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ちょっと海外医学部の話 入学編

入試は簡単だった。
高校で理系を選択していなかったのに悪くもない点で無事合格。しかし入学後知ったが、そのかわりに毎年50%の生徒は1年目で落ちる事になる。なるほど、大学側は入学試験費&1年分の学費を多くの生徒から稼ぐことができ、生徒を落とすことによって卒業生のクオリティーは下げず、この国ではトップスリーに居続けられるということだ。もちろん1年生で落ちてしまえば入試からやり直し、授業は1回目の1年生の時C未満だったものは全て取り直しとなる。2〜6年生は(これは日本の医学部も同じだと聞いたが)単位を一つでも落とすと留年となる。ただ1年生は留年ではなく退学というだけの違いだ。
実際自分の学年も最初82人いたのに対して6年生の今、僕を含め36人しか残っていない

逆にいうと、「簡単なのは入学まで」ということだ。実際僕は退学&留年は無しでここまで来れたものの、毎年何かしらの教科の再試に引っかかっている。再試は各教科2回まで出来るのだが、毎年絶対ひとつは最終再試まで残ってしまっている。「落ちたら1年やり直し、学費ももう一年分」という現実が怖すぎて逃げ出す生徒は少なからず(特に1年生、3年生)、ここの医学部で精神科に一回も行かなかったという子はいない。

それでも海外医学部に興味があるという方に言いたいことがある。営業妨害をするつもりで言うのではなく、あくまで個人の感想として聞いてほしい。いや、周りの日本人がほとんど全員が言っている事なので「個人」の感想ではないかもしれない。この大学の話をしたいのではない
僕は使わなかったが、ここにきている日本人医学部生全員が日本にある某海外医学部生用のエージェンシー・塾に通ってからきている。僕は日本国民だが日本で育っていないのでそんなものがあるとも知らず、この大学に直接メールをして、大学と提携している無料のイギリスのエージェンシーを紹介してもらい(エージェンシーと言ってもオンラインの入試ヘルプウェッブサイトのようなものだが)入学試験の勉強材料、過去問などタダでもらってそれらを使って入試1週間前から勉強を始めた。

「いや、お前は英語がネイティブだから簡単だったんだよ」と思う人もいるだろう。しかし僕がネイティブなのは関係ない、なぜならこの医学部にいる半分以上の生徒は英語が母国語ではないからだ。英語だけで言ったら、ネイティブな生徒以外はみんな同じレベルだ。
余談になるが、4〜6年の教科はほとんどクリニック内で行われるため英語ではなく現地の言語で患者さんと会話をしないといけない。この時、英語ネイティブスピーカーよりも、そうでない子の方が会話がスムーズだ。自分が慣れていない言葉で1〜3年生を通っているような生徒たちだ、3ヶ国語目も人より頑張れるのだろう。イギリスからの生徒や僕はどうしてもこの3ヶ国語の勉強は後回しにして、4〜6年生の授業に手こずる。対して、ポルトガル、イスラエル、ドイツそしてもちろん日本からきている生徒は4〜6年生の時、患者さんとの会話に我々ほど戸惑わず、患者さんとジョークを言い合う強者もいる。

さて、話に戻らせてもらう。今話した英語がネイティブではない生徒たちに聞いたところ多くの生徒が僕と同じく「大学に直接メールをした」ということだった。日本人の生徒たちと同じく、高校までずっと自分の母国語で教育を受けてきた生徒たちがこういうのだ。これを聞いてこの大学に来ている日本人たちは口を揃えて言う。「エージェンシー・塾に行かなくても良かったなんて知らなかった、あんな高いお金を払ってももらえる教材はほどんど大学からタダでもらえるものと変わらないし、エージェンシー・塾に入学した時言われていた "卒業後のサポート”も何もないし、後悔している」と。

もう一度言いたい、営業妨害のつもりで言ってるのではない。ただ数年前、某有名海外医学部ブログに某エージェンシーを使ってきた日本人先輩が同じような記事を書いたところ、エージェンシーにその記事を消されたときいているので少しこの記事も心配だ。しかし日本のエージェンシーを使わなくてもいいと思っているのは我々生徒たちだけではない。初めてこの大学にメールした時、大学の人から直接「あなたは日本人だけど日本のエージェンシーは高すぎるから英語に自信があって "日本語でのサポート"がいらないんだったら、イギリスの無料のエージェンシーを使ったら?」と言われたのだ。

もしここまで読んで「自分は日本でずっときたからよくわからないし、高いお金を払っても日本のエージェンシーに通った方が簡単」だと考えているのであれば何も言わない。日本のエージェンシーを使うことで良いのは「日本語でのサポート」なのだからこれのためにお金を払える人は使えばいいと思う。しかし覚えておいてほしいのが、入学までは日本語でのサポートがあったとして、残り6年間は英語のみだと言うことだ。そして入試は6年間で一番簡単なところということだ。エージェンシーや塾を使わないと海外医学部に行けないと勘違いや思い込みをしている人たちはさておき(この記事を読んで誤解が解けたら嬉しい)、強い言い方になるが、退学・留年で50%の生徒が落ちる大学に、一番簡単なところでヘルプが必要な生徒は残っていけるのか問いたい。

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