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白トラ3.7.2『予兆』

■前のエピソード》

 お話に僕が東京生活で行きつけだった床屋の社長とその社長の専属アシスタントの二人が登場する。白へびは彼等の旅に便乗させてもらっている。お話のなかで彼等を指して『社長』と『床アシ』と表現することにする。

 長崎市内にて、ちょっと前までダイエイだったという建物をやり替えた新しいホテルにチェックイン後、「折角なので地元の若い女の子とも交流を持ちましょう」ということで、ガールズバーに遊びに行った。
 まぁ男3人旅なんてそんなもんだ。

 この白へびをリアルに知る人は、「ガールズバーとか行くんだ!」と驚くかもしれない。付き合い程度には行くということだ。

 さて次の日、予約した喫茶店は長崎の川棚という場所にある。お昼過ぎ、13時に予約してあった。

 ホテルを出て長崎市内から移動を入れても十分13時に間に合うので、市内観光していくことにした。

 とりあえず、かの有名な『グラバー園』に行ってみた。


 グラバー園に入場するとき、驚いた!チケットのデザインがモロにお札を模したものになっていたからだ。何というか潔い(いさぎよい)。
 受付で思わず口走ってしまう、「何このデザイン‥、さすがフリーメーソン!気合入ってんな!」

 今やフリーメーソンも周知され、秘密結社でもなんでも無くなった。ただのお茶会倶楽部だ。ライオンズクラブやロータリークラブと似たようなものだろうか。

『フリーメーソンロッジの門』と書いてあった

 ひとしきり園内をブラブラしていると地元の中学生だという制服姿の子たちが班ごとにオッサン3人それぞれに話しかけて来た。

 聞くと、平和学習と題して一般の人から平和実現へのメッセージを集めているという。葉っぱのような形に切り出された紙を差し出してくる。これにメッセージを書いてくれというのである。

 僕はこう書いた

『全員がその気になったら今すぐ実現出来る』と。

 中学生の女の子が去り際に折り鶴を一つ僕に手渡して行った。なんだろう‥、ちょっとだけ嬉しく感じた。『ほっこり』とはこういうことをいうのだろうか。

 そろそろ川棚(かわたな)へ向けて動き始めよう。ということで、グラバー園をあとにする。

 他に有名なものがあるとすると、パッと目に入ったのはこれだ。

 大浦天主堂。時間に余裕がなくなってきたことと入場料の高さがあいまって、ここに寄るのはやめた。

 この真後ろの方向にある、びわの売店に寄った。長崎県はびわの生産が盛んらしいのだ。

白へび
「びわの実は買えますか?」
店員
「あぁ~シーズンが終わっちゃったなぁ~」
白へび
「びわの種に興味があるんです」
店員
「NHKでやってたアレかな?」
白へび
「テレビと無縁な生活をしてるんでちょっとピンと来ませんが、NHKがどんなことを放送したんですか?」
店員
「びわの種で腫瘍(しゅよう)が消えるとか。やくじりょうほう的なことから私ら何にも言えないんだけど‥、まぁ、そうなんですよねぇ~」

 薬事法(やくじほう)って発音したか薬機法(やっきほう)と発音したかよく覚えてないけど、何かの法律のために、真実を口に出来ないようだった

 白へび自身はNHKの放送は敵情視察程度にしか見ない。したがって、全く別筋からびわの種の効能について随分前に知りえていた。
 いずれにせよ、びわ業者が遠まわしに認める発言をしたのだ。間違いないんだろう

 折角来たので、『びわゼリー』とか『びわの種茶』とかをお土産にした。催眠術の先生、賢者αへ、そして自分と田舎の父へのお土産にした。

 びわの種茶を飲むだけでも凄い効果がえられそうな気がしたのだ。

 さて、横浜中華街と比較にならないほどこじんまりとした中華街でちゃんぽんを頂き、すぐさま川棚へ向けて車を走らせる。

 昨日までの天気が嘘のように晴れ渡る。

 川棚の予約してあった喫茶店に到着した。その喫茶店とは『四次元パーラーあんでるせん』のことである。
 2023年7月11日(火)、話でしか聞いたことのなかった『あんでるせん』に自分がいる

白へび
「何時までやるんでしょうね?」
床アシ
「2時間くらいだと思います」
白へび
「そうだよね、4時間も5時間もやらないよね」

 帰りの新幹線を何時にとるか、アプリで席を確保しておく。どちらにせよ選べる便の選択肢はほとんどない。それでもちょっと気になった。

 建物一階の待合室的な所で13時になるまで待つのだが、我々が一番乗りだったらしい。他に待つ者が居なかった。ワンチャン我々だけの回になったりするんだろうか?

 しばらくすると、一人、二人とお客らしき人々が集まって来る。向かいのバスステーション風の建物のなかにもキャリーケースを持ったそれっぽい団体の人達で一時にぎわった。

「あの人たちも同じ目的で来てるみたいですね」

 一階の待合室は、丸いテーブルに3つしか椅子がない。そこにい合わせた他のお客さんと時間がくるまでお話をする。

 同席する人の中に、初老のやや若々しいというべきか、やや個性的な、それでいて品よくまとまったファッションの小柄な女性がいた。聞くとその人は今回の参加が4回目だという。

 以前、保江先生があんでるせんを訪れた後、帰りに高速道路をドライビング中、空間把握能力(くうかんはあくのうりょく)が超絶に冴(さ)えわたるという経験をしたという話を思い出した。

 そこで、その人に話を聞いてみた。

白へび
「ショーを体験してその後、ご自身に何か変化は起きてますか?」
初老の若々しい女性
「起きてますよ」
白へび
「ショーを見た直後には何らかの変化をすぐに感じられたということでしょうか?」
初老の若々しい女性
「う~ん‥何がっていうより‥、でも何となく自分自身の変化は感じるね」
白へび
「何らかの変化を感んじてらっしゃるんですねぇ」
※産業カウンセラー養成講座で勉強中の傾聴をここでも少し意識している。

 『何が』『どのように』というはっきりとした聞き方は叶わなかったが、何らかの実感はあるといったようなニュアンスだった。

 ここで社長が女性に、マスターの息子さんのことについて少しお話した。

社長
「マスターの息子さんに昨日会ってきました」
初老の若々しい女性
「え!!マスターに息子がいたんですかぁ!?」
社長
「ええ。床屋やってて、昨日床屋の集まりが佐賀であって、僕たちも床屋で、それでお会いしてきました」
初老の若々しい女性
「あら~、マスターに息子が居たってことがまず驚きだわ~」
社長
「カットしてる最中にハサミが曲がっちゃうことは無いって言ってました」

 などと話しているうちに13時5分前くらいになり、あんでるせんの一階にも入り口付近にも目の前のバスステーションにも、『多分あんでるせんに行くんだろうな』という感じの人達でちょっとにぎわった。そして、圧倒的大多数が女性だった。
 やっぱ、男はこういうのは興味があまり無いんだろうか‥?

 

 

 さて、13時を迎えるころ店内に案内される。2階の部屋がお店になっているようだ。店に入るなり早速、予約者の名簿を確認され、整理券を渡される。ショーで使うので整理券にかかれた番号を覚えておくようアナウンスされ、間もなく整理券は回収される。

 僕は何も知らずに参加している。超能力ショーが見られるということ以外何も知らない。何時に終わるのかすら知らない。

 ここから、ショー以外の所も含め超絶に『え?そういう風にするのか‥!?』といったようなことが立て続けに展開する。

ショーが始まる前の様子。
帽子をかぶった人の真ん前
黒っぽいカウンターのすぐ奥にマスターが立つ。

 店内にキャリーケースを持って10人ほどの団体が入って来た。お店側はそれを嫌がった。ホールを担当するおばさんがキャリーケースを一階待合室に置くよう促すと、今度は客が嫌がった。
 待合室は開け放たれていて、外気温と一致しており、鍵も何も、キャリーケースを管理出来る様子では一切ない。

 出来ることなら、大きなキャリーケースは持って行かない配慮をお店にしてあげても良さそうだ。

 ショーは名簿と整理券によって、お客さんの席順はほぼ決まっており、1~6の人はカウンター席になっている。その他の人たちはカウンター席の後ろにひな壇の様に並んで、ぎゅうぎゅうに寄り合って延々立ち見となる。

 整理券の番号から察するに、おそらくお客さんは全部で26~7人ほどだったと思われる。今回4回目だという女性が毎回上限30人くらいでやっているようなこと言っていた。

 何でひな壇状になるのか最初分からなかった。ショーが始まると合点がいった。確実に参加者全員がマスターの手元を見られるようにするというお店側の優しい配慮らしいのだ。実際には自分の前に立っている人の重心が右に傾いたり左に傾いたりするので、やや見えにくい時もある。白へびは、その中では背が高い部類だったので一番後ろの席になった。立ち見席の一番後ろは椅子の上に立つスタイルとテーブルの上に立つスタイルとがあった。立ち見の小柄な女性二人はテーブルの上に立たされ、天井に両手が余裕で届く状態になった。

 こじんまりとした店内の一部に参加者が集結すると、とたんにお店が広く感じる。

 ひな壇が完成すると、間もなくマスターがカウンターに登場する。

 そこから、延々と超能力ショーが展開する。マジックも含まれてるのか‥?でもそんなことはどうでもよくなる。とにかく不思議ぃ~なことがマスターの手元で次々に起こるからだ。

 そういえば最初に配られた整理券の番号。この番号は席順を決める役割の他に、マスターが客いじりをするための番号でもあった。

 カウンターにいる人だけが優遇されるわけではない。いや、カウンター席の予約はもの凄く大変なことなのだそうで、もの凄く大変な思いをしてまでカウンター席を獲得した人はやはり優遇状態になってしまうのだ。マスターも『カウンター席は特別』と表現していた。

 しかし、整理券の番号があるお陰で、誰一人として置いてけぼりを食らわないシステムになっている。「〇〇番のひと~?」と呼ばれた人が、その時の主役になるのだ。ひな壇の立ち見席しか予約できなかったとしてもあまり関係ないのだ。

 

 

 ショーが始まって1時間半ほど経過したころだろうか、マスターが妙なことを言い出した。

「今日はね、大きな宿命を背負った人が来ています。難しことはありません、ただやることをやれば良いのです。人生の半ば辺りにその宿命がおとずれます。難しいことはありません。ただやるべきことをやって下さい。

 今日は大きな宿命を持った人が一人来ています」

白へび(心で思う)
『オレのことだ、やっぱマスターは只者じゃない』

 言っている内容が内容なだけに会場が少しどよめいた。

 マスターがこのセリフを言い終わる瞬間、タダの一瞬だけ『チラッ』と僕に目を合わせた。それまで一度も僕とマスターは目が合って無い。後にも先にもその一瞬だけだった。

 『目が合った』という話をすると、大抵アイドルと目が合ったみたいな話でチャカし勘違いで片づけられてしまう。しかし、そんなレベルじゃ確かになかった。

 その後、整理券の僕の番号が呼ばれたときは、他のお客さんに行う対し方とまったく同じだった。驚きと笑いとマカ不思議な現象を提供してくれる。

 ショーが始まって2時間以上経っただろうか、マスターが言う
「今日は大きな宿命を背負った人がきています、宿命は半ばで来ると言いました。〇〇番の人!」

 『え?!‥宿命ってそれぇ??』と思うが、なんとなくさっきの雰囲気と違う感じで言う。

 当てられた人はそれまでの他のお客さんに行ったこととはやや系統の違うことが行われた。

 当てられたお客に絵を描かせ、ショーが始まるより前に予(あらかじ)めマスターが描いておいた絵と照らし合わせて、内容を当てるというようなモノだった。

 『え?これが大きな宿命??』

マスター
「さっき宿命を背負った人がいると言いました。始まって中ごろでその時が来ると言いました。さあ、あなたですよ~」

『やっぱりなんとなく雰囲気が違うなぁさっきと‥』

 何かをごまかしているんだろうか。

 ショーが始まって3時間ほど経過するころ、5分の休憩時間になった。トイレは店内の一人用小さなトイレが一つだけ。向かいのバスステーションに公共トイレがほんの数人分ある。これらを併用する。結局、5分以上10分未満くらいでショーは再開されたと思う。この5分程度の休憩のうちに、トイレに行き、足のマッサージを入念に行っておいた。

 立ち見の自分としては、正直もう限界だった。
『もういいよ、終わりにしてくれよ。足がヤバいよ』
 内心そんな気持ちなのだが、非情にもショーは続く。

 後半始まってマスターが言う
「コロナ前はね6時間以上のショーをやってました。飛行機の時間を気にする人は途中でもやむを得ず帰られる方もおられました。
 今はね時短ですから、あと1時間くらいですからね~、ご安心くださ~い」

 結局その後、2時間近くやった。

 もうお腹一杯だった。もう二度と来るか。でもショーは本当に面白かった。瞬(まばた)きする暇もなかった。それにしても不思議なのは、同じ姿勢を延々続けさせられたにもかかわらず、ひな壇に棒立ちしていたことが原因と思わしき腰の不調が一切起こらなかったことだ。
 絶対腰か足を痛めただろうな~と思っていたが、そうでも無かった。これは不思議だった。僕だけだろうか‥。
 次に来るときは、カウンター席がとれた時だけにしよう。

 ショーが終わると、マスターが普段から曲げておいた金(多分普通の素材)のスプーンと銀(多分普通の素材)のフォークをそれぞれ300円で買える物販が行われる。それとマスターはやや手先が器用らしく、ご自分で作った平面的な木の彫り物も売っている。

 白へびは、金のスプーンと銀のフォークとアマビエの彫り物を購入した。

 物販を何か一つでも購入すると、ハグまでは行かないが、マスターが購入者に何らかエネルギーを送るかのようなしぐさをしてくれる。

 ショーが始まる前に今回4回目だという女性が、ショーに参加する度に何かの変化を感じているという話があったが、このエネルギーハグが何か関係しているのかもしれない。
 分からないけどね。

 物販はマスターが一人一人順に対応する。なので、身支度などで出遅れると、番が来るまでずっと待つことになる。ショーが始まって物販で番が回って帰路に着くまでの所要時間は結局5時間半ほどになった。これを時短と呼ぶんだろうか??


 帰り、ドライバーの床アシが車をとりに行っている間、社長と話した。

白へび
「『今日は大きな宿命背負った人が来ています』ってマスターが言ってたじゃないですか?あれ、オレのことだと思います」
社長
「なんでまた」
白へび
「あの話の時だけ、長いショーの中でマスターが一回だけ、一瞬だけ僕とバッチリ目を合わせたんです。あの時だけです」
社長
「ほう~」

 

 その後帰路に着くが、ここからが悩ましかった。

 一つ前のエピソードのとおり、前日までに九州地方では大雨が降り続いていた。我々が訪れている間、運よくほとんど天候が崩れることが無かった。

 帰りは行きと同様、未だ通行止めの道や高速道路区間があるので、基本来た道を帰る。

 行きに通行止めになっていたにもかかわらず強行突破した山道は解除になっていたが、相変わらず道路上が川になっている箇所が散見された。行きよりは危ない橋という感じではない。

 車の中で社長が床アシに聞いた。

社長
「ショーの途中で、今日は大きな宿命を背負った人が来ていますって言ってたじゃん?
 あれ誰のことだと思った?」
床アシ
「オレのことだと思いました!」
白へび
「えぇー!そうなんだぁ!そうかもしれないね(笑」
やっぱ勘違いかな~。

 途中高速道路が通行可能だった。高速道路は途中通行止めになっている区間があるので、ある程度の距離を稼いだのち途中で絶対におりなければならない。
 すると、出口付近で1km以上の渋滞になっていた。
 全然進まない。
 僕の新幹線の時間を気にしてドライバーの床アシが一度は並んだ列から出て出口に向かう車の長蛇の列を横目に出口近くまで移動し、我々の乗った多摩ナンバーの車は半ば無理に他の車の間に入れてもらった。
 ようするに他のドライバーに迷惑をかけた。

 その後、その日最終の博多駅発の新幹線に本当にギリギリ滑り込みで間に合った。本当に奇跡だった。

 旅に便乗させて下さった東京の友達へ挨拶もそこそこにホームにBダッシュした。

 これが、『飛び乗る』というやつだろうか。初めて新幹線に飛び乗る経験をした。

 とりあえず、あんでるせんの超能力ショーを経験した後に何か凄い経験をしたとすると、最終便の新幹線に飛び乗れたという人生初の経験が出来たことくらいだろうか。

 これはこれで人生初のエキサイティングだった。

 この二週間後、導かれしエピソードに繋がる節を感じることが、あったのだ


フォークは普段指輪のスタンドとして使うことが出来るとのこと。
白へびは水晶のブレスレットとかをなんとなくひっかけてみている。
何か充電されているかも知れない。

 つづく

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