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【キヤノン EOS R100実写レビュー】写真を身近にするシステムカメラ-EOS R50との比較も添えて

キヤノンからエントリークラスのAPS-Cフォーマット・ミラーレス機「EOS R100」が6月22日に発売されました。

EOS Rシステムのエントリー機と言えば、『家電批評』でもレビューした「EOS R50」が既に発売されていますが、本機はEOS Rシステムのローエンドを担うカメラとして、R50から装備と機能を簡略化することで、さらなる軽量化と低価格化を実現しています。

簡略化というと、少しネガティブな印象を持つかも知れませんが、ビギナーでも扱い易くするために機能を厳選した、と捉えればポジティブなイメージを持てるでしょう。

3万円高いEOS R50との違い

厳選の結果、バッテリ・記録メディアを含む本体重量はEOS Rシリーズで最軽量の約356gに抑えられています。キットレンズであるRF-S18-45mmF4.5-6.3 IS STMを組み合わせても約490gと驚くべき軽さを達成しているところは見事という他ありません。

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EOS R100の特徴を簡単に紹介すると、2020年11月に登場した「EOS Kiss M2」と同じ有効約2410万画素のAPS-CフォーマットCMOSセンサーと、映像エンジンDIGIC 8の組み合わせを採用しています。

一方のEOS R50はというと、有効約2420万画素のAPS-CフォーマットCMOSセンサーと、最新の映像エンジンであるDIGIC Xを採用しています。画素スペックこそR50と近似していますが、最大の違いは、カメラの頭脳である映像エンジンです。R100が採用しているのは1世代古いタイプのDIGIC 8となり、動物や乗り物への対応を可能とする高度な被写体認識AFをR100は搭載していません。

R50の背面とAFメニュー ©︎fort
R100の背面とAFメニュー ©︎fort

操作系について、ボタンやダイヤルのレイアウトはR50とほぼ同一となりますが、独立したISO感度ボタンがR100では省略されており、意図しない操作を防ぐ為によりシンプルな操作デザインが採用されています。

R50の天面(右上にISOボタンがある) ©︎fort
R100の天面 ©︎fort

また、EOS R100の背面モニターはタッチ操作ができません。R50と差別化なのかコストダウンなのかはともかく、スマホのタッチ操作に慣れ親しんだユーザーが増えている昨今からするとユニークな戦略といえます。ひょっとすると、撮影はシャッターボタンだけに集中してほしいとキヤノンは考えたのかも知れません。

EOS R50(右)はタッチパネルです ©︎fort

その他にEOS R50との違いを挙げると、残念ながら、R100にはカラーバリエーションがありません(R50はホワイトとブラック)。他には連写性能に大きな差(AF追従で最高約12コマ/秒のR50に対してR100は約3.5コマ/秒)があること、USB充電が出来ないことなどがあります。

EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM F8 ISO100 ©︎豊田慶記

ボディのインプレッション:しっかりとグリップできる

手にしてみると、軽さがやはり印象的です。キットレンズは標準ズームが約130g、望遠ズームが約270gなので、ボディとレンズ2本を持ち歩くとしても約800g未満となります。

グリップはバッグへの収納性とサイズ感に配慮した小型のものですが、手袋のサイズがLLの筆者の手でもしっかりとグリップできますし、窮屈な感じもありません。

グリップするとこんな感じです ©︎fort
流石に小指はあまります ©︎fort

キヤノン機の美点として、肌に触れるすべての面から鋭利な角が取り払われていることが挙げられます。そのため、触れていても手のどこかが痛くなるようなことはありませんし、バッテリ蓋にはバネがついており、バッテリやメディアの挿抜はとてもやりやすくなっています。こうした気遣いの行き届いたデザインは、キヤノンならではの特徴です。

EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM F7.1 ISO1000 ©︎豊田慶記

実写インプレッション:コンパクト機ならではの痛快さ

今回は、ダブルズームキットにプラスして、コンパクトなボディにピッタリなRF28mm F2.8 STMを組み合わせて撮影を楽しんでみました。RF28mmは単焦点レンズとなり、ズームは出来ないので自身の脚で構図の調整をすることになります。フルサイズに対応していますので、R100で写真の楽しさに目覚めた場合に、フルサイズ機へとステップアップしても使うことが出来ますし、描写性能に対してとてもお手頃な価格が実現されており、筆者オススメの1本です。

EOS R100+RF28mm F3.5 STM F2.8 ISO100 ©︎豊田慶記
 RRF28mmを装着したEOS R100 ©︎fort

結論から言えば、カメラのスペックやコンセプトに応じた使い方をする前提で、かつR50を体験したことが無いのであれば満足感の高い製品です。

ローエンドの製品は評価は難しく、性能で語ってしまうと物足りないところがどうしても気になってしまいますし、かと言ってビギナー目線で評価するというのも好ましくありません。というのも、今どきの製品でビギナーが満足出来ないような新製品は存在しないからです。それくらいにカメラは高性能になっています。
そういった事情がありますので、上述のように結論付けています。

プロ目線でリアルな意見を言えば、性能的に物足りないところはありますし、スペックや機能的にコレと言って特記すべきところもありません。

しかし、お散歩スナップなど、本機に期待されるような使い方では明確な不満が無いことも事実です。というのも、カメラ性能を使い切るようなシーンは滅多にないため、性能面での物足りなさが問題とならないからです。

そもそも、エントリー機の魅力は性能的な側面とは異なるポイントにあります。
本機の魅力は製品の紹介ページにも示されている「シンプルさがここちよい。軽やかミラーレス」にあります。要約すると「軽快さと気楽さ」でしょう。特にダブルズームキットの望遠ズームレンズを装着していると、手のひらサイズの機材でありながら、パッと目にした世界のごく一部を切り取る感が強く、とても痛快な印象があります。

また、RF28mmF2.8 STMについても、パンケーキレンズと呼ばれる薄型軽量のレンズとなり、全長は僅か2.5cm程度、重量も約120gと非常にコンパクト。APS-CフォーマットのR100で使う場合にはフルサイズ換算で約45mm相当の画角となり、扱いやすい画角のレンズで、日常のメモ代わりとしてもピッタリです。

すでに一眼レフやミラーレスを使いこなしている経験者ならRF28mmと望遠ズームの描写性能の高さとコンパクトさが相まって痛快な印象がさらに後押しされるでしょうし、ビギナーにとっては写真が上手くなったように感じられるでしょう。

写真をより身近にするシステムとして、ビギナーにはもちろん熟練者にとってもオススメしたいのがこうしたエントリーモデルです。

高機能・高性能ばかりではないカメラの魅力がR100には詰まっています。

EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM F10 ISO125 ©︎豊田慶記

EOS R100とR50の実写比較

ここからは、EOS R50と撮影体験がどのように異なるのか?という視点でレビューを続けましょう。印象論や精神論ばかりというのもヒネリがありませんので、R50との違いが分かり易く、かつ再現性の高いシーンでテストしてみました。

鉄道模型

R100に合わせ、R50についても被写体認識を適用せずゾーンAFかつサーボAF。ドライブモードはR100は最高約3.5コマ/秒の連続撮影モード、R50は最高約7.6コマ/秒となる高速連続撮影モードで撮影しています。
こうした動体撮影シーンでは明確な性能差がありました。特に障害物があるシーンでは顕著な差があり、R100では障害物に惑わされる場面が多く、「撮れる・撮れない」という差となります。障害物を写し込まない場合でもR50が快適かつ強力にAFします。

撮影している感触にも違いがあり、R50の方がLV映像のラグが少ないので、安定して被写体を捉えることができました。R100とR50で迷っているとして、もし動体を撮影してみたい場合ならば、迷うことなくR50を選ぶことをオススメします。

EOS R100の場合

EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM 1/500s ISO12800(シャッター優先) ©︎豊田慶記
EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM 1/500s ISO12800(シャッター優先) ©︎豊田慶記

EOS R50の場合

EOS R50+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM 1/500s ISO12800(シャッター優先) ©︎豊田慶記

高感度シーン

高感度画質にどの程度差があるのか、テストしてみました。
iPhoneなどの高精細ディスプレイでパッと見で違いが出るのはISO3200以上のシーンとなります。ブログサイズの写真であっても違いが分かるのはISO6400以上となるシーンで、明確な違いがあります。高感度を多用したい場合もR50にアドバンテージがあります。

 EOS R100:ISO3200  RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM F8(絞り優先)©︎豊田慶記
 EOS R50:ISO3200  RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM F8(絞り優先)©︎豊田慶記
 EOS R100:ISO6400  RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM F8(絞り優先)©︎豊田慶記
©︎豊田慶記 EOS R50:ISO6400  RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM F8(絞り優先)©︎豊田慶記
 EOS R100:ISO12800  RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM F8(絞り優先)©︎豊田慶記
 EOS R50:ISO12800  RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM F8(絞り優先)©︎豊田慶記

このように、より高性能な機種との比較ではR100にアドバンテージはありません。ここに約3万円の価格差が含まれています。

EOS R100(左)とEOS R50(右)©︎fort

まとめ:初心者より、キヤノンの絵作りを手軽に楽しみたいカメラ経験者にふさわしい

EOS R100は写真をより身近な存在とする為の1台として、良くできています。惜しむべきはプラス3万円でグッと高性能になるR50が存在していることでしょう。というのも、R50であれば、写真にのめり込んだ後にステップアップしたとしても、高性能でコンパクトという存在価値のある、R100の完全な上位互換となっているからです。性能的に言えばそういった現実があります。

ただし、カメラの魅力は撮影性能や効率面以外にもあります。通常であれば、こうしたエントリー機の作例をフルオートで撮影し、誰でもカンタンかつ手軽に写真を楽しめることでエントリー機の魅力を表現しますが、経験者であってもR100を楽しめるかも重要です。そこで、そのことを証明するためにP/M/S/Aモードで露出補正を駆使しながら、エントリーモデルであっても迅速にそうした意図を込めて撮影することができるのだ、ということを確認しながら撮影を繰り返しました。その結果、EOS R100はちゃんと撮影者の想いに答えてくれるカメラであると言えます。中には「撮れてるんだか、撮れてないんだか良くわからない」というカメラもありますが、本機にはちゃんと「撮ったぞ」という感触がありました。

EOS R100+RF28mm F2.8 STM F2.8 ISO400(絞り優先・-0.3EV) ©︎豊田慶記
EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM F7.1 ISO6400 ©︎豊田慶記(シャッター速度優先・+1.7EV)

ビギナーはEOS R50を、カメラ経験者はR100を

もちろん、ビギナーが最初の1台としてEOS R100を選ぶことには賛成ですが、もし予算が許すのであれば、ビギナーにこそより高性能なR50をオススメします。カンタンに言えば打率の高いカメラのほうがより大きな成功体験を得られるからです。
どちらかと言えば、キヤノンユーザーではないけれど、キヤノンの絵作りや基本性能を手軽に楽しみたい場合や、普段は上位モデルを使用しているけれど、お散歩用に気軽に持ち歩けるカメラが欲しい場合に、R100は良い相棒となってくれそうだと感じています。

EOS R100を買うべき人
お散歩カメラが欲しいけれど、レンズ交換もしたい人
・シンプルなカメラが好みの人
・キヤノン機が気になっている他社機ユーザー
EOS R100を見送るべき人
・ガチのビギナー
・動きモノも撮りたい人
・Nikon Z30も気になっている人

総合評価
画質(15/20pt):至って普通。可もなく不可もなし
機能性(14/20pt):コレと言って特筆すべき機能は無く、とことんシンプル。USB充電に対応していないところがマイナスだけど、バッテリの持ち自体はとても良い。スマホアプリとの接続性は申し分ないレベル
使い勝手(18/20pt):スナップ用途ではとても使い勝手が良い
サイズ・重量(20/20pt):素晴らしくコンパクトで軽いため、持ち歩きが全く苦にならない。ウェアラブルというと大袈裟だけれども、そのくらいに気兼ねなく持ち歩ける
コスパ(17/20pt):コスパの評価は難しい。経験者が「これで十分」と感じて買うのであればコスパは高いが、そうじゃない場合には妥当以上のもの、つまり「お買い得」とは言い切れない。そういった境界線上にある製品です。

EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM F7.1 ISO2500 ©︎豊田慶記
EOS R100+RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM F10 ISO100 ©︎豊田慶記

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