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嘔吐禁止という空振りの主張

夜歩いていると、コンビニの前の地面に「嘔吐禁止」と書かれたシールが貼られていた。

飲屋街にあるコンビニ。おそらく、店主が貼ったのだろう。気持ちはわかるがこのシールの効果は果たしてどのくらいあるのだろうか。

■「嘔吐歓迎」だとは思っていない

お酒を飲み過ぎてそこに吐いてしまう人は、そこがバケツでも、公衆トイレでも、自分の家でもないことを知ってるだろう。だが、どうしても我慢できず嘔吐してしまうのだ。その場所が「嘔吐歓迎」されていると勘違いして、皆でオシャレして揃って吐きにきているのではない。突発的な現象なのだ。
居酒屋さんで飲み過ぎて、吐くことを覚悟して屈んだ際、この嘔吐禁止シールが目に入り、「あ、ここは嘔吐禁止なのか」と嘔吐を留まる人は、果たして100人中何人いるのだろうか。

■スッと入ってこない

「立入禁止」や「駐車禁止」という標語は、長年あちこちで使われているので、街でこの言葉が突如現れてもスッと理解できる。しかし、いきなり「嘔吐禁止」と当たり前のように無機質に主張されても、なんだか意味が腹に落ちてこない。80年代の流行語を聞かされたような気持ちになる。それに「立入禁止」や「飲食禁止」は、自分も当事者としてこの標語を守らなければと思えるのだが、いきなり「嘔吐禁止」と言われても、「別に吐きたいと思ってないわ」と反抗心を抱いてしまう。店主直筆で「ここに吐かないで下さい!」と書いた紙が貼られているのなら、気持ちが込められていてまだ納得できる。だが、メジャーになっていない「嘔吐禁止」という四字熟語がシールとなって売られていて、それを疑いもせずに買って貼ってることに、ボタンのかけ違いのようなズレを感じてしまう。

■シールの効用範囲はどこまで

それに「嘔吐禁止」シールの効用範囲も疑問だ。「立入禁止」は、今僕がいる手前から、向こう側に行ってはいけないのだな、と分かる。だが、道の途中で突然「嘔吐禁止」を宣言されても、はなから嘔吐が許可されているとは知らされていなかったから、どこからどこまでが禁止ゾーンなのか分からない。じゃあさっきまでの道は嘔吐が許可されていたゾーンなのかなと思ってしまう。へそ曲がりな坊主は、そのシールが貼ってある1m隣に、「ここなら良いのかな」と、吐いてしまいそうだ。

■美しくない

このシールのダメなところは何より美しくないところだ。吐瀉物はもちろん全く美しくない。繁華街を歩いていて、道に吐いた跡があったら「うわっ」と目を背ける。だが、あくまで吐瀉物は一時的なもので流せばなくなる。しかし、この「嘔吐禁止シール」は常にそこにあり続け、文字情報でもきつい「嘔吐」を見せつけてくる。ゴキブリホイホイをリビングの真ん中に鎮座させて、「ゴキブリに気を使っています」と言われてる気分だ。そこに偶然ある吐瀉物より必然的に貼られた「嘔吐禁止シール」の方が醜い。

って思って歩いていたら財布を無くした。

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