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幽霊会社みちづれと三男

地元の駅の周りで開催されている古本まつりの、ステージの、「幽霊会社みちづれ」のパフォーマンスにピンポイントで潜入してきた。7歳の三男とふたりで。

以前この場所で、ベビーカーに座った三男と「みちづれ」を観たのは、ちょうど5年前の今日だったらしい。それから三男とは車の中でCDを聴き、「みちづれ」の大ファンなのだ。「みちづれ」育ち、だと言ってもいい。
「こんな大人にならないように。」
と、子どもの観客が多かったからか彼は合間に語ったけれど。

5年ぶりに見る「みちづれ」も少し老けたけど、きっとそれは私もお互いさまだ。いや、かっこいい。本物は無駄がないのだ。表面が少しばかり老けても、それは表面にすぎず、かっこよさの芯は全くブレないばかりかますます揺るぎないのだね。

特に知っている歌にはノリノリで聴いていた三男が、ライブの途中で急にしょんぼり肩を落としている。どうしたのか訊いても、
「家に帰ってから話すから、とにかく早く帰りたい」
と言う。私は他のライブもゆっくり聴いたり、古本も見たり、何か食べたりもしたかったのだけど、ずんずん駐車場に向かって歩いて行ってしまう三男を仕方なく追いかける。
歩きながら三男はわけを話す。
「幽霊さんがあんなにギターがうまいなんて思わなかったー。Tよりもギターがうまいなんて、ボク悲しい。」
と三男は泣き出す。

8月に参加したキャンプで、みんなで歌うときいつもギターを弾いてくれた二十歳のお兄さんTのギターが、三男が聴いた中で一番上手なのだとか。そして、一番上手であり続けてほしかったようだ。みちづれさんのギターが三男の目にも明らかにTより上手であったことが、三男には悲しかったのだという。
そんなことが、悲しく感じるのね。わかるような、わからないような。とにかく、母には想像も及ばないことだった。

「みちづれさんは長年音楽をやってきたんだよ。Tはまだ二十歳だから、たぶんまだそんなにはやってないでしょ。でもTもギターが好きなら、二十歳でもそんなに上手だとしたら、これからもっと上手になるでしょ?それに、いくらもっと上手な人がいても、Tのギターがハヤテ(三男、仮名)は一番好き、でいいじゃない?」
と言うと、三男はこくんとうなずく。
お出かけは思い通りにいかなくとも、ピュアで繊細な彼の心の旅に同行できたことを嬉しく思う。今日はCDを買えなかったけれど、また新しいCDを一緒に聴いて、新しい旅をしようね♪

8月に三男が参加したキャンプの記事

幽霊会社みちづれHP


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