日本銀行がマイナス金利政策を終了した

日本銀行(以下、日銀)が長年のマイナス金利政策を解除することを2024年3月19日に決定した。
マイナス金利は2016年1月より開始されてきた政策で、「ゼロ金利よりも下に下げられない金利について、マイナス金利を導入することで金利の引き下げを可能にした政策」だ。
マイナス金利が適用される銀行口座に資産を預けると、徐々に資産が減っていくという異常事態がマイナス金利であり、この政策にどれほどの効果があったのかは疑問だ。


そもそも世界の中央銀行がマイナス金利政策をやめたときに日本だけがマイナス金利政策を維持した。
金融政策はどのような政策をいつどのように適用するかの正解はないため、評価が難しいが、マイナス金利政策という経済に悪影響が大きい政策を日本だけが続け、相対的に日本の金利が低い状況を続けたことによって、日本は世界のATMとなるとともに、日本円の価値を大きく下げて円安を導いてしまったことは間違いない。


このマイナス金利政策という異常な政策が約8年間も続けられてきており、それをやめることについては、筆者は賛成だが、マイナス金利政策を発表した日銀の発表内容がとても奇妙な内容となっているため、それに着目しよう。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319b.pdf


日銀が2024年3月19日にマイナス金利政策をやめる理由として語った経済背景の理解がとんでもない内容になっている。
それは①「賃金と物価の好循環を確認」し、②「2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現できることが見通せる状況に至った」と判断したからだという。

日本では①「賃金と物価の好循環を確認」できるような状況にはない。
今現在も日本経済全体では賃金は実質的に下がり続けており、上がる兆しがない。
重い税金の上に、さらなる増税が続けられているために、多くの国民が困窮を続けている。
賃金が上がっているのは一部の大企業のみである。


そもそも日銀が掲げて来た②「2%の物価安定目標」とは、安定的な賃金が上昇するという好景気が続くことにより、賃金上昇が背景に起こる物価の上昇のことを言っている。
人々の給料が上がり、人々の生活が豊かになり、それが原因となって物の値段が健全に上昇することが、②「2%の物価安定目標」を前提にしている。

今現在の物価上昇は海外の物価が異常に上げられていることが背景であり、今の日本経済は「給料や収入が下がり続けているのに、物の値段だけは上がっていく最悪な経済状況」である。
にもかかわらず、この最悪な状況をもって、①「賃金と物価の好循環を確認」できると語るのは、実体経済を無視しているとしか言えない。


日銀は何らかの理由でマイナス金利政策を解除したかったのだろう。
マイナス金利政策をやめることによる利点はあるが、経済全体としてどのような影響が出るかは未知数である。
ただ、「日銀が大きな嘘の説明をすることにより、マイナス金利政策の解除を正当化した」ということ事実だけは確実なのだ。



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