生活歴は、“これからの暮らし”をつくる材料にすぎない
介護は、利用者が“その人らしい生活”ができるように支援する仕事だ。
どうすれば、“その人らしい生活”を引き出せるのか。
それは、本人の話を聞くこと。
いままで、どんな生活を送ってきたのか?
何を大切にして生きてきたか?
何を避けてきたのか?
得意なことは?苦手なことは?
大切な人は?
等々。
聞いたことをふまえ、介護職は“その人らしい生活”のデッサンをし、本人と一緒につくりなおしていく。
それは、とても大切なことだ。
ただし、これまで送ってきた生活は、本当に心から望んで送ってきた生活なのか
という視点は重要です。
私たちが介護保険のサービスを提供している利用者は、“介護が必要な状態”というのが、“その人らしい生活”をつくる上での阻害要因となっている場合が多い。
なので、その阻害要因をなるべく取り除くよう働きかける。
しかし、そもそも、介護が必要になる前も、“その人らしい生活”をおくる上での様々な阻害要因があったのではないか。
私だって、今の生活において、本当は変えたいことがいっぱいある。
そして、“その人らしさ”は日々変化する。
誰かの、ほんの一言で、大きく変わることだってある。
介護職は、“その人らしい生活”の継続を支援します!
と、私も言ってきたが、
“その人らしい生活”という概念は脆いという認識が必要だ。
利用者と一緒につくっていくのは、“これからの暮らし”だ。
いままで送ってきた生活、全てに満足していたわけではないなら、そのなかから、これからの生活に持っていきたいものだけ選んでもらえばいい。
いままでの生活の継続が、目的になってはならない。
それを、ゴールとしてしまうと、
例えば、本人は本当は嫌がってるのに、
「〇〇さんは、書道の先生だったんですね!じゃあ、習字しましょうよ!」と提案し、
結果として本人に苦痛を与えることもある。
人は、不得意だったことが、より不得意になることより、
得意なことが、不得意になるほうがショックが大きいのだ。
もちろん、本人がやりたければどんどんその機会を作ったほうがいい。見極めが大事だ。
まとめると、
生活歴というのは、“これからの暮らし”をつくる材料にすぎない。
結果、その材料の数々をほとんど使わずにフルモデルチェンジの生活をつくり、幸せを手にしている利用者も目にしてきた。
もちろん、“これまで”より、“これから”が大事なのだ。
最後に、読んでくださったみなさんに問いたいことがある。
いまの皆さん自身は、どのように“これからの暮らし”をつくっていきたいですか?
それをつくるための阻害要因は何ですか?
大切にし続けたいものは何ですか?
自分の生活について深く考える積み重ねが、
介護実践においても役立つと考える。
私も、しっかり考えて、“自分らしい生活”になるべく近い生活を送れるよう行動していきたい。
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