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写真加工名人が加工しなかった写真

James Fridmanという、写真加工の名人(迷人)がいる。Twitterアカウントはfjamie013だ。彼には「この写真を加工してくれ」という依頼が多数舞い込む。彼は快くそれを引き受け、「どうぞ」と加工済みの写真をTwitterに載せてくれる。いくつか見てみよう。

遊園地での彼女とのツーショット写真だが、後ろに男の人が写りこんでしまっている。「彼女の後ろの男を取り除いてくれない?」との依頼に「もちろん」と出してきたのが右の写真。まごうことなく、「彼女の後ろの男」を取り除いている。「手が残ってる」と思う人は、手の根本を見てみよう。骨が残っている。芸が細かい。

「私の彼はモハメド・アリの大ファンなの!彼をもっとボクサーっぽくできない?」「もちろん」←違うそのボクサーじゃない

そんな感じで、いつも「斜め上」の加工をすることで大人気の彼のもとに、ある写真が投稿された。投稿したのはCaseyという女性。物心ついた時からずっとひどいニキビに悩まされていたという彼女、あるハイキングで撮った写真が気にいっているという。彼女の依頼はこうだ。「この写真でハイキングの良い思い出を思い出したいの、私のニキビではなく。私の顔からニキビを取ってくれない?」それに対するJamesの回答は・・・

彼の腕をもってすれば、彼女のニキビを写真から取り去って「きれいな」肌にすることなんて簡単だったはずだ。しかし、彼は全く写真を加工しなかった。その代わり彼は「過去を変えようとせず、未来を変えよう。そうすれば過去のつらい経験はきっとたいしたことなくなるから」というメッセージを写真に添えた。「あなたがニキビをお化粧で隠さなかったのは賢明だし、勇気があることだ。ちゃんと皮膚科に行ってケアすれば、あなたのニキビはきっとよくなるよ」と。

彼のTwitterアカウントを見ればわかる通り、Jamesのコメントはいつも一言二言、「Sure」とか「Yup」とか、せいぜい「Fixed it」とか、そんなものだ。しかし、この写真にだけは長文のコメントを載せた。

この投稿に、多くのコメントが寄せられた。多くは「感動した!」のような賞賛のコメントだったが「それは彼女が決めることだ(余計なお世話だ)」というコメントもあった。これは彼のパフォーマンスだと。

もちろんそういう、パフォーマンス的な側面もあったとは思う。彼は単にニキビを消したバージョンを彼女に送っておしまいにもできたはずだ(消したバージョンは別に作って彼女に送ったという噂もある)。しかし、僕はきっと批判も来るとわかっていて、なお「この写真を加工しない」という判断をした彼の勇気をたたえたい。



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