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【企業分析】テルモ

4543 (東証プライム)
時価総額:4.07兆円
株価:5,400円
売上高:8,200億円
営業利益:1,173億円

事業内容: 医療機器メーカー
設立年:1921年
本社:🇯🇵 東京都渋谷区幡ヶ谷二丁目44番1号
代表者: 高木俊明(代表取締役会長)、佐藤慎次郎(代表取締役社長CEO)
従業員数: 連結:30,207名、単体:5,457名
主要株主: 第一生命保険 4.3%、明治安田生命保険 3.3%

概要

テルモ株式会社は、東京都渋谷区幡ヶ谷に本社を置く日本の大手医療機器メーカー。「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、医療機器や医薬品を手掛ける1921年設立の100年企業。日経平均株価およびTOPIX Large70の構成銘柄の一つ。

幡ヶ谷オフィス(本社)

一般には体温計が有名だが、テルモ全体の売上において体温計が占める割合は1%未満である。テルモは、良質な体温計の国産化に始まり、現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供、160以上の国と地域で事業を展開している。

2018年10月にTOPIX Large70に組み入れられるなど株式市場での評価も高く、グローバルの医療機器市場で海外競合に伍する日本メーカーとして、オリンパスと双璧をなす。

日本初のディスポーザブル(単回使用)注射器・輸血バッグ、世界初の多孔質ホローファイバー(中空糸)型人工肺、世界一細いインスリン用注射針など、世界初・日本初のオンリーワン製品を数多く開発・販売。

また、市場シェアが高い製品も多く、世界ではカテーテル治療に使用する「ガイドワイヤ」、心臓外科手術で使用する人工肺、献血で使用する成分採血システム、日本では点滴関連のシリンジポンプ・輸液ポンプ・注射器・点滴チューブ・輸液製剤、測定機器の血糖測定器・体温計などが挙げられる。

プロダクト・ビジネスモデル

テルモグループは現在、3つのカンパニーで事業を展開し、160以上の国や地域で、患者さんと多様な医療現場、製薬企業などに50,000点を超える製品やサービスを届けています。

テルモの主要事業は、売上高の半分以上が、心臓血管カンパニーとなっています。

心臓血管カンパニーは、血管内治療に使われるカテーテルなどの開発に取り組んでいます。手首の血管から病変部にアプローチするカテーテル治療は、短い入院日数で治療を行う手段として注目されている治療方法です。テルモは、高齢化社会などの医療を取り巻く環境において、社会のニーズに答える医療事業を展開しています。

地域別売上収益

地域別の収益では米国が35%とトップであり、次いで日本25%である。ここ数年で米国向け売上の割合は大きく上昇した。

患者さんに負担の少ない治療を提供し、より良い治療効果を提供するのはもちろん、医療従事者が安全・安心のもとケアに専念できるようにすることや、未来の医療を生み出す研究の現場を支えることも、テルモの重要な使命です。医療の現場に存在する課題と真正面から向き合いながら、新たな価値創出に取り組みます。

心臓血管カンパニー

血管内治療と心臓外科手術において、患者さんの負担軽減を追求する

人間の生命活動を支える心臓・肺、そして全身の血管の病気の治療に関わる事業を展開しています。心臓や脳の血管にカテーテルを通して治療を行う血管内治療関連デバイス、心臓外科手術中に心臓・肺の機能を代替することで生命維持を行う人工肺や人工心肺装置、病気で傷んだ血管の代わりとなる人工血管やステントグラフトを提供。各事業に共通して、より良い治療効果の実現、患者さんの身体への負担軽減およびQOL 向上を目指しています。

TIS事業 (Terumo Interventional Systems)

TIS事業は、心臓や下肢の血管の疾患に対するカテーテル診断・治療「バスキュラーインターベンション(血管内治療)」と、カテーテルを介した肝臓がんの化学療法「インターベンショナルオンコロジー」の領域に製品を提供しています。治療部位や手順に合わせて多様な製品を展開する中で、患者さんには治療効果とQOLの向上を、ドクターには手技において最大限のパフォーマンスを発揮できる製品を提供することを目指しています。

「バスキュラーインターベンション(血管内治療)」領域では、患者さんの負担がより少ない手首の血管からのカテーテル治療「TRI」の普及にいち早く取り組んできました。当初TRIは心臓血管を中心に行われてきましたが、近年、下肢血管やオンコロジーにも応用されるようになりました。TIS事業では、常により優れた製品の開発に注力し、血管内治療の発展に貢献しています。

バスキュラーインターベンション(血管内カテーテル治療)

ヒトの血管は、加齢や生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)の進行により、弾力性が失われて硬くなったり、血管壁が厚くなり、血液の流れる内腔が狭くなるといわれています。とりわけ、心臓や下肢の動脈が狭くなり、その血流が滞ることで、心筋梗塞や下肢末梢動脈閉塞症を引き起こすことがあります。

この状態を治療するための方法のひとつとして、バスキュラーインターベンション(冠動脈および下肢動脈のカテーテル治療)があります。手首や鼠径部(太ももの付け根)の血管からカテーテルを通し、病変部(血管の詰まった部分)を血管の内側からバルーンやステントで拡張し、血流を回復させる治療です。

バスキュラーインターベンションを行う際には、初めに血管に入り口を作るシースや、病変部までの道筋となるガイドワイヤーといった「アクセスデバイス」と、病変部を治療するための、薬剤溶出ステント(DES)やバルーンカテーテルなどの「治療デバイス」、治療の前後に超音波や光で病変部を観察するための「画像診断(イメージング)システム」などが用いられます。

テルモは、治療の始まりから終わりに至るまでの操作性と患者さんにとってより良い治療効果を追求したデバイスを、トータルラインアップで提供しています。また、製品を提供するだけにとどまらず、独自の治療手技トレーニングプログラムの開発にも注力し、より低侵襲な(患者さんの身体的負担の少ない)カテーテル治療手技の普及にもグローバルで取り組んでいます。

主な製品

アクセスデバイス

手首や足の付け根の血管を入口に、カテーテルを挿入し病変部までの道筋を作るためのデバイス。

治療デバイス

心臓や下肢などの詰まった血管を拡げるステントやコイルなど、病変部に対する治療を行うためのデバイス。

画像診断(イメージング)

治療前後の血管に、専用カテーテルを通し、血管内壁の表面や断面を、超音波または光で観察します。

ニューロバスキュラー事業 (MicroVention)

ニューロバスキュラー事業は、米国子会社マイクロベンション社と連携し、脳動脈瘤、脳梗塞、脳動静脈奇形など、さまざまな脳血管の病気に対するカテーテル治療製品をグローバルに展開しています。

これまで、脳動脈瘤の治療用コイルやコイルアシストステントを中心にラインアップを充実させながら、事業の成長を続けてきました。近年では、血流改変ステントや袋状塞栓デバイスなどを展開し、脳動脈瘤治療の新たな選択肢を提供しています。また、脳梗塞治療の分野においては、血栓除去デバイスや血栓吸引カテーテルを、脳動静脈奇形に対しては液体塞栓剤など、症例に合わせて革新的な治療デバイスの開発に挑み、患者さんの負担の少ない脳血管治療の可能性を拡大します。

ニューロバスキュラーインターベンションとは?

脳の血管のトラブルにより、脳に血液が届かなくなり、脳細胞が障害を受ける病態を総称して「脳卒中」といいます。脳卒中の原因は大きく分けると、脳の血管が詰まる、もしくは脳の血管が破れて出血するという2つが挙げられます。主に、血管が詰まる病気を「脳梗塞」、脳血管が破れて出血した病気を「脳出血」と呼びます。中でも「くも膜下出血」は脳出血の代表的なもので、主に脳の血管にできた瘤、「脳動脈瘤」が破裂することで起こります。

従来、脳梗塞の治療は薬剤を投与して血の塊(血栓)を溶かす内科的治療が主に行われていました。また、脳動脈瘤は外科手術により頭蓋骨に穴を開け、瘤の根元を血管の外側からクリップで挟み、瘤からの出血や瘤の破裂を防ぐ外科的治療(開頭手術)が一般的でした。しかし近年、脳梗塞も脳動脈瘤も、より患者さんの身体的な負担の少ない治療として、カテーテルを用いた血管内治療、「ニューロバスキュラーインターベンション」が目覚ましい進化を遂げています。

治療法の進化とともに、カテーテルやコイル、ステントなどの医療機器も次々に開発が進み、治療可能な症例の幅も拡大しています。

脳動脈瘤
脳血管に瘤(こぶ)ができる。破裂した場合くも膜下出血や脳梗塞の原因となる

瘤の中に詰め物をしたり、瘤への血流を遮断して破裂を防ぐ

脳梗塞
脳血管に血栓が詰まり血液循環が滞ってしまい、脳の組織が損傷を受ける

カテーテルで血栓を吸引したり網目状のステントでからめとって除去し、血流を復活させる

脳動静脈奇形
動脈と静脈に異常な結合が生じ、動脈の血圧が直接静脈にかかることで出血する原因となる

病変部に塞栓物質を流し込み、異常な血流を遮断する

主な製品

テルモでは、治療の初めに病変部までの道筋をつくる「アクセスデバイス」から、症例に応じた多彩な「治療デバイス」を展開しています。

脳動脈瘤治療用デバイス

脳動脈にできた瘤の破裂を防ぐため、瘤の内部に詰め物をする、瘤の入り口を塞ぐなどにより血流を遮断します。

血流遮断デバイス
奇形など出血リスクのある脳血管に、バルーンや液状の塞栓材を用いて、血流を遮ります。

血栓除去デバイス・頸動脈ステント
脳血管内の血栓の除去や、血管の詰まりの拡張を行います。

アクセスデバイス
脳血管内の病変部までの道筋をつくります。

カーディオバスキュラー事業 (Terumo Cardiovascular) / ハートシート事業

心臓外科手術中に停止させた心臓や肺に代わって、血液を体外で循環させる人工心肺装置、血液のガス交換を担う人工肺、緊急症例の患者さんの心肺機能を補助する体外式膜型人工肺(ECMO)、心臓を停止させずに行う外科手術の進行をサポートする医療機器などを開発・販売しています。

また、重症心不全患者さんの新たな治療の選択肢として期待される、世界初の再生医療等製品を展開するハートシート事業とも連携し、イノベーティブな技術で心臓病患者さんのQOL 向上に貢献しています。

カーディオバスキュラー事業(Terumo Cardiovascular)

人工心肺システム

心臓を止めて行う心臓外科手術(オンポンプ手術)の際、患者さんの心臓や肺の代わりに体外循環を行うデバイスを展開しています。血液を体外へ導き出し、人工肺で酸素などのガス交換を行い、再びポンプで血液を体に戻し、手術中の患者さんの生命維持を行います。

経皮的心肺補助システム(PCPS)/体外式膜型人工肺(ECMO)

急性心筋梗塞等による心原性ショックや心停止などの緊急症例に対する治療で、太腿の血管から直接カテーテルを挿入して血液を体外へ引き出し、遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路からなる人工心肺装置により、患者さんの心臓と肺の代わりの役割を果たします。

オフポンプ冠動脈バイパス術システム

狭心症に対する心臓外科手術では血流の悪くなった冠動脈に対し新たな血液の流路(バイパス)が作られます。心臓を止めずに行われるオフポンプ冠動脈バイパス術に用いられ、心臓外科医の手術進行をサポートします。

ハートシート事業

再生医療等製品

重症心不全の患者さんの大腿部から筋肉組織を採取、組織内に含まれる骨格筋芽細胞を培養してシート状にし、心臓表面に移植して使用します。薬物や外科手術による回復が難しい症例への新たな治療の選択肢として期待されています。

血管事業 (Terumo Aortic)

血管事業を担うTerumo Aortic は、胸部および腹部の大動脈瘤や大動脈解離といった大動脈疾患に対する外科手術と血管内治療で用いる人工血管とステントグラフトを中心に、幅広い症例に対応する多様な製品ラインアップを展開。世界90カ国以上で200万人を超える患者さんの治療に貢献しています。

また、今後はデジタル技術を活用し、一人ひとりの患者さんに最適な製品の提供にも注力し、大動脈治療におけるイノベーションを追求します。

人工血管置換術およびステントグラフト内挿術とは?

大動脈瘤および大動脈解離は、進行すると破裂するおそれがあるため、外科手術で人工血管に置き換える人工血管置換術、あるいはカテーテルを用いたステントグラフト内挿術で治療を行います。また、外科手術とカテーテル手術を組み合わせるハイブリッドな治療法もあります。

主な製品

人工血管
外科手術によって病的な血管を置き換える治療や、バイパスを作成する治療に用いられます。

ステントグラフト

カテーテルによって、血管内の目的部位にバネ付きの人工血管を留置し、動脈瘤が破裂しないようにする治療に用いられます。

フローズンエレファントトランク

人工血管とステントグラフトの2つの機能を一体化させることで、より低侵襲に治療することができ、手術時間の短縮や術後の早期回復が期待できます。

胸部用フローズンエレファントトランク
(ハイブリッド型)

メディカルケアソリューションズカンパニー

患者さんのケアの質向上と医療の変革に貢献し、医療に関わるすべての人に「やさしい医療」を提供する

近年、高齢化が進む中で、患者さんの増加に加え、疾病の多重化・慢性化により医療費が増大しています。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、感染対策への意識が高まりました。さらには、テクノロジーの進歩による、患者さん一人ひとりの個性に合わせた個別化医療へのニーズも高まっています。このような多様化・複雑化する医療現場の課題やニーズに対し、私たちは、これまで培ってきた強みを生かしたソリューションの提供をさらに充実させることで、患者さんのケアの質向上と医療の変革に貢献し、医療に関わるすべての人に「やさしい医療」を提供します。

ホスピタルケアソリューション事業

ホスピタルケアソリューション事業は、医療安全、院内感染対策、医療費の抑制といった医療現場の多くのニーズに対して、患者さんや医療従事者の負担軽減、使い勝手向上につながる製品開発、医療機器使用における運用サポート、医療従事者へのトレーニングプログラムなどさまざまな提案を行っています。

単なる製品提供では解決し難い課題に対するソリューション提案を通じ、「治療の安全性向上」「業務の効率化」「患者さんのQOL向上」に貢献します。

高機能薬剤投与システム関連製品
輸液や注射など、患者さんに薬剤を投与する業務は、集中治療室から病棟まで様々な医療現場で日常的に行われています。一般的に、安全な薬剤投与のためには、薬剤の準備時と投与の直前に「正しい患者」「正しい薬剤」「正しい量」「正しい方法」「正しい時間」「正しい目的」の確認が求められています。さらに、人体に影響を及ぼす薬剤に接触するといったリスクへの配慮など、医療従事者自身の安全にも注意が必要です。

テルモは、薬剤投与に用いる一連の製品システムにおいて、多様なリスクを低減するための機能やデザインを追求してきました。近年は、より複雑で厳密な薬剤投与の管理が必要な患者さんのための高機能投与システムとして、薬剤ライブラリを搭載し、院内のITシステムと連携可能な輸液ポンプ・シリンジポンプを中心に、自動記録やモニタリング、処方連携といったデジタルヘルスを推進しています。このような取り組みにより、薬剤の処方・投与の効率化と標準化、治療の安全性向上の実現に貢献していきます。

腹膜透析関連製品
慢性腎不全の患者さんは、体内の不要な老廃物や水分を取り除く透析療法を必要としています。透析療法には、透析施設に週3回程度通院して行う「血液透析療法(HD)」と、自宅や職場でできる「腹膜透析療法(PD)」があります。

テルモは、患者さんのライフスタイルを保ちやすい腹膜透析を推進しています。近年増加している高齢の腹膜透析患者さんにも、簡単かつ安全に腹膜透析療法を行えるよう、使いやすさや感染対策に配慮したデバイスを提供するとともに、患者さんの身体への負担軽減を目指した透析液の開発などを通じて、患者さんの生活に寄り添うやさしい治療に貢献していきます。

腹膜透析(PD: Peritoneal Dialysis)とは?

内臓を覆っている腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入・貯留し、腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分を除去する療法です。透析液を出し入れするためのカテーテルを腹部に埋め込む手術を必要とし、通常、1日に複数回(約4~12時間ごとに)透析液を交換します。

腹膜透析治療のイメージ
自分で透析液を交換するCAPD*1と、装置が自動的に透析液を交換するAPD*2。
患者さんの体調や生活様式に合わせて適した方法を選びます。

*1 Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis : 連続携行式腹膜透析
*2
Automated Peritoneal Dialysis : 自動腹膜透析

環境整備関連製品

手術室や病室などの環境整備に取り組むとともに、医療従事者の手指消毒など感染対策に貢献することにより、業務環境の向上に寄与します。

環境整備関連製品

手術室や病室などの環境整備に取り組むとともに、医療従事者の手指消毒など感染対策に貢献することにより、業務環境の向上に寄与します。

周術期・がん領域製品

高齢化などを背景として医療や介護需要が増加するなか、持続可能な医療の実現に向け、限られた医療資源を効果的・効率的に活用する必要性があります。そのため、急性期から回復期、慢性期まで患者さんが状態に見合った医療を受けられるよう、医療機関の病床機能分化・連携が進められています。なかでも、重症患者さんを受け入れる急性期病院では、高度な治療を集中して行うため、より効率的な医療、入院期間の短縮などが求められています。

テルモでは、手術後の痛みを軽減することで、早期離床を助ける鎮痛薬や、術後の治癒過程で、臓器や組織が癒着することを防ぐことで、合併症対策に寄与する日本初のスプレータイプの癒着防止材などを提供しています。このように豊富なラインアップにより、患者さんの早期退院とQOL向上に貢献していきます。

ライフケアソリューション事業

ライフケアソリューション事業は、糖尿病をはじめとした慢性疾患を抱えながら生活している一人ひとりの患者さんにとって、個別に最適化された医療を実現するソリューションを提供しています。
健康を願うすべての人に寄り添った新たな価値創出を通じて、「患者さんの予後改善」「重症化予防」そして「QOL の向上」に貢献します。

糖尿病治療関連製品

糖尿病には体内でインスリンを作ることができない1型糖尿病と、生活習慣が原因で発症することが多い2型糖尿病があります。増え続ける糖尿病を早期に発見し、合併症を防ぐことは社会的にも重要なことです。糖尿病患者さんは、小さなお子さんから高齢の方まで、幅広い年代の方がおり、日常的に血糖値をご自身で測定・管理するとともに、患者さんによっては血糖値を下げる薬剤の注射を行うことで治療を行います。

テルモは、使いやすい血糖自己測定器や、患者さんの痛みや注射への恐怖心の軽減を目指した注射針の開発に取り組んできました。近年は、治療にともなう、患者さんのこころとからだのストレス軽減を目指し、患者さんの動きやすさに配慮したインスリンポンプや、リアルタイムでグルコース濃度の変動を確認できる持続血糖測定器を展開しています。

豊富な製品ラインアップで毎日の糖尿病治療をトータルでサポートし、患者さんの「わたしらしい暮らし」の実現をサポートしていきます。

バイタルサイン管理関連製品

医療現場では、患者さんの診断や治療に役立てるために、毎日の体温や血圧、血糖値、血中酸素濃度といったバイタルサインを管理しています。数多くの入院患者さんを抱える病棟で、看護師が一人ひとりの患者さんのベッドサイドを回りながら、バイタルサインの測定を行い、ナースステーションに戻って測定値の転記作業を行っています。

テルモは、血糖自己測定器、血圧計、体温計などにNFC通信機能を搭載し、測定後、NFCリーダー/ライターにタッチするだけで電子カルテに反映できる測定機器シリーズを展開しています。入力ミスや転記ミスがなくなるだけではなく、医療スタッフ間でのバイタルサインの共有を、よりタイムリー・正確に行えるようになります。このように効率化した時間を患者さんのケアの充実に活かすことで、医療の質の向上に貢献していきます。

病院内における通信機能付き測定機器シリーズ(HRジョイント®)

ファーマシューティカルソリューション事業

ファーマシューティカルソリューション事業は、プレフィルド(薬剤充填済み)製品で培った独自の技術を生かし、製薬企業に新たな薬剤投与デバイスを提案しています。薬剤に適した素材技術を組み合わせたデバイスの開発や、高度な製造技術を活かした医薬品と医療機器のコンビネーションプロダクトの設計・製造を行っています。

治験薬の製造から商用製品の生産に至るまで、製薬企業とのアライアンスを通じて、トータルソリューションを実現するとともに、患者さんにとって必要な薬剤を、安全かつ確実にお届けしています。

製薬企業との提携ビジネス

製薬企業のパートナーとして、ドラッグ&デバイス製品の開発から生産までサポートします。

医薬品開発製造パートナリング
製薬企業とのパートナーシップを通じて、薬剤充填デバイスの設計から商用製造まで一貫してサポートします。

製薬企業との提携ビジネス

製薬企業のパートナーとして、ドラッグ&デバイス製品の開発から生産までサポートします。

医薬品開発製造パートナリング
製薬企業とのパートナーシップを通じて、薬剤充填デバイスの設計から商用製造まで一貫してサポートします。

容器提供

バイオ医薬品やワクチンなどの薬剤に最適な素材をマッチングし、ユーザビリティの高いデバイスを提供します。

薬剤キット用デバイス提供

製薬企業が販売する医薬品に同梱するための投与用デバイスを提供し、医療現場の安全性と効率性に貢献します。

血液・細胞テクノロジーカンパニ

世界の輸血医療を支えるとともに進化する血液・細胞治療に貢献する

献血で提供された血液は、血液センターで血小板、血漿、赤血球など血液製剤化され、医療機関に供給されます。テルモは、世界中の血液センターと提携し、製剤化に用いる機器や血液バッグを供給し、製剤プロセスの効率化に貢献しています。また、遠心分離技術を活用した血液成分を採取または除去するデバイスを通じ、多様な血液治療のソリューションを展開しています。近年は、進化が著しい細胞治療および遺伝子治療の分野の研究機関や製薬企業に向けて、高品質な細胞治療製品を大規模に製造するための装置やサービスを提供し、新たな治療法の創出を支援しています。

血液・細胞テクノロジーカンパニー

血液や細胞は、私たちの生命維持に不可欠であると同時に、がんや難病とされる病気の治療をはじめ、 さまざまな治療への可能性を秘めています。米国子会社テルモBCT 社が担う血液・細胞テクノロジーカンパニーは、献血によりドナーから提供された血液を安全かつ効率的に血液製剤化するためのソリューションや、細胞治療やアフェレーシス治療に必要な、血液成分や細胞の採取・分離、細胞治療薬の製造プロセスに対するソリューションを提供し、血液センター、医療機関、製薬企業、研究機関など、幅広いお客様を支援しています。

近年は、デジタルソリューションとサービスに注力し、新たな治療法の選択肢を患者さんに提供できるよう、独自の技術進歩につなげています。

主な製品

血漿イノベーション

希少疾患などの治療で使われる血漿分画製剤を製造するために、原料血漿を採取する技術です。ドナーの安全性かつ効率的で高品質な原料血漿供給を実現するため、研究開発とプロセス改善に取り組んでいます。

原料血漿採取システム

血液センターソリューション

血液センターで行われる採血と製剤化プロセスにおいて、品質と効率の向上を実現。プロセスの自動化により、血液センターが可能な限り需要に合致する成分を採血し、患者さんのもとに必要な血液製剤を提供できるように支援します。

アフェレーシス治療・細胞採取

血液や細胞の病気に対し、その病原となる血液中の不要な成分を分離・除去したり、治療に必要な成分を採取することがあります。
テルモは遠心分離技術を活用して、さまざまな疾患と闘う患者さんに、新たな治療の選択肢を提供することを目指しています。

遠心型血液成分分離装置

細胞治療テクノロジー

細胞の増殖から最終的な製剤化まで、細胞治療製品の製造を自動化するソリューションを提供し、治療法の開発に携わる方々とともに、最先端治療の創出とその商業化を支援します。

市場動向

世界のヘルスケア市場規模は139兆円(医薬品107兆円、医療機器32兆円)と2013年の130兆円より市場規模が増加しています。日本市場より世界市場の方が拡大傾向にあり、米国は2013年39%から2017年43%に増加しています。

そのため、日本市場の独占ではなく、製品の海外進出がキーとなってきています。当社は2005年の海外比率は40%でしたが、2018年には69%まで伸ばしており、積極的な海外進出を進めています。

医療用品・サプライの業界概要

国内への出荷額、4兆2000億円規模

注射器、カテーテル(医療用細管)などの医療用品、サプライ品を製造する。厚生労働省が発表した令和4年薬事工業生産動態統計年報によると、2022年暦年の医療機器市場の規模は国内生産が前年比0.8%減の2兆5829億円、輸入が同6.5%増の2兆9180億円。合計では5兆5009億8600万円。このうち国内への出荷は4兆1858億円、輸出は1兆941億円だった。
2022年の国内生産品を製品名称別に見ると、医療用エックス線装置・エックス線管(2370億100万円)、内臓機能代用器(2374億7000万円)、血液検査用器具(1949億8400万円)、内臓機能検査用器具(1381億円)などが上位を占める。(2024/02/07調査)

医療用品・サプライの市場動向

日本勢、診断機器に強み・高齢化など追い風
日本の医療機器企業は画像診断、検体検査、生体計測などに集中しており、おおむね診断機器に強い。市場拡大要因としては高齢化に伴うディスポーザブル医療用具の需要増に加え、糖尿病など慢性疾患の患者数増加などが挙げられる。一方で、世界的に医療費削減が進む中、メーカー各社への値下げ圧力が強まることが予想され、市場拡大の妨げとなる懸念も指摘されている。

製品別では、眼科用材料では眼内レンズが高齢化にともなう白内障患者増で市場が拡大しているほか、高機能レンズの採用も増えている。カテーテルや注射器、輸血バッグといった医療用具の市場規模は大きいものの、保険料引き下げの影響を受ける品目が多いことから、金額ベースの市場は縮小傾向にある。人工透析関連は、国内でも患者数の増加に伴い年々増加している。(2024/02/07調査)

医療用品・サプライの競合状況

得意分野軸に、買収・事業多角化など急ぐ

医療用品・サプライ分野ではカテーテル、血管に埋め込んで使うステント、人工心臓など循環器関連器具やシリンジ、輸液セット、注射針、血液バッグなど汎用医療器具を販売するテルモが最大手。

テルモは20年8月、欧州の連結子会社を通じて、ドイツの透析液製造・販売会社、MTNノイブランデンブルグの発行済み株式すべてを取得し、連結子会社とした。ドイツ国内・東ヨーロッパへの供給体制の強化などが狙い。同社はすでに米国、ブラジル、スペインに透析液製造拠点を持っている。テルモは21年11月、三菱商事グループの医療機器販社、日本メディカルネクスト(大阪市)と医療用ロボット分野で業務提携した。心筋梗塞などの治療支援ロボット部品販売をテルモが受託する。

また、同社は甲府工場(山梨県昭和町)内にバイオ医薬品の開発製造受託工場を建設する。投資額は522億円で、27年度に生産を始める。製薬企業から受託したバイオ医薬品などの薬剤の充填や滅菌、梱包作業を担う。テルモは23年11月末、南アフリカ・ヨハネスブルグに現地法人を設立した。カテーテル関連製品の販売拡大につなげる。(2024/02/07調査)

テルモは「心臓血管カンパニー」、「メディカルケアソリューションズカンパニー」、「血液・細胞テクノロジーカンパニー」の領域で事業を展開し、国内の医療機器メーカーでは売上高で第2位のポジションにある。堅調な業績でテルモの成長を支えるのは心臓や脳血管領域などで製品を展開する心臓血管カンパニーだ。

一方で医療機器の世界市場においては、海外勢が優勢だ。「医療機器メーカーは(取り扱う製品の種類が多い)雑種性が高い業界。ただ、そうはいっても先進的な領域で強みを持つ米国企業が、医療機器業界の顔として存在感が大きい」と佐藤慎次郎社長は医療機器業界について説明する。

テルモのライバルは、アイルランドのメドトロニックや米国のボストン・サイエンティフィックなど海外大手だ。心不全や不整脈治療に用いるペースメーカーなどテルモが手がけない製品も扱っており、単純比較はできないが、海外大手の心血管領域と、テルモの心臓血管カンパニーの事業規模を比べると3―4倍の差がある。

海外勢が存在感を示す医療機器市場だが、テルモは2026年度までの経営戦略の中で心臓血管カンパニーの継続的な成長を掲げる。22年度の同事業の売上高は4806億円で、26年度までの売上高成長率は1ケタ後半を想定する。特に、治療デバイスとカテーテルを病変部まで届けるためのアクセスデバイスを併せて、21年度比約1450億円増を目指す計画だ。

海外の強豪がひしめく医療機器市場において、テルモの心臓血管カンパニーが主力事業として成長してきたのは、海外大手メーカーが優先度を下げてきた分野で特徴ある製品を市場投入し、直接対決を回避する戦略にある。一方で、佐藤社長は「今の戦略では成長スピードが追いつかない。

脳血管治療デバイスや大動脈ステントグラフといった先進的な領域でも製品を展開する」と強調する。長期的な成長を見据え、海外勢が注力する領域でも製品ラインアップの強化を図る。胸部大動脈治療用のフローズンエレファントトランク「ソラフレックスハイブリッド」を22年に米国市場へ投入したほか、日本でシェアを伸ばす薬剤溶出型冠動脈ステント「ナゴミ」も将来的には米国市場への参入を目指す。

テルモの売上高のうち心臓血管カンパニーは6割弱を占め、成長性も高い。一方で、佐藤社長は「企業のポートフォリオバランスを考えると、次の成長セグメントを仕込む必要がある」と強調する。主力事業の強化を進めつつ新規ビジネスを発展させ、26年度までに他領域の売上高の割合を高めていく戦略だ。

その一つとして力を入れるのが、血液・細胞テクノロジーカンパニーにおける原料血漿市場への参入だ。原料血漿は「血漿分画製剤」と呼ぶ医薬品の原料となる。テルモは、原料血漿採取システム「Rika(リカ)」を展開。米国で血漿採取センターを運営するCSLプラズマに提供している。

原料血漿市場は約1000億円で、年平均成長率は8―10%と成長性が高い。背景には製薬企業が免疫疾患や希少疾患などの血漿分画製剤の開発や生産を進めており、その原料となる血液の需要が高まっていることがある。原料血漿市場の成長に伴い、より安全で効率的に原料血漿を採取できるシステムの需要も伸びる見込み。テルモはリカを軸にパートナーを増やして市場ニーズを獲得し事業成長につなげる。

さらに、メディカルケアソリューションズカンパニーにおける受託製造(CDMO)事業の強化も進める。医薬品や原薬製造などにおいてCDMO事業を展開する企業が多い中、テルモは薬剤に適したデバイスの開発や製造を手がける。協和キリンと共同開発し、22年12月に発売した「ジーラスタ皮下注3・6ミリグラムボディーポッド」は、患者の体に装着することで自動的に薬剤が投与されるデバイスだ。患者は通院の負担がなくなる。佐藤社長は「医療機器市場は分散性が高く、1000億円を超えるようなまとまった市場がいくつもあるわけではない。こうした中で、医療機器の3―4倍といわれる医薬品市場のニーズを取り込むことが、自社の成長につながる」と説明する。

心臓血管カンパニーは市場も事業規模も大きいが、一方でライバルも多い。こうした市場で成長してきたテルモは、一方で一つの事業への依存度が高くなったといえる。次の成長につなげるための方針として、新たな市場に乗り出しつつも、強みの技術を中心に置いたビジネスを展開する。血液製剤や医薬品投与デバイスの生産は成熟した事業だが、その技術を活用して原料血漿の採取やCDMOといった時代に合ったビジネスに転換することで、成長性や収益性の向上を目指す。

業績

2023年3月期

ハイライト

・売上収益・営業利益ともに過去最高。当期利益も増益
・売上収益は米州が成長率引、全社で+5%伸長(為替影響除く)
・利益はQ4で一時的に悪化。2月に発表した業績予想は未達

P&L実績

売上収益:過去最高。米国を中心にグローバルで心臓血管領域の強い需要が継続

営業利益:過去最高も、原材料価格高騰やQ4での一時費用負担が重く収益性悪化

業績予想(2月発表)利益未達要因

C&V(Cardiac and Vascular Company): 需要拡大と新製品効果により成長を継続。利益も順調に推移

TMCS(Terumo Medical Care Solutionsは): PSは高成長継続。利益は原材料価格や動力費の高騰、Q4では一時要因も重なり減益

TBCT(Terumo Blood and Cell Technologies): 血液センター向けビジネスを中心に既存事業は引き続き好調。PIは限定上市期間の長期化に伴い固定費負担

製品パイプライン

売上推移

営業利益推移

当期利益推移

資産推移

中期経営計画

テルモは、2026年度に売上高1兆円(21年度見込みで6850億円)を目指す5カ年の成長戦略を発表した。

創立100年の節目に
次の10年超を見据えた 5カ年成長戦略

営業利益率(調整前)を20%以上に引き上げる。これまでのデバイス中心の事業から、医療現場の課題解決や患者の生活の質(QOL)向上などを見据えたソリューション中心の事業に移行することで、成長性・収益性を高める。佐藤慎次郎社長は「特に米国と中国の2大市場で大きく売り上げを伸ばす」と強調した。

主力の心臓血管事業では製品群を拡充。脳卒中治療で26年度に21年度見込み比300億円増、大動脈瘤(りゅう)治療で同300億円増、下肢大動脈疾患・がん治療で同200億円増を見込む。また新たな顧客セグメントとして、「病院以外の『B2B(企業間)』を大きく伸ばしたい」(佐藤社長)とする。

設備投資は5カ年で4300億―4800億円程度を想定する。製薬企業向けの開発・製造受託(CDMO)、原料血漿(けっしょう)分野を中心に投資する。生産拠点ではデジタル変革(DX)に注力し、効率化を進める。

テルモが着目する「医療のパラダイムシフト」

①疾病構造が変わる
・世界的な生活水準向上と先進国の超高齢化により急増する慢性疾患との共生
・高齢化に伴う臓器・身体機能の劣化

② 時間軸が変わる
・長期でのQOL改善
・予防と予後のモニタリングの普及
・患者ごとの疾病管理(ペイシェント・ジャーニー)

③ 技術が変わる
・バイオ医薬品、再生医療、細胞・遺伝子治療などの普及
・ゲノム医療やAIの進化で個別化医療の本格普及

GS26のポイント

キャッシュアロケーション

経営者

沿革

テルモの歴史は大きく以下の4つに区分できる。

①体温計の専業時代
②感染防止目的からディスポーザブル製品に業容を拡大した時代
③医療の進化・低侵襲化に合わせて人工肺やカテーテル製品に領域を拡大した時代
④海外企業の買収でグローバル化を加速させた時代

①体温計の時代(1921~1962)

テルモは、第一次世界大戦の影響で輸入が途絶えた良質な体温計を国産化するために、北里柴三郎をはじめとする医師らが発起人となり、1921年に設立された。

第一次世界大戦が勃発した1914年頃、日本では輸入に大きく頼っていた体温計が不足。技術者の竹内英二は「竹内テルモ製作所」で体温計の製造販売をしていたが、同事業は資金的に行き詰まり、知人であり東京医師会(現: 東京都医師会)会長の笹川三男三(ささがわみおぞう)に援助を求めた。医師の間に良質の体温計を望む声が強いことを知る笹川は、竹内の事業を中心とした会社の設立を進めた。その後の1921年9月17日、大日本医師会(現: 日本医師会)会長の北里柴三郎が設立総会の議長を務め、笹川を初代社長として、テルモ株式会社(当時社名「赤線検温器株式会社」)が誕生。社名「テルモ」の由来は、ドイツ語で体温計を意味するThermometer (テルモメーター)から。

②ディスポーザブル製品への業容拡大(1963~1981)

設立から40年間、体温計専業だったテルモは、1963年に日本初のディスポーザブル注射器を発売し、業容を拡大した。1958年、感染症対策に効果的なディスポーザブル注射器の開発を開始。注射器本体だけではなく、熱に弱いプラスチックの滅菌が可能な新たな低温ガス滅菌法、ガスは通し菌は通さない包装材の開発なども行った。ディスポーザブル注射器は、当初は「もったいない」意識から普及が遅れるも、1970年頃から大病院でも導入され、普及が進んだ。

注射器以外にも、1964年に日本初のディスポーザブル注射針、1969年に日本初の血液保存液入り血液バッグ、1972年に日本初のソフトバッグ入り輸液剤、1977年にホローファイバー型人工腎臓(ダイアライザー)、1980年に日本初のソフトバッグ入り高カロリー輸液用基本液「ハイカリック」と、数多くのディスポーザブル製品を世に送り出した。

なお、1974年に現社名のテルモ株式会社に商号を変更している。

③心臓治療領域への参入(1982~1998)

1982年に、世界初の多孔質ホローファイバー型人工肺「キャピオックスII」を発売。1985年には、血管造影用カテーテルシステムの1つである「ラジフォーカス ガイドワイヤ」を発売。それぞれの発売により、心臓外科手術と心臓カテーテル治療分野に参入することになった。

また、心臓治療領域ではないが、1983年の電子体温計、1988年の腹膜透析システム「キャプディール」、1989年の世界初の消化態栄養剤「エンテルード」、1989年のプラスチック製真空採血管「ベノジェクト」、1993年の血糖測定器「メディエース」、1995年の経皮的補助循環システム(PCPS: ECMOの一種)、1998年の医薬品同梱注射針「K-Pack II」など、現在の基盤となる製品もこの時代に多く発売された。

なお、祖業の製品であるガラス式体温計は水銀の環境影響が考慮され、1985年、その生産に幕を閉じた。

④グローバル企業へ(1999~)

テルモは、1971年のテルモアメリカ社とテルモヨーロッパ社を皮切りに複数の海外子会社を設立していたが、1999年以降、以下の4つに代表されるクロスボーダー買収で、急速にグローバル化を加速。

1999年 - 米国3M社から人工心肺事業を譲受し、テルモ・カーディオバスキュラー・システムズ社を設立
2002年 - 人工血管の製造販売会社である英国バスクテック社がテルモグループへ
2006年 - 脳血管内治療デバイスの製造販売会社である米国マイクロベンション社がテルモグループへ
2011年 - 血液・細胞テクノロジー分野の世界的企業である米国カリディアンBCT社がテルモグループへ
これら以外にも10近い海外企業・事業の買収を重ねてきたこともあり、100社に及ぶテルモの連結子会社は9割以上が海外法人で、それぞれ独自の歴史と企業文化を持っている。このような状況下で、2019年4月には企業理念体系を整理し、世界中の社員をつなぐ共通の価値観である「コアバリューズ」を新たに制定した。

一方で既存事業でも、白血球除去フィルター付き血液バッグ「イムフレックス」、国産初の冠動脈ステント・薬剤溶出型ステント(DES)、プレフィルドシリンジ(薬剤充填済み注射器)、クローズド輸液システム「シュアプラグ」、高カロリー輸液用総合ビタミン・糖・アミノ酸・電解質液「フルカリック」、世界一細いインスリン用注射針「ナノパスニードル」、通信機能付バイタルサイン測定機器シリーズ「HRジョイント」、日本初のスプレー式癒着防止材「アドスプレー」、日本初のパッチ式インスリンポンプ「メディセーフウィズ」などを発売。

テルモは、買収だけではなく、既存事業の成長と、買収先と既存事業のコラボレーションによる付加価値創出で拡大を続けるグローバル企業になろうとしている。

社長

佐藤 慎次郎 現社長CEO
(顧問 2024年4月1日〜)
鮫島光 専務経営役員 新社長(2024年4月1日〜)

テルモは2023年12月14日、鮫島光専務経営役員(59)が2024年4月1日付で社長最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表した。

鮫島氏は6月26日開催予定の定時株主総会での承認を経て代表取締役に就く。佐藤慎次郎社長CEO(63)は顧問になる。主力のカテーテル事業の経験が長い鮫島氏の下で海外でのさらなる成長を目指す。

鮫島氏は現在、専務経営役員 メディカルケアソリューションズ カンパニープレジデントを務めており、2017年から約7年間トップの任にあった代表取締役社長 CEOの佐藤慎次郎氏からバトンを引き継ぐことになる。

佐藤氏は心臓や脳の病気を治療するカテーテルを核に海外での業績拡大をけん引した。24年3月期の連結純利益(国際会計基準)は前期比13%増の1010億円と過去最高を見込んでいる。

鮫島氏は1964年5月生まれの59歳。1988年3月に慶應義塾大学 経済学部を卒業した後、同年4月に東亜燃料工業(現ENEOS)に入社。

2001年2月に入行したシティバンク、エヌ・エイを経て、2002年1月にテルモに入社し経営企画室に入った。この2002年に、スコットランドで人工血管を手掛けるバスクテックの買収交渉を担当することで、テルモのグローバル事業拡大に向けた取り組みを大きく推進させた。

その後、米国で脳血管内治療デバイスを扱うマイクロベンションの買収にも携わった後、2006年7月に心臓血管グループ(米国)バイスプレジデント、2007年6月には心臓血管グループ カテーテルカンパニー(グローバル)プレジデントに就任している。

2014年4月に執行役員 心臓血管カンパニー TIS事業プレジデント、2016年4月に上席執行役員、2017年4月に心臓血管カンパニープレジデント、2018年4月に常務執行役員、2020年4月にホスピタルカンパニープレジデントと要職を務め、2022年4月から現職。

鮫島氏は就任に当たって「新型コロナウイルス感染症という未曽有のパンデミックを経て、企業を取り巻く環境は大きく変化しており新たな付加価値が求められている。これからの企業はマルチステークホルダー経営の要請の高まりを受け、持続可能な成長を実現する必要がある。

その一方で、インフレなどマクロ経済の動向や地政学的リスクなど事業環境の不透明さも高まっている。2024年度は、現行の5カ年成長戦略『GS26』の折り返し地点に当たる。現社長の佐藤が築き上げたGS26の基本骨格を堅持しつつ、新たな時代へ柔軟に対応すべく変革や打ち手を着実に実行し、テルモがこれからも『医療を通じて社会に貢献する』という企業理念をグローバルに果たせるように努力していきたい」と語る。

 GS26では「デバイスからソリューションへ」という戦略コンセプトを掲げており、その実現のためには、さまざまなニーズに対してテルモの商品やサービスを組み合わせることで課題解決に向けた提案力の向上を図っていく必要がある。

「ユーザーの皆さまから信頼される、選ばれるブランドになることが、業績の拡大、そしてわれわれのアソシエイト(従業員)のやりがいにもつながると信じている。これと並行してカーボンニュートラルなどの広い社会ニーズへの対応や、DE&Iに代表される優れた組織文化の醸成などにも尽力していく」(鮫島氏)という。

株価推移

テルモの株価は過去10年間で安定的な成長を見せている。

今後は、医療技術の発展に伴う市場の成長や、世界的な高齢化による需要の拡大が注目である。
また、新たな製品や技術の開発、国際市場での展開、そして競合他社との競争力強化も重要です。さらに、医療制度や規制の変化にも注目が必要です。

急騰し、上場来高値を更新した。7日の取引終了後、24年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結決算発表にあわせ、通期の業績予想を見直し、最終利益の見通しを1010億円から1050億円(前期比17.5%増)に上方修正した。あわせて、3月31日を基準日とし、4月1日付で1株を2株に分割すると発表した。投資家層の拡大による株価へのポジティブな影響への期待も高める形となり、業況とあわせて評価されたようだ。

今期の売上収益予想は8540億円から9060億円(同10.5%増)に引き上げた。為替相場が想定よりも円安で推移しており、影響を業績予想に反映させた。4~12月期の売上収益は前年同期比10.5%増の6829億5100万円、最終利益は同13.8%増の798億9700万円だった。

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