排泄ケアの重要性

高齢になり、体力や運動能力の低下が加わると、排泄が難しくなったり、失禁をしてしまったりすることがあります。

排泄は生きていくためにとても大切なことですが、メンタル面においても、とてもデリケートな問題でもあります。

高齢者にとって、きちんと、できれば自分で排泄できることが自尊心や生きる気力につながります。

排泄ケアは高齢者にとって大切
排泄ケアは、「食事介助・入浴介助・排泄介助」という介護福祉法における「三大介護(介助)」の中のひとつに該当します。

排泄は生きるうえで欠かせない行為なので、重要なケアであることは間違いないのですが、高齢者の精神面でも大切なものです。それは、人間の尊厳を保つために必要なケアだからです。

また、日常の生活動作能力(ADL)を維持することで、高齢者の幅広い能力の維持・向上につながります。

排泄は、高齢者の自立、自立への意欲を促すことにもなる行為のひとつです。

高齢者の排泄行為が難しくなるのはなぜ?
高齢になると、これまで当たり前にできていたことが困難になり、衰えを感じることがあります。

排泄もそのひとつで、以下のような要因から失禁しやすくなります。
・膀胱の萎縮
・膀胱の弾力性の衰え
・膀胱支配神経が不安定になる
・膀胱内圧の異常
・骨盤底の衰え膀胱
・尿道の狭窄 など

要因や症状は人それぞれで、複合的な原因で生じることも多いものです。

ご本人もご家族も、失禁は年齢を重ねれば誰しもが起こりうる自然な現象だと受け止めることが大切です。

排泄が困難になると高齢者にどのような影響がある?
排泄ケアについて考えるときには、失禁や便秘に配慮する必要があります。

失禁は、ご本人だけでなくご家族にとってもストレスにつながる問題です。

また便秘は主に、腸の働きが低下することで起こりやすくなる症状です。

何日もお通じがない、ようやく出たけれど固くておしりが痛いなど、便秘の悩みも人それぞれです。

便秘になることの問題
自律神経の働きが乱れることも便秘の原因となりますが、逆に便秘によるストレスで、腸内環境が悪化して自律神経のバランスを崩すケースもあります。

また、便秘により腸内の悪玉菌が増加することも問題です。

悪玉菌は、悪臭を伴う有害物質を作り出します。これは、腸の中に便が長く留まることで腐敗して悪玉菌が増えるというメカニズムによるものです。

失禁による精神的な問題
尿失禁や便失禁は、ご本人が羞恥心にさいなまれるケースが多くあり、自尊心が傷つくことになりかねません。

さらに、自己嫌悪に陥ったり、自律性の損失にもつながったりすると、活動意欲が湧かなくなりQOL(生活の質)低下を招く恐れがあるため、周囲の十分な配慮とともに、適切な排泄ケアが必要です。

また、失禁があると、ご家族をはじめ周囲のストレスにもつながりやすいため、正しく排泄ケアを行い互いに気持ちよく生活が送れるような環境が望まれます。

排泄ケアを考えるうえで知っておきたいADLとQOLの関係
ADL(=Activities of Daily Living)とQOL(=Quality of life)は、いずれも介護の現場でよく見聞きすることばです。

ADL・QOLとは
ADLは「日常生活動作」を意味します。

日常生活を送るうえで欠かせない、排泄をはじめ、食事や入浴、更衣・整容、移動などの基本的な動作が該当します。

高齢者の身体活動のレベルや、障害の程度などを把握するためにも重要な評価指標です。

QOLは「生活の質」を意味することばで、高齢者の身体的な苦痛の軽減や、精神的・社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度などを指します。近年の看護や介護の現場では、QOLの向上が重要視されています。

ADLがQOLに与える影響
ADLの改善は、QOLの向上につながります。日常生活におけるさまざまな動作が自分でできる状態は、ご本人の活動意欲の向上に貢献するためです。

たとえば、さまざまな要因により「食べづらい」「歩きづらい」状態になると、食欲の低下や活動意欲の低下を引き起こします。

QOLが低下するとADLへの意欲が下がることとなり、精神的・身体的なさまざまな部分へ悪影響を及ぼすとともに、悪循環に陥ってしまいます。

反対に、ADLが向上してQOLが高まればリハビリなどへの意欲が増し、さらなるADL向上につながるといった好循環を生み出せるというわけです。

排泄ケアで気を付けておきたいこと

上述したとおり、高齢になると持病や筋力の低下により、失禁をしてしまったり、便秘になってしまったりするなど、排泄に関する悩みが増えてきます。

排泄は生きていくうえで最も大切な現象のひとつではありますが、元気な頃には自身で行ってきたものが、人の手を借りなければできなくなるということ、排泄は基本的に人に見られることがなく、とてもデリケートな問題であることなどから、自尊心が傷ついたり、排泄介助を受けたくないばかりに水分や食事を拒んでしまったりすることがあります。

デリケートな問題であることを十分理解したうえで、介助者には適切な排泄ケアが求められます。

ここでは、排泄ケアで重要な3つのポイントを紹介します。

①介助者は平常心を保つ
排泄介助を行う上で最も大切なのは、高齢者の自尊心を傷つけないことです。

介助する方が何気なく放つ言葉や、面倒くさそうな態度に大きなショックを受けられることもあります。

また、介助される高齢者は自尊心が傷つくだけでなく、介助者に対して申し訳ないという気持ちを持っておられることが多いものです。

排泄ケアでは、排泄物の処理や清拭のように介助者の腰などに負担がかかる行為も多いため、ついつい「しんどい」「(高齢者の体が)重い」「臭い」などという言葉が出てしまいがちですが、介助される高齢者の気持ちに配慮した態度が求められます。

②自分でできることは自身でしてもらう
優しい言葉がけは大切ですが、なんでも「大丈夫ですよ。お手伝いしますよ。」といった言葉や態度で接していると、「ではやってもらおう。」と、次第に介助者にすべて頼るようになることもあります。

年齢をかさねた高齢者にとって、便意をきちんと感じること、排泄のためにお手洗いに行くこと、下着をおろし、腹筋に力をこめたり、排泄後の処理を行ったりすることは、リハビリの一環にもなるため重要な行為です。

自立を促してADLを高めるためにも、できることは自身で行い、難しくなった部分のみをサポートするというスタンスで見守ることが重要です。

③排泄がスムーズに行えるような生活リズムを整える
排泄が困難になる主な原因としては、老化に伴う身体機能の低下が挙げられます。

ただ、普段の生活を整えることで排泄の問題が改善されるケースもあります。

生活リズムを整えるためのポイントは、次のとおりです。
・規則正しい生活を心がける
・適度な運動で体を動かす
・食事や飲み物に気を配る

会社勤めや学校に通っている世代は、毎日決まった時間に起床して、朝食を取り外出します。

このように普段のリズムが整っていると、体内時計も整って、腸も一定の動きを行います。

すると、毎日決まったタイミングで便意を催しやすくなります。ところが高齢になると時間の制約がなくなり、生活リズムが乱れる方が少なくありません。

体のリズムを整えることは、排泄のためだけでなく、健康を維持するためにも大切です。

また、適度な運動で体を動かすことにより、胃腸の働きが整います。

食欲増進にもつながり、食事をとることで胃腸の動きがさらに活発にもなります。

食事に関しては、食欲が湧くような食事内容にすること、調理方法に気を配って食べやすくすることも大切です。

また、高齢になるとのどの渇きを感じにくくなるため、特に水分摂取量には気を配り、適度な声かけを行って十分に水分を取ってもらうことも必要です。

※情報引用元

自動排泄処理ロボットシルバーは介護における夜間の排泄処理の介護者の負担を軽減するために生まれました。
介護ロボット「シルバー」は、清潔で快適な排泄をお手伝いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?