-12月期)の営業キャッシュフローは91億ユーロと、前年度比+11.7%、過去5年間では年率+4.3%となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は17.9%と、前年度の15.6%から改善しました。

FY2020の設備投資額/売上高は2.0%と、前年度の2.9%から低下しました。

FY2020のフリーキャッシュフローは80億ユーロと、前年度比+22.1%、過去5年間では年率+9.4%となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は15.8%と、前年度の12.7%から改善しました。

株主還元(配当、自社株買い)の推移

FY2020(2020年1-12月期)の支払配当総額は43億ユーロと、フリーキャッシュフローの範囲内です。

ROICの推移

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動のために投じた資金を使ってどれだけ利益を生み出したか(投資効率)を測る指標となります。

正確な計算方法はないため、ここでは、税引後営業利益/投下資本(=運転資本+有形固定資産(リース含む)+無形固定資産+在庫+のれん)として計算しています。

少なくともWACC(加重平均資本コスト)を超えることが絶対条件と言われれています。

過去5年間のROICは15〜20%程度と、投資効率は比較的高いです。

経営者 

CEOはAlan Jope(2019年より)。

Alan Jope

スコットランド出身。エジンバラ大学ビジネススクールで商学士号を取得。また、2001年にはハーバード・ビジネス・スクールのジェネラル・マネジメント・プログラムに参加した。

ジョープは1985年に新卒のマーケティング研修生としてユニリーバに入社しました。ユニリーバ最大の部門であるビューティ&パーソナルケアの社長を務め、中国などいくつかの事業の運営を経験しました。

2009年から、ジョープはユニリーバの中国と北アジアにおける事業を指揮し、その規模を倍増させ、将来の成功のための重要な基礎を築きました。

2011年にユニリーバの北アジアにおける事業の社長として、ユニリーバのリーダーシップ・エグゼクティブに任命されました。それ以前には、ロシア、アフリカ、中東の社長や、ユニリーバのビューティ&パーソナルケア部門の社長などの要職を歴任しています。それ以前は、英国、タイ、米国で営業とマーケティングの職務を数多く経験

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