「石内都という写真家」

WEDNESDAY PRESS 042

長く住んだ横須賀から桐生に住まいを移したという写真家・石内都さん。
桐生は絹の街でもあり、彼女の作品には「絹」をテーマにしたものもある。
7月25日で開催は終了したが、西宮の大谷記念美術館での「見える見えない、写真のゆくえ」という展覧会はデビュー当時から現在に至るまでかなり多数の作品が展示され圧巻であった。

その中で映像ルームがあり、彼女の暗室の様子が開陳されたいた。その緻密な作業ぶりにはいささか驚きを覚えた。そこまで精緻を極めてゆくのか。一切の妥協を許さない仕事。だからこそ上質な作品が誕生するのだと感じた。

写真には撮影者の時間が埋め込まれていると思う。
彼女の作品に母親の遺品を撮影したものはある。そこには母親は生きた時間、彼女が母親と過ごした時間などが記憶されている。

写真を撮るという行為は、自分との関係性から見出すテーマが浮かんでくる。
なぜ撮るのか、そしてどう撮るのか。考えれば、これは身体的な行為でもあり、個人的な歴史を背負うことにもなりうる。

この写真展を観て、いろいろなことを思い出した。中学生のとき、兄が現像道具一式を購入し、自宅の一室がにわかに暗室となった。その闇が興味深く、高校では写真部に属し、友人の彼女をモデルとして相当数の写真を撮った。浪人大学時代はアルバイトで選挙の報道写真を撮り、毎晩自宅の暗室にこもり多数のプリントを作成した。その時の現像液の匂いや引伸ばし機のあかりなどが蘇ってきた。まさに個人の歴史である。

秋にはグループ展があり、そこに出品する作品をそろそろ撮りだす時期だ。

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