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アメリカ:物議を醸したベストセラー『ジーザス・コーリング』シリーズの著者サラ・ヤングが死去

USA: Sarah Young - author of the controversial bestselling "Jesus Calling" book series - has died

4,500万部の発行部数を誇る人気シリーズ『ジーザス・コーリング/Jesus Calling』の著者、プロテスタントのサラ・ヤング(Sarah Young)が8月31日、テネシー州ブレントウッド(Brentwood、Tennessee)で77歳の生涯を閉じた。彼女自身は、自分の本は彼女自身の瞑想的な祈りを記録したものであり、主イエスの言葉を、文字どおり引用したものではないと繰り返し断言していたが、一部のプロテスタントは彼女の著書を『冒涜だ』と非難した。ヤング(旧姓ケリー/Kelly)は夫とともに、8年間日本に宣教師として赴き、日本に福音を伝えるという思いは、生涯、彼らの心の中にあった。

1946年3月15日、テネシー州の州都ナッシュビル(Nashville 、the state capital of Tennessee)の教師一家に生まれた彼女は、ウェルズリー大学(Wellesley College)で哲学などを学んだあと、ボストンのタフツ大学(Tufts University)で教育学の修士号を取得した。数年後、彼女自身が認めているように、当時の彼女は『信仰よりも合理主義哲学(Rationalism)によって』人生を導かれていた。

彼女が改心したのは、兄から贈られたフランシス・シェーファー(Francis Schaeffer)の著書『エスケープ・フローム・リーズン/Escape From Reason(邦題─理性からの逃走)』を読んだことによる。ベストセラー『ジーザス・コーリング(邦題─わたしは決してあなたをひとりにしない)』の序文で、彼女はこう書いている。「とくに、スイス、アルプスのレマン湖畔での静養中に、私は自分の内にイエスの愛に満ちた存在を発見した。このイエスの臨在の個人的な体験は、それまで知性の領域でのみ、さまざまな疑問に対する答えを探し求めていた私にとっては、まったく新しいものだった」。その結果、若きケリーはボストン近郊のプロテスタント神学校で神学を学び始めた。のちに夫となるスティーブン・ヤング(Stephen Young)と出会ったのも、この学校だった。

この女性は、こうした彼女の神秘的な体験について書き始めた。当初、さまざまな出版社が『私的すぎる』として彼女の文章を拒絶したが、コピーという形で各界に出回り始めたとき、インテグリティ社(the Integrity、後に有名なトーマス・ネルソン出版社/Thomas Nelson publishing houseの子会社となる)が関心を持った。こうして誕生したのが、日常的な読書を目的とした『ジーザス・コーリング』シリーズで、その発行部数は4,500万部に達した。

ヤングの独創的な文章は、一部のプロテスタント神学者から批判を受けている。2013年、自らを元ニューエイジ信者と称するウォーレン・B・スミス(Warren B. Smith)は、『Another Jesus Calling: How False Christ Are Entering the Church Through Contemplative Prayer(もう一人のイエスの呼びかけ:瞑想的な祈りを通して偽キリストがどのように教会に入るか)』を出版し、その中でサラ・ヤングが、冒涜的な文章を書いていると批判した。

ヤングは、彼女がイエスの代弁者であることを否定した。「私は、読者が、イエスにより個人的に近づくことを助けることができるように、イエスの福音宣教の観点からのみ書いた。このため、イエスを表す代名詞として 『私』を、読者を表す代名詞には『あなた』を使った」。

9月8日付のニューヨーク・タイムズ紙に彼女についての遺稿を掲載したクレイ・ライセン(Clay Risen)によれば、サラ・ヤングの作品は『癒し』というテーマにも焦点を当てたものだった。「彼女は慎ましく暮らしていた。学会にも出ず、宣伝や自分の写真を載せることも避けた。おそらく彼女自身が健康に恵まれず、さまざまな病気にかかりやすかったからだろう(家族によると、ヤングは白血病で亡くなった)。彼女はしばしば、イエスの臨在による癒しについて読者に書いていた」とライセンは記した。

東京のカトリックセンターで『霊性─イエスになじむ』(イエスとの親密さについて)の講座を指導しているポーランド人のドミニコ会士パウロ・ヤノチンスキー神父は、かつて日本でこのアメリカ人宣教師夫妻に会ったことがあるかもしれないと振り返る。「彼らはこの国を愛していた。(中略)ヤングは、私たちを癒してくださるイエスと、より親密に個人的に接することについて書いているが、まったくその通りだ」。神父は、同センターの講座参加者たちが、とりわけフランスのカトリック信者ニコル・ゴーセロン(Nicole Gauserron)の同様の著作(日本語のコピーも出回っている)『小さなノートブック(The Little Notebook)』を学んでいることを指摘した。

「また、現代の神秘家ヴァスーラ・リデン(Vassula Rydèn)の著書の日本語翻訳者である菅原悟氏とも、私的啓示というテーマで話をした。この若い音楽教授はカトリック信者で、ヴァスーラが設立した『神のうちの真のいのち(TLIG)』のグループ活動を運営している。私たちは二人とも、私的啓示に関するカトリック教会の教えをよく知っている。誰もそれを信じる義務は課せられていないが、それらの中にはさまざまな間違いもあり得る(訳注:ヴァスーラの著書に関しては、その内容には教会の教えに反するものは含まれていないというカトリック教会の教導権による標章が発布されている)。しかしその一方で、ヤング、ヴァスーラ、ゴーセロン( Young、Vassula、Gauserron)を含む現代の神秘主義者たちの人気もまた、何かを物語っている。私たちはおそらく、教会における神秘主義の時代に入りつつあるのだ。かつてカール・ラーナー(Karl Rahner)が予言したように、これからのキリスト教徒は神秘主義者になるか、消滅するかのどちらかなのだ」とポーランドの修道士は語った。

Fr. jj (KAI Tokyo) / Brentwood



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