矢嶋花壇

三男子の母。子育て二十歳(はたち)を迎えます。不登校経験を強みにして生きることを決めた…

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三男子の母。子育て二十歳(はたち)を迎えます。不登校経験を強みにして生きることを決めた長男、地球のルールを手探りながら好きまっしぐらで生きる次男、生まれながらの愛されキャラ三男とのエピソードを綴ります。

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  • 連載小説『PIERROTのうた』

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    文章を書くことへの示唆に富んだ記事を収録。

  • 矢嶋花壇|#100文字の世界

    2021年4月6日に終了した、ニャークスのヤマダさんと花丸恵さんによる企画「#100文字の世界」のルールで作りました。ぴったり100文字の文集です。文章の練習がてら書いていますが、とても楽しいのです。だんだん成長が見られますように。

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17歳、旅に出る

(一)  人生の中で17歳は、特別の意味のある年齢なのだろうか。残念ながら自分の17歳の日々を大して覚えていないのだけれど、世の中を見渡すと17歳というのは、この社会の中での自分の位置を模索して葛藤する時期であり、その葛藤にほぼ決着のついてくる時期のようである。この頃に彼らは、親からの精神的な自立を果たすだろう。しかし内なる葛藤の形は人の数だけ存在する。  わが家の息子たちの中で先頭を切って17歳にあいなった人、長男。夏も近づく頃に彼は唐突にこう言いだした。 「夏休み、自転

    • ぼく、自分のことを悪く言うの嫌いなんだ

      この春で小学2年生に進級したわが家の三男。今のところ順調に楽しく登校している。 と言うのも、わが家は長男も次男も学校に馴染みづらく、それぞれに不登校の時期を経験してきているのだが、この生まれながらに自分が愛されていることを本能的に知る三男は息子たちの中で最も社交的であるので、いちばん普通に学校に行けちゃうのではないか?と予想していたのだ。今のところ予想通りであることを、私は迂闊に喜ばないよう努めて知らん顔をしている。 初めてのことにはひとまずキッパリと「やらない」と宣言す

      • かあちゃんが名前を忘れた花🌷

        この花の名前 忘れたんだよね 乙女のかんざしとか 女の子系の名前だった気がするんだけど 数日後 庭の草むしりを手伝う三男が 「かあちゃんが名前を忘れた花だ」 と叫ぶ 三男の中でこの花の名は かあちゃんが名前を忘れた花 と刻まれたようだ 他の雑草を抜いても その花はとらない 「花をとれるわけないでしょ!」 育ったものか 元から備わっていたものか その言葉の中に三男の心を見た (172文字) -------- #100文字の世界の作品として書こうとして、失敗しました。 こ

        • 不登校は「自立への道」

          1. 大学1年生の長男が同じ学部の同級生たちと共に映画の上映会を開催した。 「お母さんも来る?」 上映会の後には主催した5名の学生たちによるトークショーも企画されていて、 その準備やとりまとめに四苦八苦する様子を見守り、 相談も受けていたものだから、 前日の夜に急にそう言われたときには驚いた。 そんな発想がなかった。 長男も、まさか来るとは思わずに聞いたのだ。 夫に確認すると、行かれる条件が揃っていた。 「え?ほんとに来るの?どうしよう、俺、お母さんが来ると話しづらい

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          幽霊会社みちづれと三男

          地元の駅の周りで開催されている古本まつりの、ステージの、「幽霊会社みちづれ」のパフォーマンスにピンポイントで潜入してきた。7歳の三男とふたりで。 以前この場所で、ベビーカーに座った三男と「みちづれ」を観たのは、ちょうど5年前の今日だったらしい。それから三男とは車の中でCDを聴き、「みちづれ」の大ファンなのだ。「みちづれ」育ち、だと言ってもいい。 「こんな大人にならないように。」 と、子どもの観客が多かったからか彼は合間に語ったけれど。 5年ぶりに見る「みちづれ」も少し老け

          幽霊会社みちづれと三男

          キャンプの人たち

          わが家きっての甘えん坊で普段は母ちゃんから離れない小1の三男がキャンプに出かけている。いささかノリで行くことを決めたため多少のたじろぎはあったものの、早朝の集合には思いのほかすっきりと出かけた。 「5時台ってこんなに気持ちいいんだね~!」 と、車窓からの朝日を胸いっぱいに吸い込んで目をキラキラさせる夜更かし親子からは、いつの間にか眠気はどこかに飛んで行っていた。 キャンプは3泊4日。母ちゃんから離れて寝たことのほとんどないこの人には無謀にも思えるが、本人がこのキャンプに 「

          キャンプの人たち

          違い #100文字の世界

          小1三男、初めての子どもキャンプに参加。送られた写真見て母、暑くないか、疲れていないか、思ったより木陰があることに安心する。同じ写真見て父、「ここでも独りぼっちか?」と。見るところのなんと違うことよ。

          違い #100文字の世界

          裏と表の魂たち

          1.彼が亡くなってまもなく1年が過ぎようという頃、私は彼の子ども時代の親友に会った。 その人とは全く面識がなかった。彼の訃報を親友に知らせてほしいと、生前の彼から頼まれていたのでもなかった。彼はただ、親友の名前と勤め先の名前を私に教えただけ。でも彼は時々、この親友の思い出話や噂話を私に語っていた。 最後に語っていたのは彼の体調が急変する少し前だった。 「久しぶりに親友と言葉を交わした。いつもは会っても何もしゃべらないんだけど。でも、私の今の病気のことなんて話したって仕方が

          裏と表の魂たち

          死と再生――大きな木が教えてくれたこと――

          その木は 自分の大きな体を支える 体力がもうなかった 生きていく気力を 失っていた 長年寄り添うように側にいた家が ある日突然壊されてしまった 自分の中にぽっかり 空洞ができた 空洞は無数の虫を呼び寄せた 自分の体を食い尽くす虫を 木は静かに息を吐き目をつぶった 生きるためには 一度自分を殺さねばならぬ 根元からすっかり幹を斬り倒すのだ 根が死んでいればそこで終わり 生きていれば 切り株から一本の細い枝を 伸ばすだけの体力はある 悲しみに

          死と再生――大きな木が教えてくれたこと――

          洗い物をしてくれないか

          息子たちよ 洗い物をしてくれないか 一緒にご飯を食べるのだから 準備と後片付けに 少しくらい参加をしてもいいものだ 自分の好きなことをする時間を少しだけ こっちに振り分けてくれないだろうか 母ちゃんだって疲れている 母ちゃんだってほっとしたい 母ちゃんにだってやりたいこともあるのだ 声が小さすぎるのか 息子たちは聞こえないふり ああ、とめんどくさそうに 抗議に反発 結局、やってくれない ほらね、やってくれない ほらね、私はこの人たちに愛されていないんだ 面倒な家事をただ

          洗い物をしてくれないか

          「学校には行きたくなくなった」TOKIくんの言葉

          1.映画「夢見る小学校」 映画「夢見る小学校」を観た。 教育の問題がどれほど人間の根幹に深く深く関わる問題なのかを改めて知る映画。 子どもたちは、余計なことをせずに信頼しきりさえすれば、どれほど大きな自ら育つ力を持っているのか。 それをそばで支える大人たちの姿が実にイキイキしてかっこいい。 この大人たちの姿にカルチャーショックを受ける映画。 「この学校で育ったら、世界が怖くなくなるな。」 と感じた私は、私の中にまだある、世界への恐怖心を見つけることとなった。 この恐怖心

          「学校には行きたくなくなった」TOKIくんの言葉

          過去に書いたエッセイを前編後編つなげて、創作大賞2023に応募してみました。 正直、書いた内容を忘れていた今読み返すと、自分でもじんとしてしまいました。 同じ内容で恐れ入りますが、スキ応援いただけると嬉しいです! https://note.com/kadanyajima/n/n915bd6a3dffb

          過去に書いたエッセイを前編後編つなげて、創作大賞2023に応募してみました。 正直、書いた内容を忘れていた今読み返すと、自分でもじんとしてしまいました。 同じ内容で恐れ入りますが、スキ応援いただけると嬉しいです! https://note.com/kadanyajima/n/n915bd6a3dffb

          悲しみと執着

          いまだ悲しみの中にいる 人を失うとはこれほどまでに苦しさが続くものなのか まるでセロハンテープのカッターのようなギザギザで心を刻まれ続けるような痛みがある やわらいでいくのには5年や10年の月日を要するのだろうか 悲しみに力を奪われているのを感じる 悲しみ続けることに疲れを感じてもいる 「悲しみというのも感情だから、 ちゃんと感じきれば瞬時に終わるものである。 長引いているのならちゃんと感じきれていないということだ」 と言う人がいる 悲しみを終わらせずにずっと

          悲しみと執着

          隙間に生きている三男へ

          かあちゃんにはひとつの大きな悲しみがあった かあちゃんは悲しみに捕らえられてしまった そして他にはなにも見えなくなった かあちゃんは子どもたちのことが見えなくなった 2022年の夏を忘れた 川も 海も プールも 花火も 山も キャンプも。 そして季節を見失った あの人の骨を抱えてうつろな心に閉じ籠っている その脇で 瑞々しく弾ける君がいる どこにも連れて行ってもらえなくても 明るさを失わずにゲームをしている いつも寝るのが遅くなって 眠いま

          隙間に生きている三男へ

          恋愛体質

          恋愛体質なのかと問われれば 違うとは言えないかもしれない かと言って次から次と切れ目なく 恋をしているわけでもない 今までに胸を焦がした人数は 片手では足りなくても 両手では余るくらいのもの 45年も生きてきたんだもの 異常に多い数ではないでしょう? けれどもちょっぴり 惚れやすい自覚はある 「キミは自分の自己肯定感の低さを補うために 自分を必要としてくれそうな寂しさ抱える相手に 恋をしてしまうんじゃないの?」 鋭い指摘を食らったもんだ それはわたしの意識の知らぬところで

          恋愛体質

          呼び名

          「あなたの呼び方を変えようかと考えてた」 と あの人が言った どうぞ 好きなように私を呼んでほしい 呼び名というのは 心の距離を表すもの 呼ばれる側がどう呼ばれたいかは重要ではない 呼ぶ側が 一番しっくりくる呼び名が その人との距離 なのだと思う だから私はつねに 相手が私を呼びたいように呼んでほしいと願う 呼び方を変える? それはあなたと私の距離が変わったということね?