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【企業分析】武田薬品工業

4202 (東証プライム)
時価総額:6.8兆円
株価:4,300円
売上高:3.2兆円
営業利益:5,092億円

事業内容:医薬品の製造・販売
設立年:1925年
本社:🇯🇵東京都中央区日本橋本町
代表者: クリストフ・ウェバー(代表取締役社長CEO)
従業員数: 連結47,347人(単体5,149人)
主要株主: 日本生命保険相互会社(6.79%)

概要

武田薬品工業株式会社は、大阪府大阪市中央区と東京都中央区に本社を置く日本の製薬会社である。タケダ、Takeda、武田薬品とも略称される。日本唯一のメガファーマであり、積極的なM&Aによって業績を拡大し続けている。日経平均株価およびTOPIX Core30、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ。

メガファーマーとは「大規模な製薬会社」を指す言葉である。明確な基準はないものの、売上高が日本円で数兆円規模であり、業界内でのM&A(合併・買収)を繰り返すことで規模を拡大してきた巨大製薬会社がそう呼ばれる。
日本橋の武田グローバル本社

武田薬品の主力製品は医療用医薬品だが、過去には化学製品や調味料などを手がけていたほか、ドリンク剤・ビタミン剤で有名な「アリナミン」もかつては同社の看板製品だった。

これらの事業は次々と子会社や他社に譲渡され、現在は本業である医薬品が売り上げ全体の9割を占めている。今後は睡眠障害に対応する薬品や血液製剤、抗がん剤、デング熱予防ワクチンなどの分野を開拓することで、さらなる成長を図ろうとしている。

プロダクト・ビジネスモデル

武田薬品工業は、230余年の歴史を持つ売上高国
内首位のグローバル製薬企業。80カ国以上におよぶグローバルな事業基盤を持っています。

主な事業は、連結売上高の約9割を占める「医療用医薬品事業」と、「コンシューマーヘルスケア
事業」で、特にオンコロジー(がん)領域のリー
夕一在目指寸亡亡屯纪、消化器系疾患(Gl)領域
におけるイノベーションにも挑戦し続けています。

このような方針のため研究開発費における投資額でも国内トップに。平成27年度は売上高の19.1%に当たる3,459億円を投じるなど、世界レベルの研究開発や京都大学iPS細胞研究所とのパートナーシップなど、積極的な取り組みを行っています。

また、武田薬品工業は国内同業他社と比較しても頭一つ出た業績を誇っています。

武田薬品工業の売上高と営業利益の推移

武田薬品工業は、国内最大手の製薬企業です。2018年にアイルランドの製薬企業・シャイアーを買収したことで売上収益は3兆円を突破。主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が業績を牽引しています。重点領域は「がん」「希少疾患」「ニューロサイエンス」「消化器」の4つです。

武田薬品工業の主要製品の製品別売上高

最主力品の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エ
ンティビオ」は、米国と欧州を中心にシェアを拡大。シャイアー買収で獲得した製品では、遺伝性血管性浮腫発作抑制薬「TAKHZYRO」や血友病A治療薬「アドベイト/アディノベイト」、免疫グロブリン製剤が売り上げに寄与しています。

武田薬品工業の重点領域は、「がん」「希少疾患」「ニューロサイエンス」「消化器」の4つ。「血漿分画製剤」や「ワクチン」にも注力しています。

2019年1月、6兆円を投じてアイルランド・シャイアーを買収した武田薬品工業。売上高は3兆円を突破し、世界トップ10入りを果たしました。

一方、時価総額では中外製薬や第一三共に抜かれ、株式市場からの評価は冴えません。規模拡大を創薬力の強化につなげられるか、買収の真価が問われています。 

そもそもシャイアーの買収の狙いは、▽海外販売の拡大▽希少疾患領域・血漿分画製剤への進出▽研究開発体制の強化――などでした。

買収によって武田の海外売上高は大きく拡大し、19年度は前年度比76.8%増の2兆6984億円に達しました。海外売上高比率は前年度から9.2ポイントアップして82.0%に。米国が全体の約半分を占める一方、国内は18.0%と2割を切りました。20年度は海外の比率がさらに大きくなり、国内は1割を下回る見通しだといいます。

買収で獲得した希少疾患領域と血漿分画製剤領域の売上高は、それぞれ6348億円、3942億円。合わせて1兆円を稼ぎ出しており、従来の「がん」「消化器」「精神疾患」に続く柱となりました。遺伝性血管性浮腫発作抑制薬「TAKHZYRO」は米国で予防治療としての使用が拡大して683億円を販売。血友病A治療薬「アディノベイト」は販売国が広がり、587億円を売り上げました。

創薬力向上は道半ば

一方、これから問われるのが創薬力です。武田は24年度までに承認の可能性がある12の新薬候補を「ウェーブ1」と呼び、ピーク時の売上高を合わせて100億ドル超と見積もりますが、この中で武田が創製したのはドラベ症候群治療薬とナルコレプシー治療薬の2品目にとどまります。

ウェーブ1の品目では、好酸球性食道炎治療薬「TAK-721」や非小細胞肺がん治療薬「TAK-788」など4品目を20年度中に申請する予定ですが、いずれも買収や導入で獲得したものです。

武田は長らく自社から新薬を生み出せない状況が続いています。ウェバー社長は15年の社長就任以降、研究開発の分野を絞り込み、拠点を再編するなどの改革を進めてきました。シャイアー買収によって研究開発費は5000億円規模になり、研究開発の体制は整いつつあります。真価が問われるのはこれからです。

進むノンコア事業の売却

武田はシャイアー買収によって抱えた負債を削減するため、最大100億ドル規模の資産売却を進めています。これまでに、欧州やアジア、南米などでノンコア事業を売却し、旧東京本社ビルや大阪本社ビルも売り払いました。

買収にはシャイアーの収益力を取り込む狙いもありましたが、営業利益率はわずか3.1%にとどまりました。利益を押し下げたのは、買収に伴う統合費用1354億円と、4554億円の「製品に係る無形資産償却費及び減損損失」。統合費用は一時的なもので、20年度は営業利益率が12.2%まで回復する見込みですが、償却費と減損損失は20年度以降も続きます。

武田は海外の製薬企業とともに新型コロナウイルス感染症に対する免疫グロブリン製剤の開発に乗り出しましたが、これはシャイアー買収で血漿分画製剤を強化できたからこそ。メガファーマにふさわしい成果を示すことができるのか。これからが正念場です。

市場動向

製薬業界とは

世界一の長寿国日本の健康な暮らしを支えているのが製薬業界です。

製薬会社は医薬品の製造・販売が主な収益源となります。自社で製造した医薬品を、病院やドラッグストアを通じて患者に販売するというのが大枠のビジネスモデルです。

上に示した通り、製薬会社は大きく分けて、医療用医薬品と一般用医薬品(OTC・大衆薬・市販薬とも呼ばれる)を製造しています。

医療用医薬品とは、医師の処方に基づいて患者が薬局などで購入する薬のことです。それに対し一般用医薬品とは、医師の処方箋が無くても、ドラッグストアなどで個人が自由に買うことのできる医薬品を指します。

医療用医薬品は、更に新薬と後発医薬品(ジェネリック)に分けることができます。

それぞれの製薬会社がいずれか一つの分野を担っている訳ではなく、会社の戦略によって幅広い分野の医薬品を製造したり、強みを生かし注力する分野を決めて製造しています。

製薬業界のビジネスモデル

まず医療用医薬品についてですが、大半は製薬会社から医薬品卸売会社を経由して医療機関や薬局、薬店に提供されます。また少数ではありますが、卸を通さずに製薬会社から直接医療機関や薬局に提供するケースもあります。

一般用医薬品についても医療用薬品と同様に、一定数は製薬会社から医薬品卸売会社を経由して薬局・薬店に流通し、残り分は製薬会社から直接薬局・薬店に流通します。

医薬品が提供される各段階において販売料としての収益が発生します。

また製薬会社は、医薬品の製造・販売だけでなく新薬の研究開発も行っています。新薬の承認を得るまでの段階、発売後の新薬の扱いについて解説していきますので、しっかりと仕組みを理解しておきましょう。

新薬は発売に至るまでに、9年〜16年にも及ぶ研究開発期間と数百億円から1千億円を越える費用が必要です。また、研究対象となったほとんどの候補物質は、途中の段階で開発が断念されるほど、新薬開発は難しいことだと言えます。

このような過程を経て承認された新薬は、特許期間や再審査期間の間は独占販売が認められます。売上推移のイメージで分かるように、新薬の売上は独占販売期間中は売上が拡大するものの、期間終了後はジェネリック医薬品が登場し、急激に落ち込む傾向があります。

つまり製薬会社が持続的に成長していくためには、研究開発を通じた収益源の創出が必要不可欠であると言えます。

業績

売上高の推移

2022年(通期)の売上高は、3兆5,690億600万円で、前年度からの増減額は、+3,711億9,400万円となりました。

2022年(通期)の営業利益は、4,608億4,400万円で、前年度からの増減額は、-484億2,500万円となりました。

営業利益率は、12.9%と、前年度の15.9%から悪化しました。

営業利益率

営業利益率とは、会社がどれだけ儲けているかを示します。

2020年はシャイアー買収に費用が掛かりすぎたせいで営業利益率が一時激減しましたが、これはさらなる飛躍のための投資。実際、2021年には直近5年間の最大値をたたき出す結果となりました。

すでに国内製薬業界でトップの会社ですが、今後の成長にも期待できます。

ROE(自己資本利益率)

続いてROE(Return on Equity)です。

ROEとは、株主から集めたお金でどれだけ利益を出したかを示す値です。

武田薬品工業の直近実績は基準ライン付近をさまよう感じですが、ROEだけで判断しているわけではないのでひとまず悪くはないレベルだと考えています。

自己資本比率

武田薬品工業の自己資本比率はこちら。

自己資本比率とは、返済しなくていいお金の割合を示し、企業の安定性を測る指標となります。

一般的な企業においては「40%」あればそれなりとされます。

武田薬品工業はまさに「それなり」をずっと維持している感じです。

超健全な財務状態とは言えないが、倒産リスクが高いわけでもない。

キャッシュフローの推移

2022年(通期)の営業キャッシュフローは、1兆1,231億500万円で、前年度からの増減額は、+1,121億7,400万円となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は、31.5%と、前年度の31.6%から悪化しました。

フリーキャッシュフローは、9249億8,000万円で、前年度からの増減額は、-4,794億8,100万円となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は、25.9%と、前年度の43.9%から悪化しました。

配当金・配当性向

武田薬品工業の配当金・配当性向の推移はこちらです。

特徴的なポイントとしてはこんな感じでしょうか。

年間配当金がずっと180円
配当性向が荒れすぎ
配当金の支給については、以下の言及されています。

「株主還元」においては、1株当たり年間配当金180円の確立された方針としております。当社は、実質的な成長モメンタムは、中期に亘り継続していくことを見込んでおります。なお、当社は中間配当ができる旨を定款に定めており、当社の剰余金の配当は中間及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。

配当性向については、2020年に天井を突き破っているのが気になると思いますが、これはシャイアー(アイルランドの製薬会社)買収に費用がかかりまくったため、配当金支給が一時的に余裕がなくなってしまったからです。

結果的にはこの年も減配せずに配当金を維持し、2021年には適正範囲内に戻っています。

経営者

創業者

武田薬品工業は、今からおよそ240年以上前の1781年に創業されました。その創業者である武田長兵衛は、大阪で生まれ、幼少期から漢方薬の知識を身につけました。彼は、慶応元年(1865年)に大坂の中心地である堂島に医薬品商「武田呉服町店」を設立し、漢方薬を扱う店として創業しました。

当初は地元での販売を行っていましたが、やがて全国へと事業を拡大し、日本国内外において高い評価を受けるようになりました。武田薬品工業は、創業以来、薬剤師や医師と協力して、効果的で安全な薬を提供することに専念してきました。その結果、多くの革新的な医薬品を開発し、世界中の患者さんに貢献しています。

現在、武田薬品工業は、糖尿病や癌、心血管疾患などの治療薬の開発に焦点を当てており、その研究開発力を活かして、世界的な製薬企業として競争力を持っています。

社長兼CEO

武田薬品工業の社長兼CEOは、クリストフ・ウェバー(Christophe Weber)です。彼はフランス出身で、1999年にマーケティングおよびセールス部門でグラクソ・スミスクライン(GSK)に入社し、製薬業界でのキャリアをスタートしました。

クリストフ・ウェバー社長兼CEO

ウェバー氏はGSKで様々な役職を歴任し、アジア地域の経営やワクチン事業を統括する役割を担いました。2014年には、武田薬品工業の取締役に就任し、翌年の2015年4月には、武田薬品工業の社長兼CEOに任命されました。彼は武田薬品工業の社長として初めて、日本人以外の出身者が選ばれたことで、世界的な視点を持つリーダーとして注目されました。

ウェバー氏のリーダーシップのもと、武田薬品工業は事業のグローバル展開を進めています。2019年にアイルランドのシャイア社を買収し、アメリカやヨーロッパなどで事業基盤を強化しています。また、研究開発力の向上や持続可能な成長戦略を推進し、製薬業界における世界的な競争力を高めています。ウェバー氏は、武田薬品工業が人々の健康や福祉に貢献するため、イノベーションを重視し、多様な人材を活用して、さらなる成長を目指すと語っています。

株価推移

2018年度にアイルランドの製薬会社シャイアーを約7兆円で買収後、市場では「割高な買収」との評価がなされ株価は急落しました。

その後も買収の成果が見られないため、ずるずると買収前の半値まで下落しています。

また、同社が開発中の睡眠障害治療薬の治験を一時中断するというニュースも影響していると考えられます。

武田薬品工業が睡眠障害の治療の最先端であり、新薬が画期的治療薬として非常に期待されていた
ため、信頼の低下で大きく下がる結果となっています。

足元では欧州でのデング熱ワクチンの承認と、米国での阻害薬取得の発表などが好感され、上昇傾向にあります。

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