25年も「オタク=性犯罪者予備軍」の中古イメージを使い続けるマスゴミたち
岡山の少女誘拐事件。
容疑者の部屋にはアニメのポスターが貼ってあった、という報道がなされている。
意図的に。
そう、意図的に。
アニメと性犯罪(少女誘拐)とが、いかにも因果関係があるかのように見せつけるために。
オタクという言葉は1983年頃に誕生した。その時からすでに、侮蔑とバッシングの対象にされていた。
拙著『非実在青少年論~オタクと資本主義~』にも書いたけれど、1983年当時、オタクが侮蔑されていたのは、
1.ファッションセンスが皆無
2.恋愛能力が皆無
この2つの理由によるものだった。
当時、時代は恋愛市場自由化の社会へ向かっており、「自分たちはファッションセンスがあり、恋愛能力(女の子を引っかける力)があり、女の子とセックスできる」と思い込んでいた者たちが、自分たちのポジションを高めるためにスケープゴート的にオタクを侮蔑したのである。
つまり、オタクはファッションセンスもないし恋愛能力もないし、女の子ともセックスできないと。でも、自分たちは違うと。
やがて89年に入って、性犯罪者予備軍の意味が、冤罪的にオタクに付け加えられることになる。
89年前半には、オタクは「異性にモテない」か「犯罪を招く」という文脈で語られるようになっていたが、宮崎勤事件が「オタク=性犯罪予備軍」の間違ったマイナスイメージを広範囲にばらまくことになる。
この時も、意図的にビデオテープがばらまかれた。
そして意図的にロリコン趣味と結びつけられた。
宮崎勤は、幼女趣味だったのではなく、ただ性器を見たくて仕方がなかっただけの男だったのに。
以来、少女監禁事件が起きると、必ずアニメやゲームとの結びつきが報道される。
犯人は、ヒロインを監禁するゲームを持っていました……!
怪しげな黒バックにゲームのパッケージを映し出すTV局。そのゲームを買った人は、その犯人以外は監禁なんてしていないのだが?
「オタク=性犯罪者予備軍」の呪縛は、今もなお続いている。
オタクが決して性犯罪者予備軍でもないにもかかわらず。反証が挙がっているにもかかわらず。
そして、今回の事件。
アニメのポスターは、オタクを表す記号として使われている。またしても「オタク=性犯罪者予備軍」の、使い古された間違った出来損ないのイメージが使われているのだ。
「自分の妻です」と言い訳したとか、「少女に興味があった。自分の好きな女の子のイメージ通りに育て、将来は結婚したかった」と動機を告白したという報道も、異常性を強調して「オタク=性犯罪者予備軍」のイメージを強化するための戦術である。
ちなみにアニメを見すぎても「自分の妻です」と言い訳するようにはならない。もちろん「自分の好きな女の子のイメージ通りに育てて結婚したい」と思うようにもならない。
そうさせるほどの強力な効果を持ったアニメもゲームも漫画も小説も、すなわち、そういう力を持ったフィクションは存在しない。
もしフィクションにそのような、まるで大麻やLSDのような物理的・化学的な強力な力が存在するならば、『源氏物語』の読者はかなりの確率で少女を誘拐して自分好みに育てている。
が、そうはなっていない。そんな社会は、この世にもあの世にもありえない。
任侠映画を見た後、肩をいからせて出てくる人が増えると指摘して、限定効果論は存在すると主張する人もいるが、アニメは任侠映画ではない。そして、たとえ任侠映画であっても、その効果は持続しない。
第一、どんなフィクションを見れば、少女を誘拐して自分の好きな女の子のイメージ通りに育てて結婚したいと思うようになるのか。そんな考えを持たせ、なおかつ持続させ、具体的な計画にまで持っていかせるアニメが、どこの世界に存在するというのか。
マスコミも警察も、いったいどこにある世界を見ているのだろうか? どこにもない虚構世界?
もう1つちなみに、7月21日18時の日テレNEWSでは、
動機について、はっきりとした供述は出ていないが、藤原容疑者の自宅には美少女アニメのポスターが壁一面にはられており、警察は、藤原容疑者が「自分好みのイメージ通りの女の子を育てるつもりだった」とみている。
http://news.livedoor.com/article/detail/9064814/
と記されている。
こちらでは、警察の推測が語られている。日テレNEWSより先の7月21日7時にアップされた山陽新聞では、被疑者が動機を自白したことになっている。
http://www.sanyonews.jp/article/44508/1/?rct=syakai
どちらが正しい? 被疑者が動機を語ったのか。それとも、ただ警察が推測しただけなのか。このあたりの矛盾にも、マスコミや警察の意図的なものを感じる。
山陽新聞の記事では、「萌え系」ポスターという表現が使われている。ここにもまた、マスコミの悪意を感じる。
http://www.sanyonews.jp/article/44512/1/?rct=syakai
1989年以来、四半世紀。
25年が経過しているにもかかわらず、依然として「オタク=性犯罪者予備軍」の、中古で誰も買い手のつかない間違ったイメージ連鎖を使い続けようとする日本のマスメディアたち。
そして、それにのっかかる規制推進派たち。
TV局だってテレビドラマをつくって、すなわちフィクションをつくって大衆に向けて放送しているにもかかわらず、なぜTV局は同じエンターテインメントであるアニメをバッシングするのか? なぜマスコミはアニメや漫画やゲームをバッシングし、性犯罪と結びつけようとするのか?
アニメ=性犯罪の温床
自分たちテレビ=安全
そう安心したいのか? アニメや漫画やゲームをスケープゴートにして、自分たちTV局を安全パイとして位置づけたいのか?
アニメを放映しているのもまた、自分たちTV局だろうに。
日本のアニメをクールジャパンとして持ち上げながら、少女監禁事件が発生するとすぐにアニメと結びつける。
これはある人物を「この人、とってもクールでかっこいいんです」と片方では言いながら、少女監禁事件が起きると「あいつがやりそうなことだ」と言いふらすのと同じレベルである。
なんという二枚舌。だからマスゴミと言われることに、なぜ気づかないのか?
マスコミを1人の人間として捉えると、これほど信用できないものはない。少なくとも、我々オタクたちにとっては、平気で人を背中から撃つ卑怯者である。
わざわざアニメのポスターのことを報道させたのは、児童ポルノ法改正案で二次元を規制対象にできなかった規制推進派が巻き返そうとしているのかもしれない。あるいは、青環法で二次元規制をするためのステップにしようとしているのかもしれない。
だが、その手に乗ってはいけない。
くだらないことをするマスコミに対しては、我々は徹底して抗議すること――抗議のメールをすることが必要だろう。
代わりに客観的な目で報道してくれるところ、すなわちオタクに対して好意的に報じてくれるTV局や新聞やニュースサイトには、感謝のメールを送ることが必要だろう。
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