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vol.2 多くの歯科医院が抱える葛藤と打開策について

みなさん、お久しぶりです。歯科コンサルタント角 祥太郎のマネージャーを担当しております高橋です。

前回は、角が歯科医師としてのキャリアをスタートし、歯科コンサルタントとして「独立するまでの経緯を中心にお伝えしました。なんでもヒョイヒョイとこなす器用な方だと思っていましたが、素顔の角は、数多くの悩みや失敗、挫折を経験したひとりの人間でした。

第2回となる今回は、独立後に合計240回以上も行ってきた講演活動について、さらには今、多くの歯科クリニックが抱える課題や葛藤について語っていただきました。

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アイデンティティの再構築を経て。見えてきた、歯科コンサルタントとしての使命とニーズ

ーー 「子どもの未来を健康で満たす」という角さんご自身の軸が定まり、次のステップを踏み出したところまで、前回お話していただきましたが、その後は、仕事でも変化がありましたか?

そうですね。自分の指標が定まってからは、肩の力が抜け、自分らしく働けるようになりましたね。自分のコアを把握できてからは、普段の仕事でも楽しさを感じられるようになりました。それが最初に感じた大きな変化ですね。

ーー つまり、仕事が「食うため」ではなくなったということでしょうか?

稼ぐために働くのではなく、自分のミッションのために動くことができるようになりました。だから、私が代表を務めるclapping handsが仕事を請け負う基準も「子どもの未来を健康で満たす」というビジョンを共有できることが条件になっていきました。

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ーー 働くスタイルや関わる人も変わっていったということですか?

そうですね。どんどん仕事が面白くなっていきました。でも、そこからトントン拍子にいくかなと思ったのですが、人生とはそううまくいかないもので、また新たな課題が出現したんです(笑)。

起業後の約2年間は裏方仕事に徹していたのですが、ふと、自分が独自のコンテンツを持っていないことに気がついてしまったんです。現状の働き方を続けることもできるけれど、クライアントの商品・サービスに頼っているだけで、これでは自分の軸が確立できていても、単純な業務に終始してしまうし、顧問先に依存しているなと……。

ーー 自分のコンテンツ。歯科医師のライセンスを持っていることは強みになると思うのですが、角さんがおっしゃっているのは、それとは違うんですよね?

資格とか実績ではなく、もうひとつ、『 角 祥太郎 = ○○ 』という要素が必要だと考えました。そこで、自分の強みを再度見つめ直し、周囲から評価を受けていることを書き出したんです。

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もしYouTubeで自分のチャンネルがあるとしたら、一番再生数を伸ばす動画はなんだろう?と考えたとき、それがセミナーだったんです。ただ、あまり乗り気にはなれませんでした。

ーー セミナー講師向きではないと思ったと? 後楽園ホールでプロレスをしたり、テレビに出たり、ステージに立って注目を集めたり、患者さんの気持ちを察して営業活動をしていた角さんにはピッタリだと思うのですが。

対話やコミュニケーションならいいけれど、講師としてトークをするのはどうかなと……。「1」聞かれたら「10」喋ってしまうような人間だから(笑)。聞いているほうは面倒に感じるんじゃないかなと思ったんですよね。自分が厄介な人間ってどこかで自覚があるから、万人受けはしないだろうなと。

ーー まだご自身の需要に気づいていなかったのですね(笑)。

はい。でも、私の話を通して、響いてくれる方が僅かながらでも存在することはわかっていたので、スモールスタートすることにしました。

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手始めに、Facebookで「期間限定・3万円でどこでも行きます!」キャンペーンを打ち出してみたました(笑)。そうしたらすぐに、新しいもの好き達、いわゆるイノベーター、アーリーアダプター的な方々が注目してくださって、いきなり複数のアポが入ったんです。関東・関西・東海エリアに連続で講演に出かけたこともありました。

ーー 実際、講演をされてみて手応えはいかがでしたか?

会いに来てくれた方々が「すごい面白い人がいるから、歯科関係者は角の話を聞いたほうがいい!」と影響力のある先生方が絶賛してくださり、早速拡散してくれたんです。それからは「あの人がいうなら」と、あっという間に広がり、2019年には全国各地で100件以上も講演を行わせていただきました。ちなみに2020年は137回もセミナーをしていました。

ーー すごい。やっぱり反響があったのですね。講演ではどういったテーマを扱うのですか?

手段や方法論ではなく、well-beingといいますか、「在り方」の話をすることが多いですね。

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手応えを感じたテーマは、腑に落ちる「ふにおちセミナー」。もっと腑に落ちていこう、自分のコアメッセージを探そうという内容。お金があろうが時間があろうが、メンタルが減ってしまうといつか限界がくる。という話を中心にしていました。

ーー そのテーマで語られる内容は、角さんが実際に経験されていたことでもありますよね。でも「ふにおちセミナー」が好評だなんて、歯科業界のみさなんが抱えている課題が伝わってくるようですね。

そろそろ、歯科医師の仕事の在り方を変えていかなければいけないフェーズに入っていると感じます。

虫歯の原因がわかっていない昔なら話は別ですが、いまはそうではない。技術も治療方法も、発展しています。先人たちの努力の賜物で。治すだけなら、学んでいる若手の歯科医師でもほぼ完璧にできる時代。どんな患者さんがきても治せる。それが当たり前。でも、虫歯の原因がわかっている現代において、治せるだけでいいのか?いまが思考の切り替え時なんですよね。

ーー 治療するだけではダメなんですか?

歯科医師って、歯ブラシ指導ひとつでその人の未来を変えることができる仕事なんです。健康な人が、健康でいるために必要な医療。それが歯科です。

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たとえばガンになったら、ガンを治すための治療をしますよね。それはとても尊いことだけれど、マイナスをゼロに戻す医療行為でもあります。

ーー 確かにそうですね。

虫歯を治すことは、他の医療行為と同じく、マイナスをゼロにする治療です。もし削ることで未来の歯の健康までも危ぶまれるようなら、ゼロにすらできない可能性もある。

ーー でも、歯科医師なら治療を通して、健康をプラスの状態に持っていくことができると?

内科を訪れて「今日はどうしました?」と医師に聞かれて「とても調子がいいです」って答えたら、先生は「何しにきたんですか?」と怒りますよね。多くの患者さんが病気を抱えているから来院している訳であって、医師も一分一秒が惜しいですから。

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でも、歯科医師は患者さんから「歯の調子がいいです!」と言ってもらえたら「それは良かった!」となる訳です。そして歯のメンテナンスに取りかかることができます。つまり、健康な人を定点観測することができる、唯一の医療機関が歯科医院なんです。

ーー 今ある健康を守るための医療。角さんが目指す「子どもの未来を健康で満たす」にも繋がっていますね。

コロナ禍の現在は、おそらく過去に例を見ないほど人々の健康意識が高まっていると感じています。健康は替えが効かないもの。失ってはいけないものだと、みんなが気がついたんです。それは急速に当たり前になった、マスク着用や除菌習慣にも象徴されているでしょう。

行動だって大きく変化しましたよね。トイレで手も洗わなかったオジサンが、石鹸でゴシゴシと手を洗っている。それどころか、食後に歯も磨いて、舌まで磨くようになっています(笑)。

健康維持に対する行動変容が起きている今の時代、歯科業界にとって、大きな転機なのは間違いないんです。

「ビジネス」と「医療」。乖離したスタンス

ーー 「歯科は健康維持のための医療」という言葉、コロナ禍の今の社会にとても響きそうですね!すでに角さんの周辺の歯科医院でも新しいアプローチがはじまっているのでしょうか?

残念ながら、そう一筋縄ではいかない業界なんですよ。いわゆる一般の事業会社であれば、組織の変化や新しいビジネスには、ミスがつきものですよね。

あとになって振り返ると、そのミスから学ぶところもあるし、意味があったんだと思えるし、それがビジネスにおけるひとつの醍醐味でもある。でも医療においてミスは絶対あってはいけないことなんですよ。「試しにやってみよう!」「失敗しても大丈夫!」が許されない。

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ビジネスの現場では、PCDAを回すってよく言いいますよね。あれをやってしまうと、医療ミスですから。一回の失敗だって許されない。だから、歯科医師もできること、成功することしかやらない訳です。

でも、できることを繰り返しているうちは、「ビジネスとしての未来」は描けないんです。ここが歯科業界にとって、もどかしいところなんです。

ーー ビジネスでは、失敗はチャンスといいますけれど、たしかに、医療では失敗は許されないですね……。もしお医者さんから「治せませんでした」「失敗しました」と言われたら、呆然としてしまうかもしれません。

そうでしょう。ワンミスで終わりって、ものすごい緊張感なんです。だから、歯科クリニックの院長さんに「事業計画を設定してみましょう」と持ちかけてもピンとこないんです。

先頭で責任を背負っている先生方は「どんなことをやりたいんですか?」と言われても「いい治療です」と答えるわけです

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さらに「できることじゃなくて、やりたいことはなんですか?」と言われても、未来はできることの積み重ねの先にしかないという発想から抜け出せないので、試しにやってみましょう」と言われたときに、「試し?もし失敗したらどうするんですか?」とフリーズしてしまうんですよね。でも、それは仕方のないことだと思います。

ーー 医療従事者であることが、経営者としての発想を持つことを邪魔してしまっている。

邪魔しているというか、自分の理念や理想を押し殺しているというニュアンスが近いでしょうか。患者さんの視点に立つあまり、自分を持つことができない。このしがらみは、歯科業界全体に蔓延しています。

でも、私が経営的なアドバイスをさせていただいている歯科クリニックの院長先生などに話を聞いてみると、みなさん必ず根っこには「自分の意欲」を持っているんですよ。

ーー その根っことは、角さんが常日頃いっている「コア」のことですか?

そうです。自分のコアを見出せば、そこには事業の芽がある。コアこそその人が本当に提供したい価値です。例えば、歯石除去が好きなAさんとBさんというがいたとします。

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それぞれが歯石取りが好きな理由は、Aさんは「患者さんが笑顔になるから」、そしてBさんは「エビデンスがあるから」だった場合。

Aさんは【患者さんの喜び】がコアメッセージで、どうすれば患者さんはもっと喜んでくれるだろう?ということに対して、とても気が回るし、労力を惜しまず働くことが出来る。その一方で、いくらいい診療ができた。と感じても、患者さんが最後に喜んでいない風ならば気になるわけです。

一方で、【エビデンスがある】がコアのBさんは患者さんが喜んでいても、治療の結果が出ても、エビデンスがないと気になるわけです。

ーー Aさんの場合、歯石とり以外の業務でも、ホスピタリティが生かせる業務をするという道もありそうですよね。

そうです。患者さんに喜びを提供できないまま、Aさんが歯石取りを続けていくと、メンタルがすり減っていく。「メンタル残高を減らさない」ことが重要。

ーー メンタル残高は、「ふにおちセミナー」で取り上げられているトピックスですよね。

お金や時間があっても、メンタルがすり減っていたら新しいことを始める力なんて湧いてきません。日々、「絶対にミスをしない」という緊張感の中で働いている先生たちは、自分のコアと向き合う余裕すら失ってしまっているのでは、と自分の実体験から感じていたりもします。

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だから、新しいアクションを起こすためには、自分のコアに合った事業を考えましょうと。私がセミナーで行っているのは、先生たちのコアを見つけるお手伝いなんです。

歯科医師のみなさんは「知識」も「実力」もある優秀な方ばかりですし、新型コロナで、世間の人々の健康志向の意識がかつてないほど高まっている今こそ歯科から世間へ投げ掛けたり、クリニックで地域の健康意識に挑戦するには絶好のチャンスです。だからこそ、ミスを恐れて何もしないでは、もったいないと思うんです。

【マネージャー 後記】

今回は、角がセミナーで話をしている内容を中心に、今、歯科業界が抱えている課題についてお聞きしました。とくに「歯科医師は、失敗できない環境で働いている」という言葉は、言われてみれば当たり前だけれど、それが経営者としての判断や行動を阻害する原因になっているという話には、驚かされました。

次回は歯科コンサルタントとしての角が、実際のコンサルティング業務をどのように行っているのか。また、コンサルが入ることで変化した歯科医院のエピソードをお届けしていきます。それではまた来月!次回の更新をお楽しみに。


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