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【企業分析】ニデック(旧日本電産)

6594 (東証プライム)
時価総額:4.39兆円
株価:7,350円
売上高:2.2兆円
営業利益:1,000億円

事業内容:電気機器メーカー
設立年:1973年
本社: 🇯🇵京都府京都市南区久世殿城
代表者: 永守重信(代表取締役会長最高経営責任者)、小部博志(代表取締役社長執行役員最高執行責任者)
従業員数:11.4万人
主要株主: 永守重信 8.51%、株式会社京都銀行4.27%

概要

精密小型モータの開発・製造において世界一のシェアを維持・継続しており、世界シェアは約11%である。

ニデック株式会社 本社(京都市)

「Nidec」は、Ni=日本、De=電産、c=株式会社、の略。2023年(令和5年)4月1日より社名を英称と同じニデック株式会社に変更し、グループ会社の商号もグループブランド名である「ニデック」の名を冠したものへ統一した。

プロダクト・ビジネスモデル

事業の構成

当社はすべての「回るもの、動くもの」をキーワードに、社会のニーズに応える次代の駆動技術を創造しています。

精密小型モータ

パソコンやデータセンターで使われるHDD用モータを取り扱っています。また、スマホ・携帯電話に使われる触覚デバイスに加え、OA機器用モータやCD・DVDドライブ用モータ、ファンモータを含む熱処理部品なども製造・販売しています。

車載

世界トップシェアを誇る電動パワステ用モータや、ポンプや先進運転支援システム(ADAS)向けセンサー、EV用トラクションモータなどを製造・販売しています。

家電・商業・産業用

洗濯機やエアコンをはじめとする家電製品向けのモータや、 エレベータ用モータなどの商業用モータ、そして船舶用モータなどの産業用モータを取り扱っています。

機器装置

工場で使用される産業用ロボットや各種検査装置、プレス機器などを製造・販売しています。

電子・光学部品

産業用の電子機器に搭載されるスイッチやトリマ、センサなどの電子部品と、デジタルカメラやスマホ・携帯電話に搭載されるカメラシャッターや手振れ補正装置などの光学部品を製造・販売しています。

その他

オルゴール関連商品や人材サービス、各種保険などを取り扱っています。

製品グループ別の売上高

市場動向

モーター業界の動向と現状(2021-2022年)

2021年のモーター製造額は17.9%増 家電・産業向け好調

下のグラフは、電動機・モーターの製造金額の推移を示しています。経済産業省の生産動態統計年報(2022年6月公表)によると、2021年の電動機・モーターの製造金額は、前年比17.9%増の8,218億円でした。

電動機・モーターの製造金額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見ますと、2017年から2020年までは緩やかな減少傾向にありましたが、2021年には増加に転じています。

2021年のモーター業界は、昨年のコロナ禍による減少から反転して増収を記録しています。2021年は家電や空調機器、搬送用ロボット向けモーターの需要が増加しました。一部、半導体不足による影響はあったものの車載向けモーターも堅調に推移しました。一方、HDD向けなどの精密小型モータは減少に転じました。

モーター首位の日本電産は、コロナ禍の厳しい環境のなかでも過去最高の売上高を更新しています。円安による為替差益も追い風となり、家電・商業・産業、5G向けモーターが前年比30~40%の増収となっています。

モーターは、電気を使って動力を得る装置のことで『電動機』とも呼ばれます。電気や電池などの「電気エネルギー」を回転運動などの「機械的エネルギー」に変換するための装置です。電気の流し方や作り方で大別され、主に「DCモーター」、「ACモーター」、「ステッピングモーター」の3つに分類できます。

モーターは、冷蔵庫や洗濯機、扇風機、スマートフォンやパソコン、自動車や産業機械、医療機器やOA機など幅広く使用されています。そのため、家電や産業機器、自動車業界などの動向に影響を受けやすい傾向にあります。

モーター業界 売上トップ5(2021-2022年)

売上高ランキングを見ますと、首位が日本電産、2位がミツバ、3位がミネベアミツミ、安川電機、マブチモーターと続きます。日本電産はHDD用モーターと車載用電動パワステモータで世界トップシェアを誇ります。2位のミツバを大きく引き離し、国内のモーター業界をけん引しています。

EV用「駆動モーター」開発強化 ミニEV・二輪用市場も開拓

近年、世界的な脱炭素の高まりから、自動車業界ではEV(電気自動車)の開発が活発化しています。一方、自動車の電動化によって、従来のガソリン車の「エンジン」は「駆動モーター(トラクションモーター)」へとシフトするため、車載用駆動モーターの開発競争が激化しています。

グローバルインフォメーションの市場調査レポートによると、自動車用トラクションモーターの世界市場規模は、2021年の41億ドルから2026年には173億ドルの拡大を予測しています。こうした市況から、モーター業界では今後の需要拡大を見込み、EV用駆動モーターを含む車載用モーター分野を強化しています。

車載用電動パワステモータで世界トップシェアを誇る日本電算は、「モーター、インバーター、減速機(ギア)」が一体となった、トラクションモータシステム『E-Axle』を2019年4月から量産を開始しています。2025年には自動車事業で売上高1兆3,000億円を目指し、電気自動車用駆動システムでは2030年までに世界シェア40~45%の獲得を目指しています。

業績

・連結売上高は、前期比16.9%増収の2兆2,428億円となり過去最高を更新。

・営業利益は、当期に構造改革費用757億円を計上し、前期比41.3%減益の1,001億円。

・税引前利益は、為替差益200億円を計上した影響も含め、前期比29.1%減益の1,206億円。

・当期利益は、法人所得税費用750億円を計上した影響や非継続事業からの当期損失20億円を計上した影響も含め、前期比66.9%減益の450億円。

・WPR-X活動による抜本的な収益構造改革を継続中。2023年度のV字回復の実現を目指す。

中期戦略目標 「Vision 2025」

2021年7月に発表した中期戦略目標では、2025年度には売上高4兆円、ROIC 15%以上の実現を目標としています。また、ESGで評価される企業になるため、世界初、世界No.1技術の積み上げによる社会ニーズの解決、ESG銘柄としての認知度向上、One NIDECとしての組織、ガバナンス強化を行っていきます。

2025年度に売上高4兆円達成を目指して、新規M&Aを含めて精密小型モータ事業では8,000億円、車載事業では13,000億円、家電・商業・産業用事業では13,000億円、その他の製品グループでは6,000億円の売上高を目指します。

精密小型モータ

技術優位性を生かした新たな需要の創造と、競争優位を生かした収益性改善に注力し、2025年度に売上高8千億円を目指します。

精密小型モータ事業にはHDD用モータ事業とその他小型モータ事業があります。HDDは主にPCやサーバを始めたとした多くの情報機器に用いられていますが、その心臓部を担うのがHDD用モータです。HDD用モータに関しては収益性の向上に努めます。タブレットやスマートフォンなどの新しいIT端末の普及に よりPC用途のHDDは今後大きな市場拡大を望めませんが、一方で5G通信の拡がりにより画像や動画などの高画質・高容量化、ソーシャルメディアやゲームの普及といったビッグデータ時代は益々加速すると考えられます。それに伴うスト レージ需要の拡大により、今後もサーバ用途等ではHDD用モータ需要は安定して継続すると見込まれます。

その他小型モータに関しては「5G通信に起因する次世代技術」や「家電製品のブラシレスDC化」、「小型モビリティ」といった分野で今後の伸びしろに期待できます。5G通信が主流になると通信速度は従来の100倍、通信容量は1,000倍になると言われています。しかし膨大なデータを高速で処理するがゆえにCPU(中央演算処理装置)や電子回路に高熱が生じてしまいます。 

そこで放熱・冷却といったサーマ ルマネジメントに対する需要が益々高まることが予想されます。この需要に対応するため、当社ではヒートシンクや ヒートパイプ、ベイパーチャンバー等を組み合わせたサーマルモジュール製品を市場に提供しています。また、家電が省電力化、コードレス化するに従い省エネ・ 長寿命・低騒音という特徴を持つ当社ブラシレスDCモータの需要が益々増えてきます。さらに電動自転車、電動バイク、電動スクーターやミニEVといった電動化が進んでいる小型モビリティ分野も当社の成長を中長期で牽引してくと考えられます。

その他のAV・IT・OA・ 通信機器や家電・産業機器など多岐にわたる分野においても新たな活用の場を開拓し、持続的な成長につなげていき ます。

小型ブラシレスDCモータ

車載

高付加価値なモジュール製品開発を進め、2025年度に売上高1.3兆円を目指します。

車載事業では、気候変動による影響が深刻さを増すなか、自動車業界は脱炭素化へ向けた取り組みを加速させています。乗用車、トラック等が世界のCO2排出量に占める割合は約1/5にのぼることから、主要各国は相次いでガソリ ン車・ディーゼル車の販売禁止を発表し、自動車の電動化と電気自動車へのシフトを後押ししています。当社は 「クルマの電動化」や「グリーントランスフォーメーション」を中長期的成長機会と捉え、世界No.1シェアを誇る電動パワステ用モータやブレーキ用モータを始めとした車載用モータに加え、電動オイルポンプや電動ウォーターポンプ等の車載製品を提供しています。

さらに、ガソリン車に例えればエンジン部位に相当する駆動用モータ システム(トラクションモータ)をEV用に開発・供給することにより、走行中の自動車が排出するCO2を実質的にゼロ にする業界の取り組みに積極的に関与していきます。これらにECU(電子制御ユニット)を組み合わせることで各部品 がシステム化され、高付加価値のモジュール製品を提供することができます。

また、モータやECU、センサー等を統合して車のさまざまな機能を電子制御することにより、安全走行や衝突回避、 被害低減、自動走行が可能となり、クルマの安全性が高まります。他にも、燃費改善によるCO2の排出量低減効果も 期待できます。今後は自動車の電装メーカーを目指し、これまで培ったモータ技術にECUやセンサーの先進技術を統合 したシステム・モジュール製品を自動車業界に提供することで、より安全で環境に優しく快適なクルマ作りに貢献し ていきます。

一体型トラクションモータシステム(E-Axle)

家電・商業・産業用

重点成長事業として、売上・コスト両面でのシナジー効果の追求と、収益性の改善を図り、2025年度に売上高 1.3兆円 を目指します。

現在、世界の電力需要の約半分をモータが占めていると言われており、特に産業用モー タによる消費量が大きいことから、より高効率なモータへの置き換えが急務となっております。家電部門では洗濯機、乾燥機、食洗機用モータや冷蔵庫用のコンプレッサー及びコンプレッサー用のモータ等を手掛けています。

「家電製品のブラシレスDC化」の波に乗り、冷蔵庫を中心とした家電の省電力化に貢献します。商業部門ではエアコン用モ ータを手掛けており、産業部門では農業、ガス、鉱業、上下水道、海洋といったマーケットを中心に事業を展開して おります。世界的な省エネ・省電力化の流れが進んでいますが、当社はこの流れを追い風に、家電・商業・産業用事業のさらなる発展を目指します。

家電・商業・産業用モータ製品群

M&A

ニデックはM&Aを成長の為の重要戦略として位置付けています。

特に当社が重要2事業として位置付けている車載、家電・産業・商業の市場に進出するには従来持っていなかった技術、製品、商流を獲得することが必須であり、あらゆるモータにおいてグローバルなネットワークを形成することが不可欠と考えているため、 M&Aを重要戦略と位置付けています。

長期目標 「2030年度売上高10兆円」

ニデックは、1973年創業から40年余りで、売上高1兆円を超える企業へと成長しました。なかでも、1990年代後半から訪れた「パーソナルコンピュータの普及」という大きな波を捉え、飛躍的な発展を遂げました。
そして現在、「地球温暖化」、「労働人口の減少」という社会課題を背景に、5つの大波が到来しています。 ニデックはこの大波で生じる事業機会を捉え、2030年度売上高10兆円を目指します。

経営者

創業者・会長

創業者 会長・永守重信氏(1944〜)

音響機器制作会社ティアックに就職後、同社子会社である山科精器取締役の経歴を経て、ティアックの持ち株を元に、第1次石油危機が起こった 1973年7月、28歳で日本電産(現ニデック)を創業する。
産業活動や社会インフラの動力源となるモーター製造を自らの仕事と決め、”困難期”に積極的な投資を展開。石油危機、バブル崩壊、進出先・タイ国の大洪水といった”困難期”の直後に増益・最高益をあげるという永守氏の経営手法。「僕はいつも足下悲観、将来楽観と言っています」という経営観。一代で世界45カ国の事業拠点、総従業員数約13万人のグループを構築。

社長

次期社長候補として、5人を副社長に昇格させる4月1日付の人事を発表した。今後、指名委員会で審議し、このうち1人を来年4月に社長に登用する方針だ。永守重信会長は経営体制の移行に伴い、会長とCEO(最高経営責任者)から退いて代表権のない取締役グループ代表に就く。

5人は、子会社の日本電産サンキョー社長の大塚俊之氏(57)、ニデックオーケーケー会長の西本達也氏(66)、専務の北尾宜久氏(62)と小関敏彦氏(64)、岸田光哉氏(63)。大塚氏と西本氏、北尾氏は銀行出身で、小関氏は新日本製鉄(現日本製鉄)、岸田氏はソニー(現ソニーグループ)から転じた。永守氏と小部博志社長(73)、社外取締役3人で構成する指名委が選任した。

永守氏はオンラインで記者会見し、選任理由を説明した。大塚氏と西本氏、北尾氏については「ハードワーキングで『ミニ永守』だ。業績を上げてきた」と強調し、東大教授も務めた小関氏は「世界的な研究者。リーダーシップもある」と紹介。岸田氏は「ソニーで豊富な経験を積み、苦労をいとわない」と評価した。

 永守氏は「5人のうち誰が選ばれてもOKと太鼓判を押せるくらい、会社に貢献し、これからも貢献してくれる人を選んでもらった」と述べた。今後は社長を4年、会長を4年務めるサイクルで、経営トップを交代させていくという。

 「ポスト永守」を巡っては、永守氏の主導で外部の人材を後継候補として起用してきたが、いずれも実現せず、混乱が続いてきた。

永守氏は会長とCEOを退き取締役グループ代表に、小部博志社長(73歳)は代表取締役会長兼CEOに就き、徐々に創業メンバー2人が経営の表舞台からフェイドアウトしていくとされている。

株価推移

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