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白トラ参11 白い赤ちゃんへびに遭遇する 続き

 道の片側は段々畑の丸石が上手く積み重ねられた古い石垣になっており、雑草が殆ど取り除かれている。大変手入れの行き届いた状態。
 その反対側は、よその民家の土壁があった。瓦を積み重ね、土で固めた作りになっている。ところどころ土が剥がれ落ちた土壁の下には、梅雨時や雨が降った時だけ畑からしみだしてくる水が流れる細く浅い溝があった。
 土壁と溝の間に反対側と同じような作りの石垣があった。こちら側の石垣は殆ど手入れがなされておらず、湿りっ気たっぷりの青くさ~い雑草の葉っぱという葉っぱが無数に覆い重なり、溝が沢山の葉っぱでほぼ見えない状態になっていた。

 その田舎道は下り坂、小高い場所から市内を緩やかに見下ろせる感じで、空気の層で遠くに見える市内が少しだけかすんで見える。

 とぼとぼ歩いて何となくその石垣の青くさい葉っぱに目が行った。すると、長さ20cmもなさそうな白い蛇が居た。『赤ちゃんへび』だと思う。

 臆病で泣き虫でどうしようもなかった僕はその白い赤ちゃんへびを素手で触るという思考にならない。しかし、何か棒切れでそのへびをつっつく思考にもならない。

 だから、せめて観察した。

 その白い赤ちゃんへびは動かない。しかし呼吸をしている雰囲気はある。野イチゴの赤い粒々を連想させ、野イチゴの赤より深みのあるつぶらな瞳がぱっちり開いて、くもり無き眼(まなこ)で僕と見つめ合う。口元の小さな穴から二股に分かれた細いピンクの舌を時折見せたりする。
 生きている!確かに生きている。生き物としてそこにそいつは居るのだ。

『なるほど、体が縦一文字になって微動だにしないこと以外、他の蛇と変わらないしぐさだなぁ』

 僕の顔と白い赤ちゃんへび、一番接近してその距離10cmだろうか。

 ウロコというウロコ一枚一枚が白というよりプラチナ感漂う光沢を放ち、ウロコ一枚一枚の曲線を描く端っこはわずか色味がピンクがかった様になっている。この白い蛇も幼少期のようだった。

 攻撃的な様子も無いことから安心して相対することが出来る。僕と白へびはほぼ真正面で向き合っている。20秒だろうか30秒だっただろうか、ジッと向き合った。が、何の変化もないので目をそらし何となく空を見る。そして目をそらしてから一秒も経たないうちに同じ所に視線を戻した。
 そしたら‥

 つづく