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同棲物語/Co-living Story

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男女同棲シリーズを纏めています。ブロンドヘアの女性と男性の話。この女性は自分の性別と一人称に関心はなく、違和感なく「僕」と呼び、相手の男性を「貴方」と呼びます。男性側の一人称は同… もっと読む
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コンビニ寄ろうよ。

作・画 赤江かふお  しかし君はよくあんなものを食べて腹を壊さないもんだな、もはや味も解らないレベルの激辛のラーメンの、さらにその中でも最上級に辛いものを食べて平気な顔で、住宅街を自分だけのブロードウェイであるのように無邪気に踊り歌い笑いながら、先陣を切る。  いつものメタルバンドロゴが入ったシャツをヒートテックの上から着て、そこに羽織っているのは、デザインもののスポーティーなダウン。ちょっと近所に出かけるだけでも少し服装に拘やひねりがあるのは確かに君のセンスの部分だ。が、

影法師のリズム

僕はこののんびりした街で、リズムを取りながら、路地を歩く。一人の影が地面に伸びる。 スーパーの袋はぶら下がり、夕日は辺りをゆっくりオレンジ色に染め上げる。 ああ、今日はお天気が良かった。 貴方は四泊五日、大阪で、仕事の波に乗ってる。 僕はこののんびりした街で、リズムを取りながら、日常の波を渡る。一人の影が地面で踊る。 どんぶらこ、どんぶらこ。 離れていても進む、貴方と僕の時間は進む。 〝ご飯食べた?〟 メッセージアプリで貴方のアイコンの通知が来る度、そんな事ばっかり。僕、子

自慢げな絵画

作・画 赤江かふお ガラッと浴室のドアが開き、僕は体を洗い終え湯船に浸かろうとしていた瞬間だったので、突然風呂場に入ってきた君の、鏡に映る全裸の姿に驚き、尻もちをつきそうになってしまった。 「どうも失礼、お風呂、入りますよん。」 反応が大袈裟だったことを笑われた。 いや、別にこういうことはよくある、君はどうも自分の体が美術品のようであることを知っているんだな。 風呂場の鏡を絵画の額のようにして、薄いナイロンタオルで最低限の部分を隠す仕草で、僕がそのままぼうっと鏡を見ている姿

しなやかな誘い

作・画 赤江かふお 「ぼくのからだ、見て」 君はそういっていつもまるで猫のよう、伸びをするんだ。身体をくねらせながら、腰の下に枕を敷くのは、君が自分の身体の美しさを知っているから。僕だって、そりゃ当たり前に男だ。そりゃ反応するよ、下着の中で、ああ。早くシャワーを浴びないと、と言うと、君は「浴びないで」、と止めた。決して綺麗なものでは無い。でも君は、こう続けたんだ。 「好きな人の香りって、いい香りなんだよ。ぼくさ、汗臭いくらいがいいの。よく潔癖症なんて言われるけど、ぼくはね、

よとぎばなし

作・画 赤江かふお 日頃お互いに忙しい中、一通りまとまった休みが取れたから、旅行計画を立てたんだ。ベタなんだろうけど、実は一度も行った事は無いような、古い温泉街へ。僕の下手な運転を笑いながらも、温泉に来るなんて久しぶりだと、はしゃぐ姿が、とても愛おしくてね。助手席に君がいることだけで、ああ、とても嬉しい。昼、宿について、荷物を置いて。そのままふらっと入った蕎麦屋は、観光ガイドに載っている店のようには混んでいないどころか、たった二人きりで、居心地がいい。僕は盛でいいと言う

noteで連載しているこのショートブロンドヘアの女性と男性の話。この女性は自分の性別と一人称に関心はなく、違和感なく「僕」と呼び、相手の男性を「貴方」と呼びます。男性側の一人称は同じく「僕」ですが、彼の場合相手を「君」と呼びます。彼らの『日常』は、いつも鮮やかに続いて行きます。