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【頂き物】(ヒロヒナ)Amusement park date?

弓月キリさん(@yudukikiri)からいただきました!!
上のイラストから思いついたお話だそうです!
資料がほぼほぼイラストしかないにも関わらず、私のイメージ通りにキャラを動かしてくれて嬉しかったです!!!ありがとうございましたー!!

1

 昼休み。うちの生徒会長である音辺が机に突っ伏して叫んだ。
「あー!! 遊びに行きたーい!」
 駄々っ子かよ。
「真昼ちゃん、ストレス溜まってる? きゃっ?」
「ヒナー! だってね、受験勉強もだけど、生徒会の仕事も忙しくて。ちょっとくらい気晴らししたいよ!」
 音辺が朝比奈に抱きついて甘えている。羨ま……ちげぇ。そうじゃない。
「ヒロ、僕たちも輪に加わりに行こー」
「おう」

 俺たちが音辺たちの席に近づいても、音辺は朝比奈に抱きついたまま鬱憤を晴らしていた。
「この際カラオケでもいいから! ヒナ、遊びに行こ「真昼ちゃん。今度の休みに皆でチューズランドに行こー」
「あ。久野くん」
 俺もいるからな。ちなみに、チューズランドは、ネズミがモチーフのチューズがマスコットとして有名なテーマパークのことだ。久しく行ってないな。何年ぶりだ?
「ユウくん、あたし達は受験生で「だからだよー。根詰めすぎても勉強の内容がちゃんと身につくのかなー?」ぐ……っ」
 ユウの言い分もわかる。いつもののんびりした口調で正論をぶつけられて音辺が言葉を詰まらせていた。
「まぁ、たまに息抜きをするくらいはいいんじゃないか?」
 俺もユウの援護をする。できなかった勉強は次の日に頑張ればいいだろ。
「夜宮くん……そうだね」
 遊びに行けるのもあってか、朝比奈は嬉しそうに相槌を打つけど、まだ緊張しているのか……ユウなら平気で話せているのに。音辺曰く『ヒナはユウくんのことを男だと見てないと思うよ』ってことらしいけど、男に見られても満足に話せないのは辛いぞ。そういえば、ユウに『そのツンツンした態度をやめれば話せると思うよー』って言われてたな……そんなにツンツンした態度を取っていたか? 俺。そんなつもりはなかったぞ……。
「ヒロー?」
「夜宮くん?」
「夜宮くん……具合、悪いの? 大丈夫?」
 物思いにふけっていて現実に戻ってきたら三人の心配そうな目が俺を見ていた。
「あ……わ、悪い。何?」
「時間は朝の10時で、いつもの駅前でいいかなー?」
「ああ。それでいいよ」
 当日の集合時間が決まったところで、音辺と朝比奈が音辺の携帯の画面を見て楽しそうに話している。
「真昼ちゃん、楽しみだね」
「楽しみだね、ヒナ! あたし、いっぱい行きたいところあるんだ」
「私も数年ぶりだからいっぱい行きたいところあるよ」
 休み時間が終わるチャイムが鳴ったので、それぞれ自分の席に戻る。

 皆で遊びに行くのは受験生ということもあって少ないからな。楽しみだ。

2

 チューズランドに行く日の午前9時半。俺は集合場所にいた。早すぎたな……。朝練で慣れているからなぁ。

 暇だから、あれこれ考えてしまう。

 俺も、もうすぐ引退か……。俺は朝比奈以外とは付き合うつもりがないから恋人を作らないんだけど、女子も男子もうるさいんだよなぁ……「受験生だぞ、俺ら」って言っても通じねぇし。でも、ブームみたいなものだからすぐに収まるだろ。収まって欲しいなぁ……。

「よ、夜宮くん?」
「あ、朝比奈…っ!」
 声をかけられた方を見ると朝比奈がいた。今日も可愛い……って、そうじゃねぇ。
「お、おはよう。夜宮くん」
「おはよう。朝比奈」
「夜宮くん、早いんだね」
「つい癖で早く来ちゃっただけだ」
「そ、そっか……」
 俺の馬鹿野郎! これじゃ会話を続けられないだろ。会話を再開するために言葉を必死で考えたけど、良い言葉が浮かぶわけもなく。だけど、この沈黙には耐えれそうにない。何か言わなくちゃと携帯を見ると9時45分だと時計が示していた。
「あ、朝比奈も早いよな? まだ15分前だぞ」
 無難に『早く来た』話題しか出てこなかった……。
「う、うん。遅れないように少し早めに出たの」
「そっか」
「あ。真昼ちゃんからメール……『10分位、遅れる』って」
「俺もユウからメールだ……ユウも遅れるみたいだな」

 二人で待つ時間は少しだけぎこちなくて長く感じた。二人が早く来て欲しいような、もう少しだけ遅れてほしいような複雑な気持ちを抱えたまま、俺たちは無言で二人が来るのを待っていた。

「ごめん! おまたせ! あれ? ユウくんは?」
「ユウも遅れるらしい。さっきメールが来た」
「そっか」
 10時10分に音辺が来て、音辺と朝比奈が今日のことについて話していたらユウが来た。
「遅いぞ、ユウ」
「寝坊しちゃった……皆ごめんねー」
「ユウくんも来たし、行こっか!」
「おー」
「うん」
「楽しみだねー」

 皆で話しながら電車に乗って向かう。窓を見て早く着かないか話すこと1時間。チューズランドの特徴的なネズミモチーフの建物が見えてきた。

3

「ねぇねぇ。Tシャツあるよー? チューズとクマタのモチーフが散りばめられてて可愛いよねー」
「チューズとチューナのヘアバンドもあるね」
 クマタはチューズの友達で、チューナはチューズのガールフレンドだっけか? リボンがトレードマークだったはずだ。こうして見ると『リボンのカチューシャ』にしか見えないけど……。
「今日の記念に買って、皆で着て回ろうよー」
「あたしはいいわよ」
「わ、私も」
「俺もいいぞ」
「決まりだねー。女の子達はチューナのカチューシャもつけたら可愛いんじゃないかなー?」
「そう?」
「わ、私はつけなくていいかな」
「えー。ヒナちゃんもつけた方が可愛いよー。ね? ヒロもそう思うよねー?」
「え、お、おう」
 可愛いに決まってるだろ!
「ヒナ、あたしもつけるから、一緒につけようよ!」
「真昼ちゃん。うんっ」
 それぞれ会計を済ませて、着ているTシャツの上から買ったTシャツを着る。男女で色違いなんだな……うん。音辺とパンフレットを見ているチューナのカチューシャをつけている朝比奈が可愛い……って、待て。
「ユウ、お前、何、俺にチューナのカチューシャをつけようとしているんだよ」
「あ。バレちゃったー」
「わざわざ買ったのかよ。それに、どうせなら、チューズのカチューシャが……って、お前、しれっとつけているのを寄越せ」
「えー」
「『えー』じゃねぇ。普段ならお前の方がチューナのカチューシャつけたがるだろ。イタズラ目的なのはわかっているんだからなって、よく見たら普通のリボンのカチューシャかよ。持参か? ユウ、お前。初めからそのつもりだったのか!」
「全部バレちゃったー」
「はぁ……「あー! 取られたー!」これなら着けてやるよ」
「ユウくんも夜宮くんも何してるのよー。早く行きましょ!」
「久野くんも、もう一つ、チューズのカチューシャを買ってつける……?」
「うん。そうするねー。買ってくるから、ちょっと待っててー」

「「はぁ……」」

 音辺と二人揃って疲れたようなため息をついた。仲が良いのはいいことだと思うけど、音辺も苦労しているんだな……。

 その後、俺達はパレードの時間になるまで遊び回って、広場まで戻ってきた。
「パレードを見たら帰ろっか!」
「たくさん遊んだねー」
「楽しかったね」
 高校を卒業してからも、こうして皆で遊べるんだろうか……朝比奈と一緒の大学に行く勉強はしているけど、朝比奈と同じ大学でも話せるのか? 俺に対してまだ緊張している朝比奈のことを考えると難しいかな……。
「よ、夜宮くん? 疲れちゃった?」
 パレードを見ながら物思いにふけっていたら心配そうな顔をした朝比奈が声をかけてくれた。
「悪い。大丈夫だ」
 ありがとうという素直な言葉は相変わらず言えないままだけど、優しい朝比奈と付き合えたら俺の素直な言葉で感謝の気持ちをたくさん伝えたい。

fin.

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