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騙り

?:〇〇、大丈夫?
〇:ええ、なんとか
?:私もう行くけどなんかあったらすぐ連絡してね
〇:はい、ありがとうございます
?:じゃあね、、、

パタン

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僕の彼女は天真爛漫でとてもかわいい。ゲームが好きで僕の家に来てはいつも一緒にゲームをしていた。

そう、つい最近までは。

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?:おじゃましま〜す!
〇:いらっしゃい、明里

この子は丹生明里。
僕が大学2年の時に彼女は新入生として入学してきた。大学の人狼サークルで出会いそこからお互いゲーム好きということで意気投合し何度か一緒にゲームをしているうちに仲良くなり付き合うことになった。

明:じゃーん!

彼女は僕の家に上がるとすぐにディスプレイの前に陣取り、持ってきたお菓子をテーブルに広げた。

〇:ちょ、まじ後で片付けんのだるいって笑
明:いいじゃん!ほら、ゲームしよ!ゲーム!
〇:帰るとき片付けてってよ?笑
明:わかってますよ〜

と言いつつほったらかしで帰るのは目に見えている。
でも、そんな彼女が愛おしくて好きだ。



明:ちょ!そこ!敵いる!
〇:えっ!?やば!撃たれた!
明:すぐカバー行くから耐えて!
〇:りょ、、あ、やられた
明:ちょっと〜!あ、私も体力やばい!
〇:全然敵気づかなかった
明:あんまり離れちゃダメだよ!〇〇下手なんだから!
〇:なんだと!?へ、下手じゃないし!
明:でも、死んだじゃん
〇:あ、あれは不意打ちで、、、
明:ほら!次行くよ!
〇:はい

いつもこんな感じでゲームをしては言い合いをする。でも、お互いこれを嫌だとは思っておらず、むしろ楽しんでいる。



明:やっば!もーこんな時間!

2人してゲームに熱中しているうちに時計は0時を示していた。
終電はギリあるか無いかといったところだろう。

〇:泊まってけば?
明:いいの!?あ、でも、明日授業あるしな〜
〇:うちから行けばいいじゃん、僕も明日授業あるし
明:じゃあ泊まってく!
〇:おけ、じゃあお風呂入っといで
明:はーい

結局、明里は泊まることに。



明:ふぅ〜、気持ちよかった〜
〇:それはよかった、じゃあ僕も入ってくるわ
明:はーい、あ、服ありがとね!
〇:ああ、うん

明里は僕が高校のとき使っていた体操服のジャージを着ている。ちょっと丈が長くてダボダボしているがそれもまたかわいい。

〇:明里が入ったお風呂、、、

いくら彼女とはいえ普段はゲームのことばかりであまり意識していなかったが、明里はめちゃくちゃかわいくて正直身体も素晴らしいものを持っている。

〇:ワンチャンあるかもだからな!

〇〇はいつもより念入りに身体を洗いお風呂を出た。



〇:、、、
明:、、、

お互いお風呂を済ませソファに座っているが、なぜかどちらも無言で気まずい感じになっている。

〇:、、、もっかいゲームする?
明:しない
〇:そか、じゃあ寝よっか?

そう言いベッドへ行こうと立ち上がった瞬間。

ガバッ

〇:え?

明里が飛びついてきた。
予想外の出来事に困惑する〇〇。

〇:どーしたの?
明:〇〇はさ、、私のこと、どー思ってる?
〇:え、、

次いで飛んでくる予想外の質問にまたしても戸惑う〇〇。

〇:そ、そりゃ大好きだよ?ゲームしたりお菓子食べたり、一緒にいて楽しいし
明:それだけ?
〇:い、いや、、、

明里が上目遣いにクリクリの目をこちらに向けながら何かを訴えかけてくる。

〇:えっと、、、
明:、、、

こうなったら一か八かだ。
ええいままよ!

チュッ

僕は明里にキスをした。
明里は少し驚いた様子だったが、すぐに受け入れた。

〇:こ、こーゆーこと、、かな?
明:、、、

やばい、怒らせたか?

明:大好き!!!
〇:は、はぁ、、、
明:〇〇は?
〇:もちろん大好きだよ

そう言うと明里はにぱーっと笑い僕に抱きついた。

そして、そのまま2人でベッドへ行き初めての熱い夜を過ごした。


ピピピピッ

翌朝、僕らはアラームの音で目を覚ました。

〇:ん、ん〜ん
明:ん〜
〇:おはよ
明:おはよぅ、、、
〇:おい、寝るな、、腰痛っ、、

昨日の夜のせいで重くなった腰を上げいろいろと準備をする。

〇:ほら、ご飯食べて学校行こ
明:ふぁ〜い

眠い目を擦りながら2人で向かい合ってご飯を食べる。

〇:(この子と昨日ヤったんだもんな、、、エロかったな。)
明:〇〇、今エッチなこと考えてたでしょ!

突然目が覚め大声を上げる明里。

〇:いや、かわいかったな〜って

平然を装い答える〇〇。

明:えっ!?あっ、、それはズルいって、、、

そんなやりとりをしながらご飯食べ、学校へ向かう。



〇:じゃ、また後で
明:お昼に食堂ね!

そう言い各々の講義室に向かう。



〇:やっべ、筆箱忘れた
?:お隣さ〜ん、お困りですか〜?
〇:あっ、はい、筆箱忘れちゃって、、って先輩か、、、
?:はぁ〜?何その反応!学校一美人の齊藤京子先輩が隣にいるのになにその反応!?
〇:はいはい、すいませんでした〜
京:全然、反省してないな!はい、シャーペン
〇:ありがとうございます、終わったら返します

この人は齊藤京子さん。大学3年生で同じ人狼サークルに所属している。この授業は1.2年で取っていなかったから単位のために取りに来ているらしい。

明里と出会う前まで僕が密かに好意を抱いていた人だ。

京:今日明里ちゃんと来てたでしょ?
〇:あ、はい、何で知ってるんです?
京:電車でたまたま見たから
〇:へ〜

たしか方向逆だったような気もするが、まあ聞くのも野暮だろう。
わずかな疑問が残ったが一通り授業を受けた〇〇。

「では最後に、出席カード提出した人から退出してくださーい。お疲れ様でしたー。」

〇:ペンありがとうございました
京:いーえ、食堂行くの?
〇:はい、明里とご飯食べるんで
京:ふーん、ラブラブだね〜
〇:おかげさまで
京:去年までは私と一緒に帰ったりしてたのにね
〇:ですね、、じゃあ行きますね
京:うん、、、私も、、

なにか言いたげな先輩を尻目に食堂へ向かう。



ガヤガヤ

〇:お待たせ〜
明:私も今来た〜
〇:席だけ先取っちゃお
明:はーい

席に荷物を置いてから食券を買い、2人でお昼を食べた。

〇:ここのカレーほんと美味しい
明:へー、私食べたことない
〇:一口食べる?
明:いいの!?
〇:はい
明:、、、
〇:食べないの?
明:あーんしてほしい
〇:ここ学校だぞ!?
明:、、、

口を開けて待つ明里。こんなかわいい子にそこまでされたら断れるわけがない。

〇:わ、わかったよ、はい、あーん

パクッ

明:にひひっ、おいひい!
〇:それはよかった



ご飯を食べ終え、午後の授業も受け終えた2人は駅へ向かった。

〇:じゃ、また明日ね
明:うん!泊めてくれてありがと!バイバイ!

明里の家と僕の家は駅で反対方面なのでいつも駅で「さよなら」する。



そう。これが一生の「さよなら」になるとも知らずに。



ーーーーーーーーーーーーーーー
それを知ったのはその日の夜だった。

突然、明里の携帯から電話があり、忘れ物でもしたのかと電話に出た。しかし、その声は明里ではなく明里の母のものだった。

明里の母は「すぐに病院に来て欲しい」といつもの優しい声から想像できないような声で言った。
僕はすぐに病院に向かったが、明里は通りすがりの誰かにナイフで刺され、出血多量で昏睡状態。助かる可能性は極めて低いとのこと。

それから程なくして、最愛の彼女、明里は息を引き取った。

僕は明里のご両親と泣きながらお互いの心を慰め合った。



次の日、僕は学校に行けず部屋でぼっーっとしていた。

まだ休んだことなかったのにな。

何もする気が起きず、ただ時間だけが過ぎていく。

〇:なんで、、明里が、、一体誰がこんなこと、、、

やり切れない思いが込み上げて嗚咽する。
すると、

ピコン

〇:誰だよ、、こんなときに

スマホを手に取り、メッセージアプリを開く。
そこには、先輩からのメールが届いていた。

「大丈夫?」との文字が。

返信しようと思ったが、指が動かず、結局既読スルーしてしまった。

「もし、辛かったら私行くけど、、、」

心配のメールだったが、それすらも既読スルー。
それ以降、先輩からメールが来ることはなかった。



どれだけ時間が経っただろう。時計は0時を指している。
その時間を見て、この前明里が泊まりに来たときのことを思い出す。

〇:明里、、、

思い出したことでまた涙と嗚咽が止まらなくなる〇〇。

ピンポーン

〇:こんな時間に、、、誰だ、、?

ガチャ

〇〇は確認もせずに玄関のドアを開けた。

?:〇〇!大丈夫!?

少し低めの聞き馴染みのある声。

〇:き、京子さん!?

突然の先輩来訪に頭が一気にはっきりする〇〇。

〇:なにしてんすか!?こんな時間にこんなところで!
京:〇〇が心配で、、、
〇:いや、それはありがたいですけど、、、
京:あ、明里ちゃんが、、
〇:っ!、、、とりあえず上がってください

立ち話というわけにもいかないので部屋に招き入れる。



〇:お茶しかなくて
京:全然、おかまいなく、それより、明里ちゃん、、、ご、ごめん

正直話す気にはなれなかったが、なぜだか口が動いていた。

〇:あ、、明里が、、、

その瞬間、再び涙が溢れて止まらなくなった。

〇:なんで、、なんで明里が、、、

先輩がいることもお構いなしにひたすらに泣いた。

先輩はただただ優しく僕の背中をさすってくれた。

ひとしきり泣いた後、僕は京子さんに謝った。

〇:ごめんなさい、心配かけちゃって
京:いやいや、無理もないよ、私こそ突然押しかけちゃってごめんね?
〇:いえ、京子さんが来てくれてなんだか安心しました
京:それならよかったけど、あんまり無理はしないでね?
〇:はい、ありがとうございます
京:〇〇、大丈夫?
〇:ええ、なんとか
京:私もう行くけどなんかあったらすぐ連絡してね
〇:はい、ありがとうございます
京:じゃあね、、、

パタン

京子さんが帰ってからも、なぜ明里が殺されなければならなかったのか、誰がやったのか、なんで、なんで、なんで、そんな思考が頭の中を駆け巡る。



しかし、それ以上に、、、

「なぜ、京子さんは明里が殺されたことを知っていたのか」

という疑問が頭から離れなかった。

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