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【企業分析】リクルートホールディングス

6098 (東証プライム)
時価総額: 7.9兆円
株価: 4,600円
売上高: 2.9兆円
営業利益: 3,800億円
(2022年3月期)

事業内容: 持株会社(人材領域、非人材領域(販促領域)、機能会社)
設立年:1963年、2014年上場
本社: 日本🇯🇵東京都千代田区丸の内グラントウキョウサウスタワー内
代表者: 出木場久征(代表取締役社長兼CEO)
従業員数: 51,757人
主要株主:凸版印刷 6.76%、電通 3.76%、大日本印刷 3.47%、リクルートグループ社員持株会 2.80%、TBSテレビ 1.99%、日本テレビ放送網 1.99%、エヌ・ティ・ティ・データ 1.88%

概要

株式会社リクルートホールディングス(英: Recruit Holdings Co.,Ltd.)は、求人広告、人材派遣、販売促進、ITソリューションなどのサービスを手掛けるリクルートグループの持株会社である。海外売上高比率が40%以上を超える。日経平均株価およびTOPIX Core30、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ

本社が入居するグラントウキョウサウスタワー

リクルートの歴史は意外にも長く、1960年に東大の学生新聞の広告代理店として設立されたのがルーツです。以前は「リクルート」という一つの会社だったのですが、2012年に分社化して以降、リクルートホールディングスと事業会社に分かれています。

また、若手から大きな仕事を任せてもらえるような「ベンチャーマインド」が残っている会社でもあります。例えばRingと呼ばれる制度があり、「誰でもビジネスプランを提出でき、審査に通ったプランには予算を与えられる」といった社内ビジコンに似た制度になっているようです。これまでに「スタディサプリ」や「ゼクシィ」などの中核事業を生み出してきました。

プロダクト・ビジネスモデル

ビジネスモデル

就職・住宅・ヘアサロン・レストラン・進学など、必要な情報を求める個人ユーザーと企業クライアントが出会う場を作り出し、より多くの最適なマッチングを実現することにより双方の満足を追求すること。これが、リクルートグループが創業より大切にしビジネスのエンジンとして活用してきたビジネスモデルです。

テクノロジーの力でマッチングを速く、シンプルに、もっと近くに

インターネットそしてスマートデバイスの普及により、膨大な量の情報に直接触れられるようになった今、より速く、シンプルに、もっと身近に誰もが最適なマッチングに出会えることの重要性が高まっています。

私たちのビジネスモデルもまた、テクノロジーを取り入れながら社会のニーズに応えるべく進化を続けていきます。これにより、「まだ、ここにない、出会い。」を創出し、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現に貢献していきます。

リクルートグループの事業体制

リクルートグループの事業体制は、3つの戦略ビジネスユニット(Strategic Business Unit、以下「SBU」)で構成されています。リクルートホールディングスがガバナンスやモニタリングなどの持株会社機能に集中する一方、個々のSBUが自律自転してスピーディに事業戦略を遂行できる体制を確立することで、企業価値の向上を目指しています。

HRテクノロジーSBU

2012年に買収したIndeedと、2018年に買収したGlassdoorで構成され、60か国以上でサービスを展開しています。

先進的なテクノロジ ーを活用したオンライン求人プラットフォームの運営や、人材ビジネス に関するソリューションの提供により、個人ユーザーの求職活動と中小企業を含む企業の採用活動をサポートしています。

マッチング(メディア)&ソリューションSBU

販促領域と人材領域の2つの事業領域で構成されています。

販促領域では、住宅・美容・結婚・旅行・飲食などの多様な分野において、個人ユーザーと企業クライアントを結ぶマッチングプラットフォームを提供しています。また、SaaS (Software as a Service)の提供などを通じた、業務負荷の軽減および生産性向上を支援するサービスを、主に中小企業向けに提案しています。

人材領域では、個人ユーザーの求職活動と企業クライアントの採用活動を支援するマッチングプラットフォームの運営と、人材紹介サービスなどを展開しています。

人材派遣SBU

日本並びに欧州、 米国および豪州で構成され、事務職派遣、製造業務・軽作業の派遣ならびに各種専門職の派遣などの総合的な人材派遣サービス事業を世界各国で展開しています。変化し続けるグローバルな労働市場環境において、求職者と企業のニーズに合わせて柔軟かつ多様な働き方を提供することに貢献しています。

リクルートの事業の基本、「リボンモデル」とは?

「人と企業の不満、不便、不安といった『不』を解消し、新しい価値を提供する」

これはリクルートグループの企業理念です。リクルートは人々のニーズの源泉である「不」をITの力で解決し、世の中に新しい価値を提供しようとしています。

実際にリクルートの各事業会社が提供する「SUUMO」や「リクナビ」をはじめとしたサービスの多くは、さまざまな「不」から始まったWebサービスです。上記のような「不」を解消するために、リボンモデルというビジネスモデルをリクルートは生み出しました。

下の図は、リボンモデルを簡単に表したものです。

リクルートのカンパニー比較

以下、リクルートを構成する主要7社について、事業内容や社風などを基にご紹介します。

リクルートキャリア:頭の切れるパッション系

「リクナビ」「リクナビNEXT」などを運営する人材メディア事業のカンパニーです。

人材紹介業の営業は、取引先企業の採用責任者など、職位の高い人と向き合います。そのため上下関係に慣れている人が適しており、リクルートキャリアの社員はグループの中でも体育会系の割合が多いといわれています。

また、人材のなかでも正社員を扱うことから、自分の未来に対してもビジョンを持つ社員が多く、「自分のなりたい将来像」を熱く語る人が多いようです。

リクルートジョブズ:イケると思ったらまず行動

「タウンワーク」「フロムエー」など、人材メディア事業のなかでもアルバイト、非正規雇用領域で事業を行っています。

同じ人材メディア事業を行うリクルートキャリアと比較すると、リクルートキャリアのクライアントが大手企業なのに対し、リクルートジョブズのクライアントは中小企業であり、クライアントの数はリクルートジョブズが圧倒的に多いです。そのため一つ一つについてゆっくり考える時間はなく、「イケると思ったらまず行動」という傾向が強くなっているようです。

リクルート住まいカンパニー:アットホーム

緑のキャラクターで有名な「SUUMO」を持つ、販促メディア業務のカンパニー。SUUMO一本というイメージが強いですが、最近は「住まいから暮らしへ」というコンセプトを掲げ、関連領域で新規事業が立ち上がっています。

とはいえ事業の核はSUUMO。他のカンパニーと異なり、一つのメディアに強く依存しています。また主要クライアントの数も少なく、「狭く深い」付き合い求められます。社員の多くが同じサービス、同じクライアントに向き合うことから、社内に団結力が生まれ、アットホームな雰囲気が出来上がっているそうです。

リクルートライフスタイル:個性が集まる動物園

「ホットペッパー」「じゃらん」など、販促メディア事業のなかでも日常消費領域でサービスを展開しています。最近は無料POSレジアプリ「Airレジ」が急速に拡大し、新たな基幹事業となりつつあります。

ライフスタイルの担当する日常消費領域は事業サイクルが早いため、新規事業を生み出すスピードも早くなります。提供するサービスも多く、28(※7)もあります。このような特徴もあり、ベンチャー気質の強い社員が多いといわれています。一方で多様性に富んでいるともいわれ、ある社員は「ライフスタイルは動物園のようだ」と形容していました。

リクルートマーケティングパートナーズ:ロマンとそろばん

販促メディア事業のうち、「結婚」「進学」「車」の3領域で主に事業を行うカンパニーです。業界で圧倒的な地位を誇る「ゼクシィ」を軸に、新たな基幹事業となり得る「スタディサプリ」の拡大に取り組んでいます。

マーケティングパートナーズでは「ロマンとそろばん」という考えを大事にしています。この言葉のロマンは「情熱」、そろばんは「論理」を意味し、これらが合わさって初めて良い新規事業が生まれるという考えです。以前社長が、ある事業コンテストの公表において「ロマンとそろばんを掛け合わせて考えたか」という趣旨の発言をしており、社内でもこの言葉を耳にすることは少なくないようです。

新卒採用について「ロマンとそろばん、どちらかに秀でている人を取りたい」と社員が語るように、社員は、ロマンを熱く語る人と、論理的思考力に優れた人の2パターンに大きく分かれるようです。

リクルートスタッフィング:キラキラ系

「人材派遣領域」の中心的カンパニーです。

クライアント企業に必要な人材像の提案と、自分たちが持っている人材のマッチングを行っています。内定者によると、スタッフィングの社員は女性率が半分程度と高く、いわゆる「キラキラ」した人が多いそうです。採用HPの社員のインタビューにも「成長し続け、キラキラと働く人になりたい」と語る社員がいます。

リクルートコミュニケーションズ:クリエイティブ、論理的思考力

各カンパニーのメディアのコンテンツ制作を行う機能会社です。各メディアの、各領域での競合優位性を高めることを主軸としています。

新卒で入社すると高確率で「ディレクター」職につき、各カンパニーに配属されます。どのようなコンテンツを作れば人を動かせるか、クリエイティブに考えることが主な役割です。広告・制作事業であるため、社員には大手広告代理店からの転職者、内定者が多くいます。

グループの「社内コンサル」のような位置付けでもあり、コンサル志望の人も一定数います。他カンパニーと比較すると「論理的思考力」が強いといえるでしょう。また全体を俯瞰(ふかん)する能力も優れており、事業会社の社員とのディスカッションで「そもそも……」という言葉が頻繁に使われるようです。

市場動向

人材業界の市場規模、業界地図やコロナ以後の動向を解説します。人材業界の市場規模は7兆128億円。ただし2020年度はコロナ渦の影響で市場の縮小が予測されます。

今回は人材業界の市場規模を、主要3業界(人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業)のデータをもとに考察していきます。

人材業界の市場規模

まずは人材ビジネス3業界(人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業)の市場規模を、2019年度の統計を踏まえて解説いたします。

人材派遣

2019年度の人材派遣業の市場規模は、6兆6,800億円(前年度比4.7%増)。
一般社団法人日本人材派遣協会によると、2020年1~3月平均の派遣社員数は約143万人です。

職種別派遣社員数で見ると、男女計では「事務職」が43万人ともっとも多く、「製造関連職」が38万人(27.0%)、「運搬・清掃・包装関連職」が22万人(15.6%)と続きます。特に事務職の派遣は、就労人口の減少などを背景に2019年度は好調を維持しました。

またITエンジニアや介護系人材は慢性的な人手不足の業種であり、派遣業界においても人材供給が不足している状態となっています。

人材関連ビジネス市場規模の推移(派遣事業)

人材紹介

2019年度の人材紹介業の市場規模は、3,080億円(同1.7%増)。

人材紹介業は、人材派遣業と比較すると人材業界での売上高は小さいのが現状です。しかし2009年度以降、右肩上がりでの市場拡大が続く成長産業であることも事実です。

同じく矢野経済研究所の調査によると、2010年度の人材紹介業の市場規模は前年度比111.8%の850 億円。

2010年度と2019年度の市場規模を比較すると、9年間で3倍以上の市場拡大が起きていることが分かります。

人材関連ビジネス市場規模の推移(人材紹介)

再就職支援

2019年度の再就職支援業市場の市場規模は、248億円(同3.3%増)。

人材ビジネス3業界のうち、人材派遣業と人材紹介業は好況時に市場が拡大する傾向。一方で好況時は再就職が容易になることから、再就職支援業は成長が鈍化する傾向にあります。

概況

人材業界3ビジネスのうち、近年続いているのが「人材派遣業者の人材紹介業への参入」です。

派遣業は最低賃金の引き上げや、労働者派遣法改正(2015年9月施行)による「3年ルール」の導入など法改正が続き、利益率が低下。

2020年現在、派遣業が人材業界3ビジネスの中でもっとも市場規模が大きい業種であることに変わりはありません。しかし、各社がより利益率が高い新業態を探る中で、人材紹介業に対する関心度が高まっていると言えるでしょう。

【売上別】人材紹介会社ランキング

業界動向SEARCH.COMの2018〜2019年のデータを参考に、売上別の人材紹介会社ランキングをまとめました。

1位から5位は、以下の通りです。

短期的な展望と中期的な展望

コロナ以後の人材業界の動向は、まず「短期的な展望」と「中長期的な展望」を分けて考える必要があります。

短期的には各社の業績悪化は避けられず、有効求人倍率のコロナ以前の数値への回復には時間を要すると見られます。

中長期的には、少子高齢化による労働力人口の縮小が人材業界の大きな課題となるでしょう。中高年の就業希望者の円滑な転職を実現する仕組みづくりが求められるでしょう。

短期的には有効求人倍率の回復に時間を要する

コロナ禍の正社員有効求人倍率の推移は、下記の通りです。

2020年1月 1.07倍
2020年2月 1.05倍
2020年3月 1.03倍
2020年4月 0.98倍
2020年5月 0.90倍
2020年6月 0.84倍
2020年7月 0.81倍
2020年8月 0.78倍
2020年9月 0.78倍

有効求人倍率は1を上回れば売り手市場、下回れば買い手市場です。各国で渡航制限が続き、観光需要が低下。

2020年第2四半期の貿易量も新型コロナの影響で前期比14.3%減と急落するなど、国内だけでなく、世界的に見ても経済情勢の不確実性が高い状況です。

新型コロナウイルスのワクチン開発の情勢や、各国の規制緩和の状況にも左右されますが、有効求人倍率のコロナ禍以前の数値への回復には当面時間を要するでしょう。

業績

2021年度
売上高は前年度比26.54%増の2,871,705百万円になりました。営業利益は132.36%増の378,929百万円になりました。営業利益率は13.20%になりました。 日本も含め米国や欧州では経済活動の回復が継続し、 前年に比べ人材採用が活発となり、増収増益になりました。

EPS・1株配当・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比126.89%増の180.83円になりました。1株当たりの配当は前年度比5.00%増の21.00円になりました。配当性向は11.61%になりました。

事業構成

セグメントは大きくメディア媒体事業、人材仲介事業、人材派遣事業へと分かれます。

メディア媒体事業
じゃらん(国内旅行)、ゼクシイ(結婚)、グルメ(飲食)、ビューティー(美容・理髪)、SUUMO(マンション・住宅)、リクナビ(就職・転職)、タウンワーク(アルバイト)のブランドで紙媒体やメディアを通じて展開しています。店舗向けのPOS決済端末としてAirREGIも展開しています。

人材仲介事業
indeedとGlassdoorで人材仲介事業を展開しています。

人材紹介事業
スタッフサービス、リクルートスタッフィング、Staffmark(米国)、Advantage(欧州)、PeopleBank(アジア)といったブランドで事業を展開しています。

M&Aの動向

2008年 スタッフサービスを買収
2011年 Advantage Resourcing買収
2012年 米国のindeedを買収
2013年 中古不動産情報サイトのMovotoを買収
2015年 PeopleBankを買収
2015年 美容院予約サービスのHotspring Venturesを買収
2016年 オランダのUSG Peopleを買収
2017年 宿泊施設口コミサービスのTrust Youを買収
2018年 米国の求人情報検索サイトGlassdoorを買収
2019年 イギリスのSyft Onlineを子会社化

経営者 

出木場 久征(いでこば ひさゆき、1975年〈昭和50年〉4月22日 - )が代表取締役社長兼CEOを務める。

出木場 久征 社長兼CEO

鹿児島県出身。志學館中・高等部を卒業後,早稲田大学商学部に入学,卒業後、1999年にリクルート(現・リクルートホールディングス)に入社。旅行領域や美容領域をはじめ、数々の情報誌のネットメディア化、オンライン予約一般化等、デジタルシフトを牽引した。

2012年に執行役員就任後、同年自身が買収を推進したIndeedのチェアマンに就任。同社のCEOとプレジデントを経て、2016年よりリクルートホールディングス常務執行役員、2018年より専務執行役員としてHRテクノロジー事業を急速育て、グループのグローバル化を強力に推進した。

2019年に取締役就任、2020年より副社長執行役員を兼任し、ファイナンス本部、事業本部(COO)を担当。2021年より代表取締役社長兼CEO。

沿革

江副浩正によって創立された。主に人材派遣、販促メディア、人材メディア、ITソリューションを提供している。近年はITを駆使した事業分野に大幅に注力している。社員全員が参加できる新事業コンペを導入し、自由に事業を起こすことができる社風であるという。出版する情報誌からフリーター、就職氷河期、ガテン系などの流行語が生まれている。

1988年の、戦後最大級の疑獄事件ともいわれたリクルート事件の後、創業者である江副が経営から退くと共に、大手スーパー・ダイエーの創業者・社長(当時)の中内㓛へ保有株式が譲渡され、ダイエーの系列下に入ったが、ダイエーグループの業績悪化などにより2000年ごろに離脱している。

ダイエーグループ入りの際、ダイエーは「もの言わぬ株主」に徹する代わりに負債の肩代わりはしない立場をとった。このため、リクルートはダイエーより来た高木邦夫の下、バブル期の不動産やノンバンク事業の失敗で94年3月期に約1兆4000億円あった有利子負債を自力で完済した。現在はどの企業グループにも属さず、サービス業としての中立性を維持しながら事業展開をしている。

2018年4月1日には、グループ組織再編を行い、HRテクノロジー事業、メディア&ソリューション事業、人材派遣事業の3つの戦略ビジネスユニットを新たに構成するとともに、それぞれの事業統括会社を設立した。

2021年4月1日、株式会社リクルートと事業会社7社が統合。新生株式会社リクルートとなる。

財務状況

貸借対照表(バランスシート)

株価推移

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