本編『三月のさくらんぼ』

このnoteの内容

1、 あとがき
『〈小説〉三月のさくらんぼ』を書く動機となった作者のエピソード
2、制作秘話
私なりの小説の書き方や考え方。本編を執筆途中(プロット)の原稿と完成後の原稿スクショの比較。
3、 ネットで小説を書くこと
ネットで読まれるためだけに小説を書き続けて思ったこと
4、 最後に
感謝の気持ち

１、あとがき

二十代後半の頃、先輩の馴染みの定食屋に連れていってもらった。
夫婦で営む、小さな定食屋。
スナックみたいな店内。
カウンター席に案内され、先輩たちと横並びに座った。4人くらいで行った気がする。
席につき、荷物や上着をどこかに置き、ホッとしながらカウンターに腕を置いた。
その時私は突然、『知ってる！』と思った。
カウンターのその、独特な曲線。腕を置くにはちょうど良いが、何かを食べるには少し邪魔になるかたち。
私は『知ってる！知ってる！』と心で叫びながらカウンターをなで回した。
先輩たちとメニューを見、オーダーし、雑談をしている時もカウンターのかたちのことで頭がいっぱいだった。
そして私は泣いた。
突然泣いたのだ。
みんなぎょっとしていた。