ホッピー中350円、外130円

この値段は東京では適正価格なのか。

千葉南房のはずれに出張中に、
年季の入ったラーメン屋の店主から問われた。

いや実際は「適正価格なのか」なんて、
気の利いた言葉ではなくて、
同じ土地で50年以上店を構えてる親父が、
乱雑に壁に貼られた価格表を指差しながら
年季の入ったぶっきらぼうが
時を経て温かみを増したような、
頑固を諦めたような優しさで聞いて来たのである。その指は震えていた。

親父は、震える手つきでラーメンを運び
スーパーで売られているパックのライスが
雪冠して整然と構える山のようにそのままひっくり返して盛りこまれた皿を
無造作だが遠慮しがちな手つきで、カウンターに置いた。

酔っ払った出張中のサラリーマンが二人、
締めのラーメンを食べに来る。
DA PUMPのUSAを口ずさみながら。
仕事で寄ると必ず食べに来るのだという。

適正価格なのかはわからない。
中がもっと安い店で飲んだことなど
いくらでもある。

しかし、この店で飲んでいると、
中の値段など親父が適当に決めてもいいんじゃないかと思ってしまう。
例え中が千円しても、
それは親父の宇宙に支配された物理法則が導き出した所謂ひとつの計算式なのだと。

そして、私は
洗ってあるのかよくわからないグラスで
2杯目の中をたのむ。

文・もいすと



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