西原啓介に転勤辞令が出た。もう何度目かの転勤で引っ越しも慣れたもの。自宅にある本やコミック、その他不要品をデジカメで撮影する。

「不要品リストを送るから、欲しい人は連絡下さい」

部署の皆にメールを流すと、いくつか不要品を引き取ってくれた。残ったものはリサイクルショップへ売りに出す。赴任先へ持って行く荷物は少ない方がいい。

最終日までに引継ぎも含めて関係部署へ挨拶回りをすませ、後のことは後任の方へよろしく、とメールを送った。

送別会では「みんなからの気持ちです」と事務担当の女性から花束をもらう。特殊加工がしてあり水が無くても長期間枯れないのだとか。

「ありがとうございます。お世話になりました」

最後の挨拶をして家に帰るともう深夜。荷造りはほぼ終わってる。

さて、もらった花束はどうしよう？

渡してくれた女性の手が心なしか震えていたのは気のせいか。

物の断捨離は得意だけど、気持ちの整理はどうも苦手だ。
可愛らしい花束を前に、酔い覚ましの水を飲み込んだ。

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