なぜ作ったゲームが面白くならないのか?基礎にして奥義「フロー理論」

そろそろ、ゲームデザインの話もしていこうかと思う。今回は、ゲームが面白いとはそもそも何なのか?そもそもゲームとはなんなのかを紐解き、そこからどうすれば面白くなるのかを書いていこうと思う。

そして、最初に本記事の結論を書いておく。

・ゲームとは学習を嗜好品化したものである
・人が学習から面白いと感じるには条件がある=フロー理論

この二つが、本記事の結論である。面白いと思ったら、この先を読み進めていただければ幸いだ。

そもそもとして、今回の記事をnoteに書こうと思った理由の一つとして、毎年新卒に向けて同じような話をするのだけれど、ずっと張り付いて教えられるわけでもないし、必要になったタイミングで情報を提供しないと、なかなか身に付かないので、これ参考にすると良いよというような似たようなまとまったリファレンスがほしかったのだ。でもそのようなリファレンスは存在しないので自分で書こうと思った次第だ。

これまでの経験から社内向け文章は、よほどうまくやらない限り、社内でうまく活用されないことが分かっている。それだったらネットに公開してしまって、社外を経由して社内外に影響を及ぼせればと思ったので書いている。

私の考え方は、絶対的な正解というわけではなく、一つの部分解ではある。しかし、このアプローチを知っている人が増えれば、ある種のロジックを元にして面白いゲームを作る人間が増えるのではないかと期待している。

この記事は、ディレクター、プランナー、エンジニアあたりがメインのターゲットではあるが、デザイナー、アート、サウンド系の人なども知って全体像を把握することで面白いゲームが作れるのではないかと思う、

またこの記事について、ベテランなら見る必要がないかと言うと、そうでもなく、体系化/言語化された知識は、今まで経験/暗黙的にやっていたことの見直しや別の視点の発見につながると思うので、面白いと思った方はシェアや感想をいただけると嬉しい。また、自分のほうがもっと超越的な理論で作っていたという人にはぜひ披露してもらいたい。

ゲームを作ってみたあるある話

ゲームを初めて作ろうが、何回目であろうが、よくある話を書いていく。

計画時

往々にして計画時がチームの盛り上がりのピークである。自由度が一番高く、制限が少ないため、皆が夢を語る。そしてそれを企画に落としてみて、想像上の最高のゲームをプレイして、これは世界が変わってしまうかもしれない!と思う。

作ってみる

初期に描いた計画をもとに最初は順調に作り続け、ある一定のところでプレイをしてみて、想定と全然違うことに愕然とする。想像上のプレイと、現実が全く噛み合わないのだ。そして、この後に仕様変更の嵐によるデスマーチが発生する。

まだ◎◎ができてないから面白くないんだ!

◎◎には、グラフィック、サウンド、SE、ストーリー、UI、キャラクター、ゲームバランス、世界観、演出、物量といろいろが入る。そして、足りない何かを作るのだ。そして次に気がつくのは、それでも全然おもしろくならないことだ。

そして、何度も仕様変更や機能追加を繰り返し、追加開発を行い続けるが、なぜかゲーム面白くはならない。

商業ゲームだと、3回か4回の追加開発を行うとスケジュールがなくなり、面白くないけどリリース!という羽目になる。

僕たちはこのゲームの開発者だから、やり込みすぎてゲームが面白いかどうか分からなくなっちゃってる。もしかすると、お客さんにとっては面白いものが出来上がっていて、売れるかもしれない

と最後の望みが託され、無慈悲にもマーケットにより断罪される。

趣味のゲーム製作だと、全くおもしろくないし、その上で何が面白いのかもよくわからなくなってくるので、自然と手が止まり、計画は頓挫をする。専門学校生の卒業制作や、サークル活動でのゲーム製作は大体このあたりで止まる。

しかし、何かができてないから面白くないはマシな方で、

流行り(今やってる/話に上がった/自分が好き)のゲームの◇◇システムを入れれば面白くなるかも!?

は更に地獄をみる。◇◇システムを入れても面白くならない上に、元のゲームが何だったかわからなくなり、何を作っていたのかさえわからなくなるのだ。

残念ながら、これはものすごくよく見る光景だ。私も経験はある。商業ゲームではこれを回避するために、プリプロダクションやアルファフェイズで作ってみて面白かったら、本制作に移ることや、他のゲームの続編、コピー、アレンジ、カスタムを行って面白さを担保しようとする。

だが、そもそも面白さとはなんなのか?なぜ、想像上では簡単にできた面白いが再現するのが難しいのだろうか?

そもそもゲームとは何なのか?

ゲームとは何であり、なぜ我々はこれだけ熱心にゲームをプレイしているのだろうか。そもそも人類にとって遊ぶとはどんな機能/習慣なのだろうか?
私の考えでは、遊ぶとは本番ではない「まねごと」を模擬的に実行することだったのだろう。

例えば狩りでは、実際の狩りだと死ぬかもしれない。でも遊びだと、死ぬことなく連携の練度を上げることができたのだろう。親が狩りをすることによって、子供がそれに目指してまねごとをおこなう。

人間を含む動物は、学習することによって環境に適用し、より生存しやすいように振る舞うようにできている。そのため、学習に対してインセンティブが働くように、学習を行うと快楽が出るように設計されている。つまり、「生存のために学ぶのは面白い」のである。

そして、人間は、生存本能のためについている機能をHackして、本質をすり抜けて快感を手に入れようとする。例えば苦味というのは、毒を食べないようにするためのチェック機能だったのだが、安全な範囲で苦味も料理として取り入れてしまっている。コーヒーなどはむしろ苦味を楽しんでさえもいる。

軍の戦争のシミュレーション訓練が、将棋やチェス、シミュレーションゲームのもとになったように、元々は、訓練的なものが面白いからという理由で、嗜好物になっていったものがゲームなのだろう。ゲームは「学習を嗜好物にしたもの」と考えると、非常にわかりやすい。

同じゲームを遊び続けていると、学ぶべきことがなくなるので、面白くなくなるし、難しすぎるゲームを遊んでも攻略の糸口が見えず学ぶことが出来ず面白くない。ちょうどよい難易度のゲームは、学習することが無数にあり、とてもおもしろいものである。

「学習が面白い」という話は「フロー理論」としてまとめられている。本記事ではフロー理論をゲーム開発にどのように適用させていくか、という話をする。

フロー理論とは

心理学の1つの概念でミハイ・チクセントミハイが提唱したものだ。

フロー (英: Flow) とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ゾーン、ピークエクスペリエンス、無我の境地、忘我状態とも呼ばれる。
wikipediaより

スポーツとかでゾーンと言ったり、ゲームで本当にハマったときの時間を忘れて没頭してしまうときの状態のことだ。

これがどんな条件で起きるのかというのも研究されていて、とても簡単に言うと、「チャレンジしている状態」と「高度なスキルを使う状態」の重なったときにフローが発生する。

この図はwikipediaより

この図はゲームそのものではないだろうか。私は、ゲームとはフローを中心とした体感を楽しむためのものだと考えている。フローだけではなく、コントロール、リラックス、たまに起きる覚醒、また不安すらも取り込んでエンターテイメントとして作られているのがゲームだ。

またその他にも、フローのためには入りやすくなるための条件があるのだが、それがまたゲームと考えるととても納得がいく。

明確な目的(予想と法則が認識できる)
・専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合。
時間感覚のゆがみ - 時間への我々の主体的な経験の変更
直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
能力の水準と難易度とのバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
・状況や活動を自分で制御している感覚
活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。
 wikipediaより

もはやただ、ゲームの作り方の説明と言っても、良いのではないかと思う。

フローをゲームに組み込む(理論編)

上のフローに入るための条件をまとめて整理をする

設定として必要なもの

活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。
明確な目的(予想と法則が認識できる)

こちらはゲーム設定としての目的設定である。なるべく人間の根源的な欲求のほうがわかりやすい。例えば「生き残る」とか、「敵に打ち勝つ」や、「恋愛で成就する」でもよい。

ゲームデザインとして必要なもの

明確な目的(予想と法則が認識できる)
チャレンジできる
高度なスキルが使える(ここでのスキルはゲーム上のスキルではなくテクニックという意味)
直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
能力の水準と難易度とのバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
・状況や活動を自分で制御している感覚
活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。(同項目であるがこちらは本質的なリターンがあるという意味である)

ここがゲームデザインとして必要なものである。注意してほしいのは、ジャンルがどうこうや、システムがどうこうという話ではないことだ。自分が他の人の作ったゲームをやっているときに感じていた、ここをこうすればもっと良くなるのにという感覚は、ゲームが完成後のバランスに対して思うことで、ゲームができる前は、基礎的な上記のデザインを入れることを優先したほうが良い。

また、上記のデザインは、人間は直接はうまく認識できないため、なぜ面白いのか、なぜ面白くないのかがわからない。実際に、作ったゲームにたいして導入をしてみると、プレイ感覚として面白い、理由は意図したからわかるけど感覚的には全然わからないという感じになる。

結果として起きるもの

自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合。
時間感覚のゆがみ - 時間への我々の主体的な経験の変更
・専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)

こちらは、フローが起きると結果として発生する事象である。フローがうまくいったかどうかの判定に使う。ただフローはある一定以上入ってしまうとうまく認識ができなくなるという作用を持っている。私は、フィードバックをし続けた結果、フローの深さをフロー中に認識できるようになったので、意識してプレイをすればできるようになるかもしれない。

フローゲームの注意点として、ずっと集中させすぎると疲れるという問題がある。また短すぎてもフローに入りきれないという問題もある。

フローをゲームに組み込む(実践編)

前の段落では、フロー理論のゲームに組み込むにおいての解釈を書いてきたが、それをもっと具体的にこういうものを導入すると良いというパターンを書く。例がバトル系中心になってしまうが、バトル系以外でも使えるものだ。

[パターン1] ピンチであることが認識できずいつの間にか死んでしまう

一番ありがちなものとして、ピンチになったら負けてしまうけど、HPなどを把握せずにいつの間にか死んでしまい、なんだこれとなるパターンである。明確な目的活動に本質的な価値、状況や活動を自分で制御している感覚の項目に引っかかる。生き残るだったり、物理的な体だったら痛みを生じるはずなのに、それを感ずることなくいつの間にか死んでいる=自分ではないし、自己責任じゃないよねという状態である。

これに対する対処は、HPの3割以下になったら赤点滅、大ダメージ時に赤フラッシュ(強すぎるときついのでほどほどに)、FPSのように画面外側を赤くするなどである。なぜ赤を使うのかというのは、人間にとって赤は特別な色=血の色だからである。血の色が見える=自分がピンチか自分が攻撃をしている(反撃される可能性がある)かのどちらかである。

[パターン2]行動の選択肢が多すぎる、少なすぎて介入の余地がない

人間の一時的な認識はそれほど大きくない。なんでもできる方が良いと言って無闇矢鱈と選択肢を増やしたり、選択肢を隠したり、逆に選択の余地がないほどできることがなかったりすると、明確な目的(予想と法則が認識できる)、高度なスキルが使えるの項目に引っかかりフローに入りにくくなる。

これに対する対処は、ファイアーエムブレムや、XCOMのように、敵味方を複数のユニットで構成し、誰が誰を殴るかを決めさせる、それの順番も自由に組めるようにするなどの、組み合わせ順序問題にしてしまうことだ。これだと、認識量は大きくないが、組み合わせ量が爆発するため、高度なスキルを必要となる。多人数でなくても、コマンドの組み合わせができる、連続に攻撃ができる等でもよい。

またこのパターンでやってはならないのは、アイテムやスキルの組み合わせに法則を作らず全部個別に設定するパターンだ。これだとユーザーはすべてのパターンを試さないといけなくなり、明確な目的(予想と法則が認識できる)が認識できない。特別な例外のみ設定することや、ベースは法則通りで追加効果でなにか起きる(それもモチーフなどから納得性があるもの)みたいな形が良いだろう。

また、別の回答法もある。複数の行動を連続して評価するといったものだ。いわゆるコンボのデザインである。小さなうまくいったことを、連続して評価することでユーザーに評価/追加の効果を加えることだ。このデザインは非常に汎用性があり、うまく取り入れることで、ユーザーは自分で技を鍛えてくれる。直接的で即座な反応の項目の通り、コンボはうまくやったという表現と、あなたはすごいですよという体感を作るような演出を加えると非常にうまくいく。

[パターン3]すぐにできるすぐに効果がある成功/失敗がない

選択肢の数は適切でも、その中に効果的なものがなかったりするとプレイをしていてもフローに入れないことがある。高度なスキルが使える直接的で即座な反応の項目が実現できていない。

よくある対処としては、わかりやすい課題を作っておき、その解決をできるようにしておくという方法がある。例えば、属性じゃんけんを入れる、パラメータで有利不利を作る、タイミングゲームを入れる、コンボを入れるなどがある。

こういうゲームが多すぎるので、試しにやめてみた事があるのだが、体感が平坦になりすぎて面白くなかった。人間は中期長期の成功も重要ではあるが、短期の成功失敗は意識している以上に体感が引きずられるものなのだ。

ただ、上記のデザインを入れた上でも、見たことがあるゲームができるだけでそれほど面白くないことがよくある。このパターンの場合の対処は、ゲームの鍵/コンセプトとなる一番わかり易い対処や抜け道を非連続的に作ってしまうことだろう。

例えば、コンボで3回目以降は、2倍ダメージボーナスが乗るとか、弱点属性を突いたら追加攻撃が出る、アーマーブレイクをしてから攻撃をすると3倍ダメージなどである。特定の点からボーナスがリニア(直線的)ではなくジャンプをすると人間は予想外の良いことが起きたという認識になる。そうするとこの項目を中心に認知を切り替えるようになる。

この項目をうまく使いこなせると、よくあるゲームから、とても個性的な面白いゲームに生まれ変わる。ただこの項目は、ある程度ゲームが積み上がったあとに付け加えたほうがうまくいく。ここは味付けのスパイスであり、ベースのフローが無いとうまく機能しないのだ。

[パターン4]ゲーム自体が単純過ぎて、すぐに最適解にたどり着いてしまう

複雑さが足りなかったパターンだ。ゲームが提供するチャレンジとプレイヤー能力の水準とバランスが実現できていない。

この場合の対処法として、今まで出てきた仕組みを入れることも回答としてはあるが、処理全体に関わるがうまくやるととても効果的な方法を紹介しよう。それは、複数のタスクを同時に行わせて、人間の脳のリソースを圧迫させてしまうことである。

たとえば一定時間以内に入力を制限する時間圧を加えるパターンリズムゲームを組み合わせてしまう画面中に過剰な情報を提示することによる認知リソースの消費エロやグロなど本能的に注目を集める情報を提示して認知リソースの消費などの方法がある。

時間圧を加えるは、一定時間以内で入力を区切ってしまうことで難易度を引き上げる手段だ。うまく使えば、フローに入れることができる。短時間で答えを出さなくてはならない状況を作り出すことで、脳にかかる負荷を瞬間的に引き上げることができる。ご褒美のフィーバータイムなどと組み合わせるとより効果的になる。

リズムゲームを組み合わせてしまうは過激ではあるが、うまくやれば音楽のフロー(音楽を解釈してそれに体感同期させるという認識/実行)も使えるので、ゲーム自体を単純化させながら体感を引き上げることができる。

ネクロダンサーなどが良い例だろう。このゲームは、1手の単純明快なローグを目指した結果、プレイがリズムゲームに近づいて行ったためそのままリズムゲームを取り入れてしまった例である。この他にも、PSPのパタポンなども、リズムゲームと意思決定を組み合わせたゲームとして、とても面白かった思い出がある。

画面中に過剰な情報を提示することによる認知リソースの消費は、例えば弾幕シューティングゲームがこれにあたる。弾幕シューティングでは、自機を狙わない弾を打つことで、画面上の見かけ上の情報量を跳ね上げ、脳のリソースを圧迫させる。そして弾の危険度を判断して情報の取捨選別を行わせることで、脳に負荷を与えてフローに突入させる。この他にも、映像コンテンツをリッチにしていくだけで、人間の脳の認知リソースを圧迫することが出来るため、結果的にこれと同じ現象が発生する。

エロやグロなど本能的に注目を集める情報を提示して認知リソースを消費は、本能を使ったリソースの消費を使う手段だ。アテンションと本能での体感を同時に使うことができるの、うまく使えば引き込む事ができる。

映画やアニメでもこの手法はとても使われる。ゲームでうまく取り入れられたパターンは、艦これが上げられる。艦これでは、基本オートバトルなのだが、バトル中にHPが一定以下に下がると中破、大破状態となり、画面上にそのキャラの服がボロボロに(エロい状態)なったりする。そのピンチの状態(庇護欲求)とエロの状態(注意とご褒美)が混ざって、混乱めいた体感を作っているのだ。さらに艦これでは、HPが0になると轟沈となりキャラクターが永続ロストされてしまう。なのでピンチ体感を感じながら、エロで認知を消費され、その状態で論理的な判断をさせられるという仕組みだ。



とはいえ、認知リソースの圧迫によるフローの増進は、諸刃の剣である。どのような複雑な事象を受け入れられるか、という脳のキャパシティは人によってマチマチであるため、認知能力が高い人にとっては面白いが、低い人にとっては複雑すぎて面白くないゲームが出来上がってしまう。つまり、マーケットで受容可能なユーザ数を減らす代わりに、面白いゲームを作る手法であるからだ。もっと平たく言えば、コアゲーマー向けになってしまう。

以上4つのよくあるパターンとその対処法を説明した。

フローをゲームに組み込む(難易度調整)

これはこういう方法もあるよというので、バランス調整時に使える話として見てもらえればと思う。

要するに、特定の強さストック(ゲーム内資産)を指標にそこからの勝利可能な幅が広いほど(自分の工夫で勝利できたということで)、フローが作れたと逆算でわかるという話だ。この幅が狭い場合、工夫の余地がないと言える。

上記のスライドのアプローチは、噛み合っている=面白い、という仮定を置いているが、そのようなゲームをプレイし続けるのは、非常に難しい。なぜなら常にその人の発揮しうる100%の能力を要求し続けてしまい、すぐに疲弊してしまうからだ。

緊張は緩和があって初めて成立する。例えば、スーパーマリオブラザーズでは、1-1から始まり、1-2,1-3,1-4と難易度が上昇していく。そして1-4のクッパ城で難易度が一時的に跳ね上がり、次の2-1では難易度が緩和される。そして、2-1を遊ぶプレイヤーは「楽勝じゃん、俺の腕が上がったんだな」と素敵な勘違いをしてくれる。そして成長できているという実感からフロー状態に入ってくれる。

バーチャルフロー

これは私の独自用語なので、ググっても出てこない。人間は面白いもので、入力と出力が適当である。[原因]楽しいから、[結果]笑顔になるというのが通常ルートだが、[原因]笑顔にしたから、[結果]楽しくなるというのも可能なのだ。ドキドキすることを恋と勘違いする吊橋効果も似たようなものだろう。

フローでも似たような効果はある。つまり原因を与えるのではなく、結果を与えることでフローだったと勘違いさせることができる。現実ではフロー(学習)→成長というルートだが、ゲーム成長を直接与えることができる。
つまり、あなたは成長したよ(例えばレベルアップでパラメータがあがる)とすると、フローで出てくるべきドーパミンが出てくるのだ。

ストックゲーム(例コマンド式RPG)ではこの手法がよく使われる。これも本当のフローと比べると1/3程度だが効果があるので、フローと複合して使うこともできる。フローの結果として、成長を与えることでとても気持ちよくなれるのだ。

先ほど説明した、マリオの1-4から2-1での難易度の緩和も、実はバーチャルフローの一種である。難易度を適切に上がり下がりすることで、プレイヤーに自身が成長していることを錯覚させることで、フローを与えることができるのだ。

グループフロー

こちらは、心理学の用語で私の独自単語ではない。ググれば出てくる。これは複数人で同時にフローに入ることで、フローと同じ効果+心理的に近くなるという効果がある。

協力ゲームではこれに当たり、うまく作ることができればフローゲームよりも面白いゲームが作れるだろう。

モンスターハンターやモンスターストライクなどがよい例だろう。これらのゲームは、グループフローでみんなで共有フロー体験を行い、それがストック(ゲーム内資産)に変換されバーチャルフローに入れというのを交互に行っている。また、助ける、感謝される、教えてあげるといったコミュニケーションを行うことで、人間関係性にストック(貸し借りや徒弟関係、教えてもらったなど)を貯めて、そこからまたゲームプレイに帰ってこさせるというとても良くできた仕組みである。

そして、このような人間関係性に対してストックを積むことができると、「将来、友達と一緒にプレイするときのために」というモチベーションが生まれ、ゲームを無限に遊び続けることになる。

また、ゲーム開発で一番うまく作れるときのチームがこの状態に入る。なので、ゲームの作り方であり、ゲームづくりのチーム運営の方法でもある。ゲームデザイナーなりゲームディレクターは最終的にチームのコミュニケーションをデザインし、パフォーマンスを引き上げることが必要になる。

個人の仕事も似たようなもので、仕事中にフローに1日1時間半ほど入れるひとは、30分しか入れない人の2倍生産性が上がるという研究結果もある。
ゲームデザインの側面、チームデザインの側面と2重で重要なものとなっており、フローはゲームづくりにおいて基本であり奥義なのだ。

まとめ

今まで出てきたことをまとめる。

・ゲームとは学習を嗜好品化したものである
・人が学習から面白いと感じるには条件がある=フロー理論

・フローは複数の条件を揃えることで実現できる
 ・「チャレンジしている状態」と「高度なスキルを使う状態」
 
・その他
・ゲームにフローを導入するときは、感覚ではなく論理で導入する
 ・フローに入ると感覚が役に立たなくなるため
・難易度調整とゲームデザインは、どれくらいのプレイ上での工夫の余地があるかで評価ができる
バーチャルフローという成長させると気持ちよくなる仕組みがある
グループフローというグループで一緒にフローにはいる仕組みがある
 ・開発チームで、グループフローに入れるとパフォーマンスが出る

フローの概要とフローでのゲームの作り方を書いたが、途中これがわからないとゲームは作りにくいよねというのをいくつか書こうとしたのを我慢することになった。記事が長くなりすぎるためだ。いくつかの記事に分けてこれからも書いていこうと思う。

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また参考書籍も載せておく。

こちらの本は、フローの概念を発見したミハイ・チクセントミハイの著作だ。入門じゃない方もあるが入門の方がゲームデザインを行う上では十分である。記事の内容は表面を触れただけだ。(やや学術的に)深く理解ならば、この本をオススメする。

こちらは、本記事とアプローチが逆(コンセプトからゲームデザインへの着地)であるが、内容は面白く、コンセプトからのゲームデザインへのイメージが湧くのでオススメだ。こちらが一般的なゲームデザインだろう。ただこちらの方向だけでは十分な経験がないと現実の面白いゲームに着地できないため、今の記事を書いた。


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かえるD

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コメント2件

まずこの理論を実証できるような面白いゲームを作って披露して頂けるととても嬉しい。すでにある?ぜひ遊んてみたいものです。
非常に楽しく拝見させていただきました。自分は格闘ゲームが大好きなのですが、まぁなんとなくで理解していた人が増えない理由、異常な熱狂が得られる理由への理解が進みました。
丁度、同時に、依存とドーパミン、パーソナリティ障害などを読んでいたところだったので、それらとこのフローを上手く扱っている、錯覚させているのが昨今のアイテム課金制のスマホゲームとSNSの構図にあるな、とも思いました。
こうして言葉にしていただき、ありがとうございます。
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