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【エッセイ#3】2つの飲みサー体験談

 高校時代の私はこんな願望を抱いていた。サークルに入ってパリピになりたい。そして、この気持ちが苦しくて孤独な受験勉強を乗り切る唯一のモチベーションになっていたといっても過言ではない。

 暗黒の高校時代のせいで青春をこじらせた私は、その拗らせた感情を加速させたまま高校のメンバーが誰もいない地で大学生活を迎えた。高校のメンバーの視線がない場所で思いっきり遊んでやろうと考えたのである。

 大学では至る所で新入生歓迎会をやっており片手には収まりきらないほどのビラをもらった。そして、その中の1つであるテニスサークルに所属することになる。


飲みサー1 テニスサークル

 テニスサークルと言えばテニスをほとんどせずに飲みだけやっているチャラいサークルっていうイメージもある思う。だけどこのサークルはテニスもちゃんとして飲みもちゃんとするタイプのテニサーである。

 テニス初心者が多いという噂だったが、思いのほかテニス上級者が多く高校時代にテニスどころか球技すらしてない私は練習になかなかついていけなかった。

 そして肝心の飲みである。

 最初の大きな飲み会は5月ごろで、新入生歓迎会だった。15人ぐらいの新入生と、20人ぐらいの上級生がその飲み会に参加した。

 飲みの概要はこんな感じだ。

  • 新入生の男子は乾杯の前に全員一発ギャグをする

  • 一杯目は上級生は全員ビール、新入生はビールでもウーロン茶でもよい

  • 女子はスカート禁止(安全のため)

  • 解散後、家に帰ったら必ず連絡を入れる(全員が無事帰れたか確認するため)

 まず、この飲み会の一番の難所はシラフでやらなければならない1発ギャグである。1年生たちはこの飲み会のためにどんな一発ギャグをするか割と真剣に話し合っていた。

 一発ギャグの時間がやってきた。新入生が次々と前に立って1発ギャグを披露していく。そして、一発ギャグが終わるたびに上級生からノリと勢いに任せた拍手が送られてくる。

 ついに私の番が来た。真剣な顔でみんなの前に立った。そして何も考えていなかった私は思いっきり音程を外してシャルルを熱唱した。

俺「愛を♪ 謳って~~ ウタッテ~~~~~~⤴⤴⤴⤴⤴ ( `ー´)ノ」

 例によってノリと勢いに任せた拍手が送られた。ただ、思ったより反応が薄かった。

 後で上級生に聞いたところ多くの人がシャルルを知らなかったらしい。これは大誤算だった。

 新入生の1発ギャグが終わり、乾杯の合図と同時に飲み会が始まった。

 そして、少し酒が入ったころからコールが始まった。

先輩「な~に持ってんの な~に持ってんの のみたりな~~いからモッテンノ」

 先輩たちはグラスに注がれたビールを次々と飲み干していく。中にはピッチャーごと飲んでる先輩もいた。

 そして、新入生もコールに参加することになった。ちなみに、サークルの先輩たちは新入生にめちくちゃ優しかった。先輩のグラスには擦り切れいっぱいのビールが注がれているのに対し、新入生のグラスには4分の1ほどのビールしか注がれないのである。しかも、半分飲み干せばOKという激甘ルールだった。

 コールのやり方もめちゃくちゃ丁寧に教えてくれた。コールを誰に振れば分からない時はとりあえず男の先輩に振っておけば大丈夫だということも教えてくれた。

 1次会でその日は解散となった。ルールに書いた通り、家に着いた後先輩にラインを入れて眠りについた。

 以上めちゃくちゃ新入生にやさしい飲み会でした。


飲みサー2 バイト先が飲みサー化した

 2つめの飲みサーは正確に言うとサークルではない。3年間勤め続けているバイト先がいつの間にか飲みサー化していたのである。

 私が今の飲食店でバイトを始めたのは2020年の冬である。この時期はコロナが猛威を振るっていた時期でありコロナの感染者数とお客さんの数が見事に反比例していた。

 そして、このような環境下で飲み会が頻繁に開催されるはずもなく初期のバイト先は静かを極めていた。

 しかし、2022年ごろから飲み会が増えてきた。レジ閉めなどのラスト業務が終わった後に頻繁に飲み会が開催されるようになったのだ。

 飲みの概要はこんな感じだ。

  • 飲みに来るメンバーは割と固定

  • 脈絡もなく突如誰かが飲み会に行きたいと言い出す

  • 男だけになると途端に脱ぎだす奴がいる

  • コールは少なめ下ネタ多め

 このような飲み会が週1という結構な頻度で開催される。しかも、2次会を誰かの家でやって朝までコースが定番である。

 正直私は最初の飲み会より今の飲み会が好きだが、男ノリに全振りされているので女子を気軽に誘えないのが残念である。

しかも男だけのノリに慣れているせいか、大規模な飲み会で女子がたくさん集まった時に限って静かになる。


まとめ

 飲みサーによっても全然カラーが違うことが分かっただろう。私は飲み会を率先して開くような性格ではないが、こういう飲み会に時々参加することを密かに楽しみにしている。

 「飲みサー」というと毛嫌いする人も多いかもしれないが、実態は意外と平和であることが伝わったらと考えている。


 私は、いつものように居酒屋の扉を開けて少し肌寒い街を談笑しながら歩いたのち、タクシーへと乗り込んだ。

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