カイ書林 Webマガ Vol 14 No12

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【好評発売中】

  1. 澤村匡史著:循環器救急・集中治療の高価値医療 日本の高価値医療⑧

  2. 和足孝之・坂口公太編集:医療現場に必要なリーダーシップ・スキル ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.19

  3. 筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18

  4. 杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

  5. 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

  6. 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

  7. 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

  8. 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

  9. 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

  10. 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima (ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)


■2023年度 第5回Choosing Wisely Japan オンライン・レクチャーが開催されました。

「救急領域におけるChoosing Wisely」
花木 奈央 先生
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学教室 特任助教
NPO 法人 総合救急医学研究会 (EMA) 理事

12 月2 日(土)14:00 ~ 15:30
方法:オンライン(Zoom)講演と質疑応答

Choosing Wisely(賢明な選択)は、医療者と患者が対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデン ス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)を「賢明に 選択」することをめざす、国際的なキャンペーン活動です。
Choosing Wisely Japan は、日本でChoosing Wisely を推進するため、2016 年より活動しています。
今回のセミナーでは、「救急領域におけるChoosing Wisely」と題して、Choosing Wisely の観点から花木奈央先生が講演しました。
この記録は、Choosing Wisely Japan会員の皆様にお送りします。

*2024年度の第6回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャーは、次のように開催されます。詳細は次号でお知らせします。

『ビッグデータから見えてくるわが国の医療ー持続可能性の観点から』
康永秀生先生(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座))
2月4日(土)14:00 ~ 15:30
https://choosingwisely.jp/


■全国ジェネラリストリポート


『診断の陰陽とその統合』

津山中央病院 
総合内科・感染症内科部長、卒後臨床研修センター長 藤田浩二

コインに裏と表があり、それらを分離させることが不可能なように、物事には必ず陰陽の両極が同時に存在する。私達が日々行っている『診断』にも陰陽の両局面が存在する。
正しい診断に導くための診断学と、『これをやれば確実にエラーする』と言うしくじりパターンを学ぶための誤診学である。一般的に前者を使いこなすものは華麗な診断を速やかに行い華やかである。一方で、後者は人の感情、行動心理を理解した上で向き合う地味でめんどうくさい領域である。
しかしこれらの両立が極めて重要である。ここで、元メジャーリガーのイチロー選手が4000本安打を達成した際に残した名言を紹介したい。『それ(打ち損じた8000打席)と常に向き合ってきたこと、誇れるとしたらそこ…』。
つまり、彼はヒットの打ち方を極めると同時に、打ち損じ方も徹底的に極めたのである。誰よりも陰陽の両極に向き合い統合してきたことがわかる。陰を忌み嫌う必要は全くない。陰陽は善悪ではなくどちらも成長に向かう極である。
私達も教育者として、陽としての『診断学(ヒットの打ち方)』と、陰としての『しくじり診断学(打ち損じ方)』の両極をバランスよく医療現場で提供することを常に意識している。
最後に皆さんに質問して本文を終わりたい。『過去の成功した貴方としくじった貴方に、それぞれ1度だけタイムマシンを使って一言だけ声をかけに行くことが出来るとしたら、いつ、どの様に声掛けするだろうか?』

■マンスリー・ジャーナルクラブ

冠動脈バイパス術における術前の高齢虚弱状態の有無と術後死亡率の関連について

新道 悠
マウントサイナイ病院 老年医学&緩和ケアフェロー/米国内科専門医

Kochar A, Deo SV, Charest B, et al. Preoperative frailty and adverse 
outcomes following coronary artery bypass grafting surgery in US veterans. J Am Geriatr Soc. 2023; 71(9):2736‐2747

内容の要旨:米国中の退役軍人病院(40施設)において2016年から2020年にかけて冠動脈バイパス術を受けた13,554名(年齢中央値69歳、1.4%が女性、79.4%が白人、55%が糖尿病、44%が過去の虚血性心疾患、37%が慢性腎不全、23%が心不全あり)を、退役軍人虚弱インデックス(VA-FI)を使用して、術前時に虚弱状態なし(Non-Frail)の患者さんと、術前時に前虚弱状態(Pre-Frail)または虚弱状態(Frail)の患者さんにおいて、術後の死亡率を比較した観察研究です(コホート)。退役軍人虚弱インデックスVeterans Affair-Frailty Index(VA-FI)は、複数存在する虚弱インデックス(Frailty index)の中でも、心血管系イベントの相関が過去に示されているので今回の研究で採用されました。
結果:調査の対象となった患者さんのうち、31%の患者さんが前虚弱状態(pre-frail) 47% が虚弱状態(frail)に分類され、前虚弱状態(pre-frail)の患者さんでは術直後の死亡率上昇は認められないものの、5年目のフォローアップでは有意な死亡率上昇が認められました(累積死亡率16.8%, HR: 1.20 (1.08-1.34), P<0.001)。虚弱状態(Frail)の患者さんでも、有意差は認められないものの術後90日から累積死亡率が徐々に上昇し、5年目のフォローアップでは有意な累積死亡率の上昇が認められています(24.8% HR: 1.75, 95% CI:1.54-2.00)。
コメント:老年医学の中で、高齢者の虚弱状態(Frailty)は入院後の死亡率や術後の合併症などの関連が懸念されており、メジャーなトピックの一つです。実際に高齢虚弱状態にある患者さんが、どのような手術に対してどの程度リスクが上昇するのかは、現在も多くの研究でデータが集められています。今回の研究もその流れの中で、重要なデータの一つです。 


■カイ書林図書館

今年の漢字:「連続体」

弊社が主催する、ジェネラリスト教育コンソーシアムで、今年はケアの連続体(Continuum of Care)という用語がよく聞かれるようになりました。
また卒前卒後の医学・看護教育の勉強会でも卒前・卒後教育の連続体が重視されるになりました。
出版社も歴史と現在を結び付けて、展望に向けた連続体でありたいと思います。
創業16年目に向けて、弊社は、歴史に学び、現状を考え、そして課題に挑む連続体を目指します。

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