ご高齢者を傷つけない排泄介助

生きていくうえで欠かせない排泄は、健康のバロメーターにもなる大切な行為です。しかし、羞恥心を伴うデリケートなことでもあるため、排泄介助(トイレ介助)では尊厳を傷つけない配慮が必要です。今回は、ご高齢者の自尊心を尊重しながら自立意欲を高める排泄介助(トイレ介助)のポイントを分かりやすくお伝えします。

排泄介助(トイレ介助)の基本的な手順

トイレでの排泄介助(一例)

①トイレに入り、ご高齢者には手すりをしっかりと握っていただきます。

②手すりを握って立ったままの状態で、介助者は(声をかけてから)後ろからズボンや下着を下ろします。

③ご高齢者は利き手で手すりを握り、介助者は前方からご高齢者の腰を支えながら両足の間に介助者の片足を入れ、(おじぎをするように)ゆっくりと便座に座っていただきます。

④座位が保てる場合は「終わったら呼んでください」と声をかけて介助者はいったん退室し、排泄が終わるまでドアやカーテンの外で待ちます。(鍵はかけず、何かあったらすぐに対応できるようにしましょう。)

排泄が終わった合図があったら介助者が再びトイレに入ります。ご高齢者に手すりをしっかりと握っていただき、介助者は腰を支えて少し浮かせます。前から後ろに向けてお尻を拭きます。(健康状態を把握するために、排泄物や皮膚の状態を素早くさりげなく観察しましょう。)

⑥介助者はズボンや下着を膝のあたりまで上げておきます。手すりを握った状態で、ご高齢者の腰を抱えて両足を介助者の足で支え、ズボンや下着を上げます。

排泄介助(トイレ介助)のポイント

プライバシーを確保する

介助が必要な場合でも、プライバシーを確保しやすいトイレでの排泄が理想的です。トイレに手すり(簡易型もあります)等を設置すると、自力でできる部分が増えて介助の負担を減らせます。
ポータブルトイレを使用する場合も、カーテンや衝立(ついたて)など仕切りを設けてプライバシーを保ちましょう。よりリラックスできるように、用を足している間はドアを閉めて外で待つなど配慮することも大切です。

転倒などの事故に注意する

動作が不安定な場合は座るまで見守り、転倒などの事故に注意します。トイレのドアは引き戸か外開きにする、段差を解消するなど安全な環境を整えることも大切です。
トイレの中と外の温度差が大きくならないように冬季はトイレの暖房に配慮します。もしも体調が悪くなったときのために、呼び鈴やブザーも備えておくとよいでしょう。

排泄のサイクルを把握する

尿意や便意を感じにくい方や認知症の方には、メモ等をとって排泄しやすい時間帯を把握しておき、早めにトイレ誘導します。また、「そわそわする」など排泄のサインに気づいたら、さりげなく声をかけましょう。
ご高齢者は、お腹の筋肉低下などのために便秘になりがちです。食事や運動の工夫に加えて、「なるべく朝食後にトイレに行く習慣をつける」「便意を感じた時に我慢しない(排泄最優先の原則)」ことも便秘予防に効果的といわれています。

言葉のかけ方や視線に気をつける

排泄物の量や臭いについて口にしないように気をつけ、介助中は楽しい会話を心がけましょう。
身体の異常を早期発見するために排泄物や皮膚の状態を観察することは大切ですが、ご高齢者に配慮してさりげなく観察するようにします。

急かしたり責めたりしない

排泄介助は介助する方にも体力的・精神的な負担がかかるため、ストレスを感じてしまうのも当然のことだと思います。しかし、介助されるご高齢者も羞恥心や屈辱感、絶望感など複雑な感情を抱えていることを理解し、自尊心を傷つけないように心がけたいものです。
嫌な表情を見せてしまうと、ご高齢者は「申し訳ない」という気持ちから飲食を控えたり、便意を我慢したりすることもあります。排泄を急かしたり失敗を責めたりせず、成功したことを一緒に喜ぶ姿勢が大切です。

おむつを安易に使用しない

トイレでの排泄が基本であることは言うまでもありませんが、ご本人の自信がない場合は、外出時・夜間などに尿取りパッドや失禁パンツ、紙おむつ等を上手に使い分けるのも自立を進める方法のひとつです。
ただし、おむつの安易な使用は「ご高齢者の尊厳を傷つける場合がある」「尿意や便意を感じにくくなる」「皮膚がかぶれやすくなる」など心身への悪影響もあります。おむつは最終的な手段と考え、できるだけ尿器や便器、ポータブルトイレ等を活用しましょう。失禁を予防・改善するための体操なども効果的です。

※情報引用元
自動排泄処理ロボットシルバーは介護における夜間の排泄処理の介護者の負担を軽減するために生まれました。
介護ロボット「シルバー」は、清潔で快適な排泄をお手伝いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?