門上武司

食を通していろいろ個性的な人たちと出会い、多くの刺激を受けています。食の向こう側の世界…

門上武司

食を通していろいろ個性的な人たちと出会い、多くの刺激を受けています。食の向こう側の世界は、大きくそこから感じることも多いのです。「あまから手帖」を作ったり、テレビやラジオの番組で食を中心に様々なことを話しています。株式会社ジオードという「編集」の会社も経営しているのです。

マガジン

  • WEDNESDAY PRESS

    その時、気になったことがら。 食であったり、人であったり、街であったり、モノであったり、音や映像などを思いのまま綴るノートです。

最近の記事

真っ直ぐ

    • ポストカード

      • 黒板の魅力

        • 「本を語る」

          WEDNESDAY PRESS 074 毎週土曜日fmcocolo「門上西林物見遊山」というトーク番組で様々なテーマについてコピーライターの西林初秋さんと話す。 毎月第1週目は、映画について,最終週は本について語る。 「三千円『一』本勝負」というタイトルで、それぞれ三千円以内で購入した本について話すのだ。 三千円という値段は、いろんなチャレンジができる。一冊の場合もあれば五冊購入したこともある。 本の紹介というスタイルをとるが、それにとどまらず本から見えてくることや、古本屋

        真っ直ぐ

        マガジン

        • WEDNESDAY PRESS
          3本

        記事

          「パイの夜」

          WEDNESDAY PRESS 073 食事は18時からであった。 パイを使った料理を、というリクエストをしていたので少し気になり17時頃レストランに出かけた。 定休日のイベントである。 ドアを開けて中に入ると、カウンターの上にはダンボール箱などがとっ散らかっている。 厨房の中は、何やら声をかけにくい空気でバリアが張ってあるような感じ。 「思った以上に大変です。あんまりやったことのない料理だから」とシェフがボソッと言った。 ただならぬ雰囲気。「申し訳ありません。18時ギリギ

          「パイの夜」

          「制外録」

          WEDNESDAY PRESS 072 知人に貸していた「制外録」という本が却ってきた。 これは昨年亡くなった師匠・佐藤隆介さんが平成4年1月1日に自己出版された作品集である。 「制外録 早い話が酒徒の独りごと」。 内容は日本各地の酒の肴を毎月紹介するのだが、そこには佐藤さんとその食べ物、また各地の人々との熱い交流が端正な文体で綴られている。 なかに織り込まれたコラム「甘口辛口」は酒縁、酒ごころ、以酒養真、そばがき、酒びたしなど、はっとする文章が登場する。 そして何より、

          「制外録」

          「駐車場の料金」

          WEDNESDAY PRESS 071 ときおり、京都駅八条口側の駐車場を利用することがある。 帰宅が遅くなり京都駅から自宅までタクシーに乗ると1300円ぐらいになる。 だが、駐車場が24時間800円というところがある。これならクルマを置いて置いた方がいいなと思ったのがきっかけ。 この駐車場料金の変貌ぶりには驚くことが多い。 もう10年以上も前のこと。 八条口側は駐車場だらけであった。 大きな駐車場が何軒かあり、一日800円というのが最安値。 そこも少しずつ料金が上がり、

          「駐車場の料金」

          「レターバイキング」

          WEDNESDAY PRESS 070 比較的手紙や葉書を書くほうだ。 僕たちは84円交際と呼び、週に数通手紙をやりとりする仲間が二人いる。 一人は横書き、もう一人はときに縦書きのことがある。僕自身はほぼ横書き。 昨年鬼籍に入った師匠に手紙を書く場合は必ず縦書きとした。もし横書きで便りをだすと「オマエは何人だ!」と怒りの返信が届く。 そんなこともあり、時折縦書き、それも筆で手紙を書きたいと思い、和紙の便箋と封筒は常備している。 先日、京都の寺町三条上がるの「鳩居堂」の前を

          「レターバイキング」

          「トンカツの真髄」

          WEDNESDAY PRESS 069 人生最期の食事はビーフカツサンドが希望である。 だが、東京に行くとトンカツが食べたくなる。 昨年久しぶりに出かけ感動を覚えた「ぽん多本家」で夕食。 メニューにはカツレツと書いてある。 迷うことなくこれを注文。 しばらくしてテーブルに到着。 コロモはやや大粒、淡い茶褐色の揚げ具合だ。 まずはそのまま食べる。 コロモのサクッとした食感に続く、豚肉の瑞々しさ。 まさに溢れる肉汁という表現がピタリとくる。 次は塩を少しかける。 塩の力で豚肉

          「トンカツの真髄」

          「直木賞作家の事業継承」

          WEDNESDAY PRESS 068 「大阪王将」が後継者のいない町中華の店を買い取り、その店の名物料理を生かしながら経営をするという。今後、そのスタイルを増やすそうだ。いわゆる事業継承である。名物料理をブラッシュアープして、グループ店のメニュー強化にもいい影響を与えるように感じる。 またファンド出身で数々の企業を再生、または業績を伸ばしてきた知人が、同じような事業継承の会社を立ち上げた。個店というより、湘南地区の弁当製造会社や九州の食肉加工販売会社や駿河の魚介類の卸業

          「直木賞作家の事業継承」

          「特急の紳士」

          WEDNESDAY PRESS 067 京阪電車にプレミアムカーが登場してから、自動車で通勤することが極端に減った。 真冬のある朝のこと。ホームで一人の男性が気になった。帽子は見るからにボルサリーノのブラウン。コートも同系色のブラウン。スーツもダークブラウンであった。その男性もプレムアムカーに乗った。あとを追うように僕も乗車した。男性は、一番前のシートに座ろうとし、まずコートを畳み棚に乗せる。同じくマフラーも帽子も、である。ここまでは、僕も全く同じ動作であり、思わず微笑した

          「特急の紳士」

          堀内誠一さん

          WEDNESDAY PRESS 066 アンアン、ブルータス、ポパイなどマガジンハウが発行する雑誌のロゴデザインを手がけたのが堀内誠一さんというアート・デイレクター。 だが、堀内さんには絵本作家という顔がある。 その絵本の世界の展覧会が、大丸ミュージアム<京都>で開催されている。 「青いサーカス一家」「たろうのおでかけ」「ぐるんぱのようちえん」「白いチビの馬」「雪わたり」「あかずきん」「くるみわり人形」など60冊を超える絵本を発表した。 僕にとってはエディトリアル・デザイ

          堀内誠一さん

          「絶滅危惧種 フランス料理」

          WEDNESDAY PRESS 065 奇しくも昨秋、二人の友人から同じ新聞記事が送られてきた。 タイトルは「判で押したようなメニューの数々 フランス料理は絶滅危惧種なのか」というセンセーショナルなもの。 これは作家のマイケル・ブースが世界中を家族で食べ歩き、それを元に何冊ものノンフィクションを書く作家のレポートである。 彼は十数年前パリに住んでいたことがある。コルドン・ブルーで学び、いくつかのミシュラン星付きレストランで働いていた頃のこと。そんな彼が50歳の誕生日に妻と

          「絶滅危惧種 フランス料理」

          伊丹十三のサラダ」

          WEDNESDAY PRESS 064 「大きな木の鉢にドレッシングを作り、そこへサラダ菜、胡瓜、トマト、セロリ、玉葱、赤蕪などの材料全部を入れてかきまわす。(ドレッシングというのは野菜の上からかけるものではない。必ず先にサラダ・ボウルの中で作ると知るべし)これをそのままどんと食卓の中央に据える。こういう精神のものでなけれらばなりません」 「瓶入りサラダ・ドレッシングというものがある。フランス人が聞いたらきっと腹を立てるだろう」 「できあがったサラダをタッパーウエアかなんか

          伊丹十三のサラダ」

          「添える」

          WEDNESDAY PRESS 063 部屋を整理していたら古い日記が出てきた。 古いといっても2009年だが、その年は大きなノートにその日出かけたライブのチケットや届いた手紙やハガキを貼り付け、その感想を書いたりしていた。 そこで見つけたハガキには 「長年の縁に免じて、最後の教育的指導。掲載誌を送るとき、事務的に本だけを送るのではなく、門上直筆(署名だけでも)の此の度はありがとうございました」の挨拶文は同封すべきだった」と師匠からのメッセージがあった。じつは、その前のハ

          「添える」

          「一歩 踏み込む」

          WEDNESDAY PRESS 062 ある女性に「私の名前が読めたら、話を聞く!」と言われた名前が「歩子」であった。しばし考えたが、名前が出てこない。「最初に一歩(イッポ)ってゆうでしょ」と。正解は「ポコ」である。読むことはできなかったが、なぜか「一歩」という言葉がずっと頭に残っていた。 そして天ぷらの料理人の取材を始めたとき、参考にしたのが「最後の職人」という銀座の天ぷら「近藤」の近藤文夫さんのノンフィクション。作者は中原一歩というノンフィクション作家であった。一歩とい

          「一歩 踏み込む」