見出し画像

夢喰う者

こんな設定の話を書いてみたいなと思うだけで書いていない。悪夢探偵を見た時にかぶった!とかおもってしまったのは過去の話。

彼は夢を見ない。夢を見たことがない。

西暦がいつしか終わった頃、幾度も戦争をし続けた人々は国という概念ではなく、理想を同じくする人々同士がコミュニティを作り生活していた。幸いにも地球に住む人間の数は土地に対してとても少なくなっていた。

その中のあるコミュニティでは人の夢までもを制御することに成功していた。日々、規則正しく生活し与えられた仕事をして生きる人々は夢の中ではある程度の自由が許されてはいたが、娯楽が極端に少ない世界で人々が見る夢は平穏なものがほとんどだった。しかし、破壊や快楽を求めるような夢を見る人間はカウンセリングを行うことが義務付けられ、それでも夢に変化がない場合はコミュニティから遠く離れたどこかに追放されてしまうことになっていた。

そのカウンセリングを生業とするのが彼。彼はカウンセリングに来た人の夢を読み取り、時にそこに介入して夢をコミュニティが求める正常な方向へと導くのが仕事だった。また、彼は夜な夜な人々の夢を見回らなくてはいけず、そのために体は休息していても彼自身が夢を見ることはない。彼が見ているのはあくまで他人の夢だからだ。

ある日、自主的にカウンセリングに来た人がいた。その人は、昼間は人々のために食事を作るのを仕事としていた。

「夢の中で妙な視線を感じるのです。」

その人は言った。夢の中とはいえ人が現れることもあるので彼は別段の異常には思えなかった。しかしその人は、

「視線は私を罵っているようなのです。それがとても辛い。」

と。その人はとても怯えていた。もし、夢が改善されなければ平穏なこのコミュニティから出ていかなければいけないからだ。そこで彼はその人の夢に入ることにした。

…続けたい…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?