やめられない贅沢もある......それを贅沢と呼ぶのであれば......タマゴの話

お給料が減ったり、老後の心配がリアルになったりするにつけ、日々の購入品を少しでも安いものに切り替えるようにしてきています。ビールを発泡酒にして、発泡酒を「第3のビール」にして、それもやめてとりあえずアルコール入ってます、みたいなのに変えて、というような話です。

あれが自分の一番贅沢できた時期だったのかなぁなんて思い返すと、正直言って結構大したことなくて、当時はこの先はきっともっと良くなる、なんて、何の根拠もなく信じ込まされていたことを疑うこともせず−−−きっと疑うことは大変なことだったので、きっと上手くいくんだって根拠もなく信じて逃げていたのでしょうが---いたのだろうと思いますが、それでもその頃は、野菜を買うなら有機野菜、加工食品を買うならば化学調味料無添加のもの、チョコレートを買うならフェアトレードのもの、みたいにして選んで買っていました。そういうものは概して、高めの値段がついていて、でも安くするための便法を使っていないのだから高いのが当然、くらいな気持ちで平気で買っていました。
懐かしいなー、と思います。

そういうものの殆どを今はもう買えなくなってしまいましたが、今でも当時のままに、買い続けてしまうものもあります。それが、タマゴ。

随分昔、渋谷の駅の地下のほとんど「立ち食い」的なフードコートで食べたオムライスのタマゴが本当に美味しくて、タマゴの味に目覚めました。
当時、同じく渋谷でオムライスが美味しいと言うので評判のお店があって食べに行ったことがあったのですが、今風に言えば「行列のできる…」的なお店だったのに、食べたタマゴには全く味がなくて、「なにこれ?、結構いい値段してるくせに…」って思ったりしたこともあった時だったので、駅チカの「早くて安ければとりあえずそれでいい」的なお店だろうと思っていたお店が出していたオムライスのタマゴの美味しさに驚いたのです。

フードコートを出る時に、実はそこにチラシが置いてあって、そのお店が使っているタマゴは、東北地方のある農場が生産したもので、タマゴは「こだわりのタマゴ」だったのを知りました。そのチラシは、そのタマゴの通販の案内でした。
タマゴの美味しさに目覚めた僕は、早速通販に申し込みました。
美味しいタマゴです。
ただ、タマゴが新鮮な間に自分が消費できる量と、通信販売の一回分の量が合わず(要するに、一回に送られてくる量が多すぎて)、結局は、その通販はそれほど長い期間を利用しないまま終えてしまいました。
もともと、それほどタマゴを消費する生活スタイルではなかったのでした。

でも、それ以来、タマゴにはこだわるようになってしまって(もともと、子供の頃はタマゴかけご飯が大好きでしたので、タマゴは好きだったのですが)、美味しそうなタマゴを見かけるとつい買ってみては(もちろん、それなりの価格範囲内のものですが…)、家についたら、まずひとつ割ってみて、生で食べるようになりました。

生のタマゴを舌の上にのせ、まず白身の味を感じます。次に、上顎と舌で黄身を潰して黄身の味を確かめます。舌の全体に黄身を行き渡らせるようにしてその味を確かめます。

この食べ方、正直言って、おすすめします。
「生のタマゴをそのまま食べるのは…」っていう方も少なくないのを知っていますが、タマゴかけご飯が食べられるのでしたら、大丈夫です。
買ってきたパックのタマゴのひとつを、試しにそうやって食べてみると、そのタマゴの素性が分かる気がします。

例えば、
スーパーで12個入パックで信じられないような破格の低価格の値段で売られているタマゴがあります。
買ってきてみてその一つを割ってみると、思いの外、白身の張りもよく、黄身も鮮やかな色で盛り上がっていて新鮮さを感じさせます。
そういうタマゴも、実際にあります。

では早速、とそれを口に含んでみると、見た目に反して、白身が水っぽく感じられ、「あれ?」っと思いながら、口の中で黄身を潰してみると、黄身のザラッとした感触も薄く、かつ何の味も感じられない…、そんな卵に出会うこともあります。

ああ、きっと運動もさせられず、もしかしたら鶏舎の光のコントロールで20時間を24時間だと思わされるようにして生んだタマゴなのかもしれないなー、なんて、そんな時には思います。もっと何か薬物的なものも使われてる−?なんて疑ってもしまいます。

もちろん、僕たち人間が買って食べるから、そうやって産まされるのは分かっているけれども……

今の僕の生活拠点は2箇所に分かれています。単身赴任で長年生活しているからです。

赴任先の県の北の方には、とても美味しいタマゴがあります。
でも、6個で300円以上します。
僕が普段食料品を購入するスーパーでは、12個入100円台のタマゴと、並んだ棚に売られています。
四捨五入すると、12個200円VS6個400円、個数を合わせれば、単価対決1対4です。1個100円でも食べられるものに、400円も払っている、ということです。ありえない贅沢です。

でも、これはやめられないんですよね−…

消費する卵の量が少ないことを言い訳に、今でも、4倍の値段のタマゴを買い続けています。

いつかきっと、このタマゴも自分の生活レベルでは買えなくなる日が来るのだろうな、と思います。
今はまだ仕事をしているので収入がありますが、数年後にはそれもなくなります。

でも、結局は「きりぎりす」体質の僕は、今はまだ、美味しいタマゴが食べられるのだから、今のうちに食べておこうと、奥久慈のタマゴを買ってしまいます。これが贅沢というのであれば、やめられない贅沢もある、って自分の来し方を悲しく思うだけです……


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