もう、教室で牛丼は食べられない【開成高校を卒業しました1】
3月2日をもって、高校の3年間を過ごした開成高校を卒業しました。そこで、今の気持ちを皆さんに、そして未来の僕に、言葉として残しておきたいと思いました。
3年間の過ごし方に関して、僕に後悔は一切ありません。高1〜高3にかけて本を250冊以上読み、何人もの経営者の方と進路について相談したことで、歩んでいきたい道が少しずつ明確になりました。もう少し努力できたのではないかという思いもあります。それでも、非効率で無駄だった部分も含めて全てが学びになったといえるでしょう。
だからこそ、卒業は僕にとって通過点であり、次の旅への出発を記念する前向きなものでした。高校で出会った仲間たちと、さらにはこれまでお世話になった全ての人たちと共に未来を作っていく。この行動原理は、卒業しても変わりません。
しかし、心の中にはやはり寂しさも残っています。もう戻れない教室、受けられない授業、関わることのできない学校行事。「もっと上手くできた」という悔しさではなく、「もっと時間を過ごしたかった」という愁いが心の中に押し寄せています。
僕の開成での一番の思い出を共有させてください。
思い出として、なぜか一番最初に思い出されるもの、それは運動会準備期間に、教室で食べた牛丼です。
開成の運動会は生徒にとって最も重要な行事です。騎馬戦や棒倒しなど、学年ごとに、心・技・体を最高レベルで発揮する競技が登録されていて、高3は自組の後輩を勝たせるために約1年かけて、競技の研究や後輩指導に向けた訓練を行います。加えて、高3は自学年の競技である棒倒しに向けてトレーニングや研究を重ねます。
クラス内での役職決め、競技動画の研究、後輩指導に向けた話し合いやトレーニングなど、やることが無数にあることから、運動会までの約4ヶ月間、高3は1日のほとんどの時間を学校で、運動会のために過ごすことになります。
運動会直前には、オンライン会議の「どこでも・いつでもできる」という特性を活かして、夜22:00開始、午前3:00終了というまさに地獄の会議もありました。これはもはや、今となっても良い思い出だったなぁ〜、とは言えません。
それでも、運動会、そして運動会準備は僕にとって、そして多くの開成生にとって何にも代え難い愛おしい経験になっています。クラス約50人が身を粉にして優勝という共通の目標へ向かっていくこと、そしてその一員として運動会に関われたことは、僕が開成で得た最も大きな財産です。
さて、牛丼の話に戻ります。運動会までの数ヶ月、増量のために、僕は1日3食を全て吉野家の牛丼を食べて過ごしていました。体の100%が牛丼と水で構成されていたということです。お店で食べたこともあれば、持ち帰って家で食べることもあれば、放課後のおやつとして教室で食べたこともありました。朝に学校に着くや否や牛丼大盛りをかましたこともあります。
中でも一番忘れられない牛丼は、教室でみんなが頑張っている風景を眺めながら食べる牛丼でした。
自分も、友達も、心も体も頭脳も何もかも使い果たして、代わりに睡眠不足とストレスを溜めながら満身創痍になってイライラして、それでもそのイライラしている自分と友達さえも面白くて、楽しくて。
そこで食べた牛丼は、最高の味でした。
おととい卒業した僕たちに、もうあの時間は二度とやってきません。運動会、そして受験を経験してしまった僕たちに、開成で乗り越えるべき試練は、もう残っていません。
もう食べられない、忘れられない牛丼の味がある。
それでも、僕は次の味を目指して進んでいきたいと思います。
今、僕はオーストラリアの大学に進学するか、カナダの大学に進学するかを迷っています。次に僕が教室で食べるものはピザなのか、ドーナツなのか、ハンバーガーなのか、はたまたアボカド・トーストなのか、それともオージービーフのステーキになるのか、わかりません。
ただ、どんなものを食べるにせよ、全力でかぶりついて、かきこんで、少しイライラしながら、それでも幸せな僕が未来にいてほしいと、心から願っています。
僕に最高の高校生活をくれたみんなへ、これまでお世話になった全ての方々にあらためて感謝を申し上げます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?