愛を見る ディズニー『美女と野獣』より

今日ディズニーランドに行って美女と野獣の乗り物に乗ったら、ベルが歌の中で「二人でいると何かが彼の中に見える」と言っていて、その言い回しが気に入ったので原曲を調べてみたところ、’But there’s something in him that I simply didn’t see’だった。おお。
直訳すると、「彼の中に何かがあるの、これまでの私が見えてなかった何かが」かな。それを潔く「何かが彼の中に”見える”」と訳したことによるこのニュアンスよ……

原曲タイトルは”Something There”で、もちろんその”Something”は”Love”。つまり「愛が彼の中に”見える”」ということ。
愛って見えるんや。
この歌詞の前に野獣の心の中を歌う「彼女が僕を見てそしてそっと触れてくれた 怯えても震えてもいない優しい眼差しで」というターンがあって。
ベルのまなざしの表情がこれまでとは違っている、ということに野獣が心を震わせているのだけど、一方ベルもそのとき野獣の中に見える何かを見ている。
凶暴で恐ろしい野獣ではなく、その奥にある”僕”の姿を、そして、そんな彼をまなざすと生まれてくる何かあたたかく甘やかで少し不安な感情、そしてきっと少しだけ気づいてる、”二人でいると”感じる、自分ばかりではなく”彼の中に”も…互いの中に存在し始めた”何か”の輪郭。

「何かが彼の中に見える」だけで、前後の文脈を拾いつつこんなにも意味を重ねられるなんて素晴らしい訳だ。

実際に愛する(愛し合う)人とまなざし合う瞬間って、その人を見ているようで、その顔の表面のさらに少し奥側で見つめあっている感覚があるような気がする。愛は自分の心の中にあらわれるものだと思ってきたけど、なるほど、相手の奥に見えてくる、という言い回しによって身体感覚的にしっくりくるところもたしかにあるなあ。
今度カラオケで歌おっと。

ところでこの歌、原題は”Something There”なわけだけど、日本語版だと「愛の芽生え」なのよ。
何でそういう『次回、城之内死す』みたいなことしちゃうんだろ…これ曲名と歌詞の訳者ちがいそう。