見出し画像

認知症介護ガジェット:徘徊・迷子対策に見守りGPSを比較しました<前編>

ウチのおかんがボケちゃいまして」とは…… 突然認知症の親を介護することになったライター岡野学さんが、認知症介護の先輩でもある介護作家・工藤広伸(くどひろ)さんのアドバイスを受けつつ、モノやサービスを使って介護をラクにできないか模索する介護実践記です。家電だけでなく、日用品、生活雑貨、食品など、便利そうなものはなんでも試していきます!

本記事の初出は家電批評2022年1月号と2月号です。
執筆:岡野学/協力:工藤広伸/編集:家電批評編集部(商品紹介のリンクはアフィリエイトを含みません)

通い慣れたはずの道をおかんが間違えた

先日、おかんの定期検診に同行したときのこと。いつもは診察が終わると病院前で僕と別れ、一人で路線バスに乗って帰っていくんですが、その日は別れ際に何度も「バス停ってこっちでいいんだよね?」と聞いてくるんです。ちゃんと家に帰れるか不安になった僕は、別れたフリをしてこっそりあとをつけることに。結論から言うと、その日は家には帰れました。ただ、途中で一度、道を間違えるところを目撃……。

実は、数カ月前にも、当時入院中だった兄を迎えに行くと言ってバスで出かけ、乗り換えができずにかなり時間がかかったことがありました。そのときは、おかんがケータイを持っていてすぐ連絡が取れたのですが、これは事前に予定がわかっている外出の場合で、介護サービスが家からの「送り出し」をしてくれるおかげ。普段の買い物などの突発的な外出では、おかんはほとんどケータイを持ち歩かないので、もし迷ってしまったら連絡も取れず居場所もわからないということになりかねません。そこで、おかんに持ち歩かせたいと考えたのが、「見守りGPS」というデバイスです。

今回は「みもりGPS」を例に、見守りGPSがどのようなデバイスなのか詳しく紹介します。なお、見守りGPSは子供用を想定した製品が多いのですが、この記事はあくまでも「認知症介護」の立場からの解説となります。

みもりGPSの外観
見守りGPSの例:みもりGPSをバッグに装着したところ 

見守りGPSとは? “持たせられれば”外出先も経路も把握できます

見守りGPSは、携帯電話の基地局やWi-Fi、GPSの信号などからデバイスのある場所を特定し、見守る人のスマホに表示してくれるアイテム。現在地だけでなく移動経路もわかるほか、指定したエリア外に出ると通知する機能やスマホから録音したメッセージを見守りGPS本体から再生できる機能を備えた製品もあります。携帯電話回線で通信するので、Bluetooth通信の「紛失防止タグ」のように、スマホから離れると場所がわからなくなってしまう心配がないのも魅力です。一方、紛失防止タグよりサイズが大きいのはデメリット。見守りGPSの特徴をまとめると以下のようになります。

見守りGPSの特徴

  • GPSの測位情報などを使って子どもや被介護者の居場所や移動経路を特定できる

  • 見守られる側は端末を持っているだけなので、スマホが使えない人でもOK

  • 見守る側はスマホの専用アプリの地図から見守る人の居場所を確認する

  • 月額料金のサブスクタイプと数年の使用料込みの買い切りタイプがある

  • 本体端末は手のひらサイズだが紛失防止タグ(AirTagなど)よりは大きい

このように移動した経路などを把握できます

簡単な初期設定だけでスグ使えます

見守りGPSの設定は、いたって簡単です。今使っている「みもりGPS」の場合、製品の購入から使うまでたったの4ステップ。アプリの操作も少ないため、迷うことなくすぐ使える状態にできました。前回のテストでは、ほかの製品もいくつか試しましたが、使い始めるまでの設定の手順などは大きく違わない印象でした。この手のデバイスを使い慣れていない人でも安心です。

<STEP1>まず、Amazonや公式通販サイトなどで製品を購入します
<STEP2>製品が到着したら、取説に書かれた専用アプリをダウンロード
<STEP3>名前やメアドなどを登録。公式通販で購入した人はログインのみ
あとは「利用を開始する」ボタンを押せば使える状態に

以前使ったときは「重い」のがネックに

以前も見守りGPSを数台テストしたことがあったのですが、そのときは「おかんが出先でなくしたり落としたりしたものを探すために、外出時の移動経路を特定したい」という用途を想定。テストで好成績だった「みもりGPS」という製品をしばらく使っていました。ところが、おかんに確実に持たせるために財布に取り付けたのが災いして「こんな重いの付けているのイヤ」といつのまにか取られてしまったり、行動範囲や移動経路が一定だったりしたのと、そこまで緊急性を感じなかったことから、いつの間にか使わなくなっていたんです。

居場所の特定に再度使ってみようと思いました

ただ、出先で道に迷う心配や、ひとり歩きをするおそれがあるなら話は変わってきます。くどひろさんに話を聞くと「もし、本人にちゃんと持たせることができるのなら、居場所を探す大きな手がかりになってくれることは間違いありません」とのこと。おかんが外に出るときに必ず持って行くのは財布ぐらいなので、現状では財布からおかんが勝手に取らない方法を考えながら、見守りGPSを使っていくのがよさそうです。ちなみに、“GPS内蔵の靴”というものもあるんですが、こちらは「本人が自分の靴と認識できず、履いてくれない可能性もある」(くどひろさん)という話を聞いていたので、リモート介護の僕は、早々に断念しました。

見守りGPSを調べてみると、この2年ほどでどんどん進化していて、最近だと測位方式がより高精度なものになり、通信方式も新しくなって地味に省電力&小型軽量化している模様。おかんに久々に持たせたら「全然気にならないわ」なんて言ってくれるかも!? (つづく)


執筆・検証:岡野学
認知症の母親をもつ40代ライター(都内在住)。実家から徒歩15分の距離に住み、日々リモート介護に役立つものを物色
監修:介護作家・ブロガー工藤広伸
ガジェットを使ったリモート介護を実践する介護作家。音声メディア「Voicy」初となる介護チャンネルにて、介護に役立つ情報を発信中








この記事が参加している募集

おすすめガジェット

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?