クリエイティブ・コモンズについて

僕が公開している楽曲には基本的にクリエイティブ・コモンズを付けています。利用者側とクリエイター側のどちらにも便利で使いやすいシステムなのですが、残念ながら日本での普及度・認知度は低いのが現状です。何度か問い合わせいただくこともあったので、一度文章できっちり書いておいた方がいいのかな、と思って久々に更新しました。

クリエイティブ・コモンズについて説明する前に、そもそも「著作権」とは何か、ということについて改めて確認する必要があると思います。インターネット界隈では、著作権への理解が曖昧なままの人も見受けられますが、作品を二次利用をする方には、是非とも著作権について正しく理解してから利用してほしいと思っています。ちなみに僕は法律の専門家ではない素人なので、上手く説明できてない部分もあるかと思いますが、どうかご了承ください。

著作権とは知的財産権の一部で、人間の思想や感情を表現した創作物(言語、音楽、舞踊、美術、建築、プログラムなど)を対象にし、その創作物の著作者に与えられる権利のことです。だから、例え子どもが作った作品であったとしても著作権は発生します。そして今僕が書いているこの文章にもです。

著作権は、人格的利益の保護を目的とする「著作者人格権」と、財産的利益の保護を目的とする「著作権(財産権)」の2つに分かれます。「著作者人格権」は著作者が持つ権利のことで、譲渡や相続することができません。具体的な権利で言うと、「作品を公表するかどうか、公表するならばいつ公表するか」について決めることができる「公表権」、「著作者の名前を表示するか、表示するならば実名にするか別の名前を使うか」について決めることができる「指名表示権」、「著作物の内容、あるいは題名について勝手に変更されない」という「同一性保持権」があります。著作者人格権は著作者の死後は消滅しますが、一定の範囲で守られることになっています。一方、「著作権(財産権)」は権利の一部、もしくは全てを譲渡・相続することが可能な権利のことです。僕らが一般的に考える著作権というと、おそらくこの権利を指していることが多いと思います。具体的な権利ついて書くと長くなるので割愛しますが、二次利用に関わる権利ですので是非wikipedia等で調べてみてください。

日本において、著作権は特別な申請は必要なく、著作物を作った瞬間に自動的に権利が認められることになっています(無方式主義といいます)。映画などで見かけるコピーライトマークは方式主義で使われるマークですが、日本でも分かりやすいということから広く使われています。

さて、著作権について長々と説明したところで、ようやく本題のクリエイティブ・コモンズについて説明します。クリエイティブ・コモンズとはある著作物に対して一定の利用条件を著作者が課すことで、その範囲内においては自由に利用することを認めるライセンスのことです。著作権を著作者が全て保有した状態とパブリックドメイン(著作権を放棄、あるいは消滅した著作物)の中間ということで、自分の権利を主張すると同時に、著作物の二次利用を認めることが可能になります。

「でも、それだったら利用条件とかのテキストファイルを作成してRead Meにぶち込んどけばいいんじゃね?」と思われる方もいらっしゃることでしょう。しかし、クリエイティブ・コモンズを利用することにはいくつかのメリットがあります。

・リーガルコードが含まれている
クリエイティブ・コモンズには、一般の人が読んでみてこれがどういう権利を認めているかについて理解できる「コモンズ証」というものが含まれています。そして、法律の専門的な文章で権利内容について書かれた「リーガルコード」というものも含まれています。クリエイティブ・コモンズを適用した著作物で、何かトラブルが起きた場合、このリーガルコードが含まれているのはクリエイター側としては安心して利用できます。

・日本人以外にも理解できる
クリエイティブ・コモンズは世界的な非営利国際団体が普及に努めています。なので海外の方が著作物を利用する場合にも、クリエイティブ・コモンズというのは分かりやすくて便利なのです。テキストファイルで一生懸命利用条件書いたとしても日本語が分からないと意味ないですからね。

クリエイティブ・コモンズにはいくつかの種類があるのですが、僕の作品には「BY-NC」という表示-非営利のクリエイティブ・コモンズを付けています。これは利用した作品の出典を表記することと、非営利の範囲でなら利用できる、ということになります。そして、この条件下なら煮るなり焼くなり好きにできるわけです。

「非営利ってことは営利目的の使用はだめなんですか?」と問い合わせをいただいたこともありますが、そういうことではありません。クリエイティブ・コモンズというのは著作者への許可なく利用できる範囲を定めたものであって、著作者から許可をもらえば、当然営利目的でも問題ないわけです。難しいのはDJでの利用なんですが、見に来る人はドリンク料などを払うので厳密にいえば商業利用になります。ですが、いちいちそれに対して請求するなんてナンセンスですし、折角なら自由に使ってほしいというのが正直な思いなので無許可での使用も問題ないです。仮に問い合わせがあったとしても100%許可を出すのでご安心ください。

では、このクリエイティブ・コモンズ、守らなかったらどうなるのか。結論はどうもなりません。無許可で営利目的の使用をしていたからといって、僕に見つからない限りは問題になりません。クリエイティブ・コモンズは、著作者の善意によって与えられているものです。つまりそれは、利用者に対しても同じような善意を求めているわけです。自分のできる範囲でいいので、正しく守っていただけると幸いです。

長くなりましたが、クリエイティブ・コモンズというシステムは本当によくできていると思います。日本ではお互いが空気を読んで上手いことやれていることも多いのですが、こういったものを取り入れるのもまた一つの手です。これからも楽しいクリエイティブライフを送るために積極的に活用していこうと思います。

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