モルおじ(MOL-OG)

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ANOTHER LIFE ANOTHER

「では…菜花つくしさん。改めましてノーベル医学賞受賞おめでとうございます」 インタビュアーが私に対して質問をする。 「菜花さん。すごく勇気のいる手術だったかと思います。初めての手術の際の心境を教えていただけますか。」 「そう…ですね。もちろん緊張感はありましたがそれ以上にこれから彼がどうなっていくのか。そんな楽しみの方が強かったです。色々な意味で彼には感謝をしたいです」 そう。私は彼に感謝しなくてはならない。 私は小さい頃から彼が好きだった。 彼が野球を始めたのを

    • ANOTHER LIFE③

      〜SIDE C〜 あの日のあの選択は本当に合っていたのか。それはわからない。でも後悔はない。 アルバムの中の懐かしい写真を眺めながらそんな事を思っていた。自宅のテレビの横の飾り台には賞状や盾。記念品の数々が並んでいる。 その横には還暦を祝う子供たちや孫からのメッセージ。私は幸せだった。 時刻は正午を回ったところだ。 「おっと。もうこんな時間。そろそろ行かないと」 私はタクシーを拾ってある思い出の場所へ向かっている。幼馴染に会いに。 思い出の場所へ着く。あの出来事から

      • ANOTHER LIFE②

        〜SIDE B〜 「えー今のボールはどうですか?野々宮さん」 「そうですね。少しアウトコース厳しいところを狙いすぎましたかね。意識しすぎて外れてしまいましたね」 「なるほど。本日の解説は日米通算401勝。生きる伝説こと野々宮悠さんです」 僕も歳をとった。ありがたいことにプロ野球のアンタッチャブルレコードと言われた400勝を1つだけ超えて引退した。48歳までの実働30年間。長いようで短いプロ生活だった。 ただ、僕が新しく塗り替えた数々の記録は近いうちに全て抜かれるだろ

        • ANOTHER LIFE①

          〜SIDE A〜 「ドラマみたいに遡って本当のこと 話せたらいいけど そんなの無理だよね」 某シンガーソングライターの有名な曲のワンフレーズが脳内をリピートする。 今、私は人生の大きな分岐点に立たされている。 夢を追うのか愛を追うのか。私は選べずにいた。 「早く起きなさい!」 何だろうか。このひさしぶりに聞いた声の感覚。 「うみ!ちょっとうみちゃん!いつまで寝てるの?」 目の前には母がいる。…母!? 私は飛び起きる。 「お母さん?…なんで?」 私は状況が理解で

          不倫にまつわるエトセトラ⑩

          〜SIDE P〜 一連の爆破事件の容疑者宅を捜査中にレンタルボックスの鍵が見つかる。爆発現場のキッチンの向かいにある冷蔵庫の下に落ちていた。もしかすると被害者の旦那が爆発で倒れた時に落としたものかもしれない。何かヒントがあるのではと思って該当のレンタルボックスを開ける。 レンタルボックスの中にはゴルフ用品などの他に1冊のノートが見つかった。容疑者は一貫して容疑を否認しており新たな物的証拠がないか捜査中だ。 このノート…仕事に使われていたのか。ページを捲ると仕事の内容に関連

          不倫にまつわるエトセトラ⑩

          不倫にまつわるエトセトラ⑨

          〜SIDE F〜 世界で1番好きで嫌いな生き物。それが女だ。いつからそうなってしまったのだろうか。家に帰ると母親が見たこともない男と見たこともない行為をしていた。翌日、その光景を思い出し学校で体調が悪くなり保健室で寝ていた時だった。 誰もいない午後の時間。誰かが入ってきて僕を相手に昨日見た行為をする。僕の卒業相手は一回り以上歳上の保健の先生だった。 学校では真面目な顔で授業をしていた優等生のあの娘。同級生に馴染めずいつも浮いている地味な女。どいつもこいつもセックスの時は動物

          不倫にまつわるエトセトラ⑨

          不倫にまつわるエトセトラ⑧

          〜SIDE E〜 「どうしたの?」 妻が僕を心配した様子で声をかける。 「いや。大丈夫。今日は仕事がしんどくてね。早退したんだ。」 まだ夕方だったが急いで作業着を脱いでシャワーを浴びる。 作業着はいつも妻に洗ってもらっていたのだが今日は自分で洗うと言っていつものカゴに入れる。 熱いシャワーを浴びているのに震えが止まらない。 僕は今日人を殺してしまった。 数日前だろうか。事務のおばさんが 「イケメンのお客さんが来てる。」 と仕事中の僕に声をかけてきた。事務所に行くと確

          不倫にまつわるエトセトラ⑧

          不倫にまつわるエトセトラ⑦

          〜SIDE M〜 「失礼ですがお名前は?」 「田中誠です。」 「ご職業は?」 「バーテンダーです。見ての通り。」 店に私服の警察官が2人やってきた。 どうやら昨日近所で起こった爆破事件を調べているらしい。容姿の整った男の写真を見せられる。 「この方に見覚えは?」 「昔はよく来てました。最近はあまり見なくなりましたね」 じゃあこの人は? 今度は女性の写真だ。 「この人…今見せた人の奥さんですよね?最近は見ないですけど時々旦那さんとうちの店に来てましたよ」 「

          不倫にまつわるエトセトラ⑦

          不倫にまつわるエトセトラ⑥

          〜SIDE N〜 トピックス 関東地方 梅雨明けか? 異例の速さ 20XX年 6月5日 10:40 41歳ロッテ野々宮 ハーラートップの8勝目 20XX年 6月4日 23:45 女優 沢口海 自宅で死亡 自殺か 20XX年 6月5日 7:18 ○○県○○市の爆破事件 容疑者を逮捕 20XX年 6月5日 13:42 new! 20XX年6月3日に発生した○○県○○市の2件の爆破殺人事故において警察は容疑者を逮捕したと発表した。 被害者1人目は○○市に住む無職河本健太

          不倫にまつわるエトセトラ⑥

          不倫にまつわるエトセトラ⑤

          〜SIDE D〜 今日私は愛していた人を亡くした。 私が何をしたと言うのだろうか。全くもって身に覚えはなかった。 確かに最近の私は機嫌が良くなかった。もうすぐ父親になろうというのにその自覚が一向に見られない。夜は相変わらず飲み歩いているようだし昼間は外回りと言いながら何をしてるのかよくわからない。時々昼間に突然家に帰ってきたと思ったら私を性処理の道具として扱いまた仕事に行ってしまう。 若い頃は仕事と私に対して気遣いのできるいい男だった。あの頃の彼は一体どこへ行ってしまった

          不倫にまつわるエトセトラ⑤

          不倫にまつわるエトセトラ④

          〜SIDE C〜 美人で男に困らないのに何故かダメ男ばかり捕まえてしまう女 私はそんなラブコメ漫画の主人公のような女だ。 ギャンブル依存症 ニート DVこの世の全てのパターンのダメ男と私は恋愛経験をしてきたんじゃなかろうか。自分が好きになる男性とは必ず付き合えるのだが全てがどこかダメな人だった。 次こそはと地味で絶対にモテないであろう男を好きになり付き合い始めたがその男は既婚者だった。 流石の私も凹んで仕事を休みその日は昼から飲み歩いていた。最後に辿り着いたのがあのBA

          不倫にまつわるエトセトラ④

          不倫にまつわるエトセトラ③

          〜SIDE A〜 夕方のニュースでは高速の大きな事故と郊外の住宅の火災のニュースが流れている。僕はそれを見ながら笑い転げていた。 こんなにうまくいくとは。出来過ぎだ。僕は持っている。そう思うと笑いが止まらなかった。 大切な家族を失いもう何も怖いものは無かった。いずれ警察が僕を逮捕しに来るだろう。もういいんだ。僕の人生なんて終わったようなもんなんだから。 こうなることも予想して僕は会社を辞めた。重役は皆驚いていたが大丈夫だろう。 妻の異変には気づいていた。仕事が忙しくなか

          不倫にまつわるエトセトラ③

          不倫にまつわるエトセトラ②

          〜SIDE B〜 火遊びの代償は高くついた ほんの軽い気持ちだった。 妻が妊娠し僕にキツく当たるようになった。もちろん妻の事を充分に労っていた。よく行っていた飲み会も断り毎日早く帰っていた。 今日くらいストレスを発散したい。そんな風に思って妻がご両親と出産に向けた準備品を買いに行くため実家に帰ったタイミングで僕は久々に行きつけのBARに行ったのだ。 このBARは時々飲む時に使っていた。客も少ないしゆっくり一人で飲むにはちょうどいい落ち着いた店だ。 カウンターには先客が

          不倫にまつわるエトセトラ②

          不倫にまつわるエトセトラ①

          〜SIDE A〜 「奥様とは遊びです。申し訳ありませんでした。」 目の前にいる男が頭を下げている。その横にいる妻は下を向いた。不倫した男が言うありきたりなセリフ。某まとめサイトの不倫版でもしょっちゅう出てくるあのアレか。なんて聞きながら思っていた。妻も 「違うの。誤解なの」 とかよくあるテンプレートのようなセリフを吐いている。まだ何か話そうとしていたがどうせテンプレートの羅列だ。僕は言葉を遮って怒鳴る。 「冗談じゃない。遊びで僕の家庭は壊された。壊れた家庭はもう2度

          不倫にまつわるエトセトラ①

          コロナ陽性判定と夫婦の話

          「やっぱり思った通りだった…」 PCR検査の結果は陽性だった。思い当たる節がないわけではなかった。終わりの見えない感染症の流行だけでなく色々なことにストレスを溜めていた僕は仲のいい友達を誘って夜の繁華街に繰り出したのだ。 38℃の熱が出たのは昨日。幸い濃厚接触者に当たるのは妻だけだった。この流行以降、僕の仕事はほぼテレワークに移行した。そもそもPCを使った仕事のため会社に行かなくてもできる仕事なのだ。 陽性判定を受けた僕はそのままホテルでの療養となった。会社に連絡を入れる

          コロナ陽性判定と夫婦の話

          ありふれたLOVE STORY②

          まずはこちらを読んでからお願いしますhttps://note.com/kaibutsu_kk/n/n405a45bda77a 〜SIDE B〜 その日私は久しぶりに彼と会った。 意味もなくつるんでバカな話ばかりしている同級生よりも1人で黙々と色々な被写体にカメラを構える彼は凄く大人に見えた。 友人がきっかけで私は彼のファインダーの中に写ることができた。友人がきっかけで彼と話す機会が増えた。 彼の撮る私の写真は実物より美しく見える不思議な雰囲気があった。それは雑誌の表紙

          ありふれたLOVE STORY②