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ポーランド旅行記・14日目

起きたのは朝の10時半。寝すぎることもなくちょうどいい時間だった。シャワーを浴びて家を出る。旧市街のレストランに行こうかと思っていたが、ポーランド料理はだいたい食べてしまったので特に何がというものもない。泊まっているところの近くの大衆食堂に行ってみることにした。Googleマップの口コミでは「おばあちゃんの家で食べる昼ごはん」と書かれていた。インターネットの情報に頼りすぎるのもな、とは思うが、こういう自分で絶対見つけられなかったようなものが出てくる点においてはやっぱり手放せない。

歩くこと数分。いつもとは逆の道を行く。世界遺産でも観光名所でもなんでもない通り沿いに、その店はあった。

外観は、正直怪しい。が、通りにメニューが出ていた。英語も通じないと思った方が良さそうだ。「今日のメニュー」というのがあるようなのでそれにする。「今日のメニュー」という表現を頭の中で繰り返す。それだけ言えたら大丈夫なはずだ。

看板があるから安心とはいうが、これはこれで不安になる。扉を開けた。また扉がある。ソ連時代のアパートを思い出す。

中は、なんということはない「食堂」だった。注文した場で料理を受け取るスタイルのようだ。「今日のメニュー」が頭から消えてしまう前に注文する。
スープを注いで出してくれた。メインの料理はできたら呼ぶからそれまでスープ食べて待ってなさい、と言われた、気がする。ところどころロシア語に似通った単語を拾って勝手に意味をとった。

お金は?今?と財布を出して目で聞いたら「あっち」と、誰もいないテーブルを指された。レジスターっぽい機械はあるが。「後で払えばいいから」と言われた。気がした。

とりあえずスープだけ受け取って席に座る。改めて見回してみると年配の客が多い。これまで行ってきた旧市街のレストランとは違う、特別な外食ではなく生活の延長線上にある食事の場所だ。日本で言うところの定食屋みたいなものだろうか。いつの間にか知ったようになっている国の「国民感情」とやらは、観光地よりもこういうところにあるんだろうな、など考えていたら呼ばれた。メインはジャガイモとウインナーの炒め物、目玉焼きのせ。

さあ食べるか、と思ったら厨房の奥からおばさんが出てきて、何か言ってレジスターのある席に座った。食事中の人の半分ほどがわらわらと席を立って集まってくる。食べているものを申告してお金を払う形式らしい。
ちょうど近くの席に座っていたので、テーブルを指差し「今日のメニュー」と伝えた。分かってくれた。13ズウォティ(450円くらい)。20ズウォティ渡してお釣りをもらう。

確かにこれは家で食べるご飯だ、おいしいなあおいしいなあ、と食べ進めていたら喉が乾いた。注文するカウンターに並んだコンポートを飲んでいる人が結構いる。流石にタダじゃないだろうしセットでもなさそうだぞ、と思ったら近くに金額が書いてあった。1.5ズウォティ(45円くらい)。勝手に取って勝手に飲んで、しばらくして客が溜まり、また支払いのおばさんが出てきたところでお金を渡した。もう慣れたものだ。

「人の温かみが〜」なんて表現も最近は冷笑を受けるばかりだが、こういうことが言いたいんだろう。そういう空間だった。

トラムに乗って旧市街へ。結局ウクライナでは乗らなかったなと思ったが、まあ機会もなかったし、そこまで思い入れもなかった。

陶器屋へ。エスプレッソ用のカップが欲しいとずっと思っていた。ちょうどポーランド陶器も気になっていたので自分へのお土産にひとつ買った。あまり旅行の度に物を増やすことはしたくないのだが、今回は特別。旅行前に阪急のポーランド陶器展をたまたま目にしていたのだが、日本で買う1/3くらいの値段で買えた。

中央広場の地下には博物館がある、というのを聞いていたので勢いで行くことにする。よく考えてみるとポーランド滞在ももう残り数日しかない。行ける時に行っておく。
中央広場に昔あった建物の遺構を中心に、クラクフの歴史についての展示が多くあった。ヨーロッパの各都市と繋がる中世の地図を見ると、ヨーロッパというのは本当に繋がっているんだなあと、書いてしまうと小学生みたいな感想が浮かんだ。

城壁に囲まれた賑やかな街。「旧市街」のイメージがより鮮明になった。同時に、色々な人のやり取りがあり、歴史が積み重なった土地なんだなという実感が起こった。最後にはクラクフの歴史を一気にたどるビデオがあったが、これまでは独立して考えていたナチス政権下の状況も感じ方がまた変わった。

博物館が予想以上に楽しくて長居してしまった。先日行けなかったカフェに行こうと思ったが、やはりブルワリーレストランで夕食がてら飲むことにする。南の方にいい店があるようなのでしばらく歩く。

客は少なかった。老夫婦が一組だけ。食べ物はないのかと尋ねたらピーナッツしかないとのこと。仕方ないので一杯だけ飲んで別のブルワリーに行くことにする。ビールはめちゃくちゃおいしかった。確かにこれだけで店がやっていけるな、という味だった。

一度来たブルワリーレストランに2度目の来訪。他の店も2度通ったのでこれでイーブンだ。ものすごく盛況だったが4人テーブルに1人で座らせてもらった。そこしか空いていなかったので。ありがたい。

肉料理盛り合わせのプレートに黒ビール。ひとりで食べてひとりで飲んで、ひとりで上機嫌になっていく。こういう時に話し相手がいないのは確かにすこし不便かなと思った。

付け合わせのじゃがいもが結構な量で、少し残すことになった。

冬は少し飲み過ぎても外の寒気で酔いが飛ぶからいい。リヴィウの方が寒さが強かった気がする。翌日の朝ごはんでも買って帰ろうかと思ったが、結局何も買わずまっすぐ帰った。

本とか買います。