孤独とアイ④

授業など聞いていないも同然だ。カシワも私も授業の前半か後半は真面目にノートをとっているが、中盤の40分くらいはだいたい寝ている。睡眠はしっかりとっているはずなのに、毎回寝てしまうのは何故だろう。そんなことを何となく母に相談したことがある。母の回答は、「授業に興味がないんじゃない?」
まあ、わりと合っているかもしれないが心がむすっとした。認めたくないのだ。

けれど今日は寝なかった。隣のカシワは机と首の角度を平行にして寝ていた。なんだかんだ、昨日のオールバイトが疲れたのだろう。軽く揺すったところで起きない顔をしている。かなり深いマントルの下か、あるいは海底火山のある深海にまでその意識が飛んでいってしまったらしい。

カシワの顔をしばらく眺めていた。カシワのまつげは今日は手入れされていない。バサバサだ。けどそのバサバサがわたしには黄色に輝く草原の一房に見える。私は想像力を膨らませる。
カシワは草原の出身で狼に育てられた。薄い茶色と温かみのある白。そして青の瞳をもっているギラギラした狼。名前はクルウというらしい。カシワはいつもクルウについて、クルウの狩を見ている。将来お前もこうやるんだぞとでも言うように、狂うは見せつけていた。

クルウはうさぎに噛みついた。純粋な白からどんどん血が溢れ出てくる。うさぎは瞳も赤かった。そこからも同じ色をした液体が流れ出ている。ピクピクと動いていたうさぎがやがてその動きが鈍くなっていく。赤い目がクルウしか映さなくなってしまった。カシワは見ていた。ずっと。カシワの着ている大地に汚れた白の布も赤くなる。どんどん。どんどん。どんどん。

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