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和菓子No.3 西湖(紫野 和久傳)

今回の和菓子は、京都を代表する料亭《紫野 和久傳》さんの
おもたせの代表品、れんこん菓子「西湖」
蓮根のでんぷん質である蓮粉に、和三盆糖と和三盆糖蜜を加えて練り上げ、二枚の生笹で包んだ生菓子です。
もともと蓮粉は、蒸し器で温めて塩と醤油で味付けされたものが、
餡をかけたりお出汁をはった椀物の「椀だね」として
料亭で使われていました。


※椀だね
 吸い物の中心になる実のこと。
 (例)魚介類・鶏肉・練りもの・豆腐・湯葉など
食育大辞典 食と健康の情報サイト より
https://shokuiku-daijiten.com/mame/mame-1263/

【「れんこん菓子 西湖」の誕生】

~料亭のお菓子としての「西湖」~

「西湖」は、蓮粉を使った椀だねが蕨餅に似ていたことから、
夏場のお菓子として使えるのではないかと、
和三盆糖を加えて練り上げたものを
料理の最後にお菓子として出すようになった
ことが始まりで、
笹で包むスタイルもこの頃に考えられたそう。
笹紐の結び方にはこだわりがあり、
粽のようにぐるぐると巻き付けて結ぶ方法では中身が強ばってしまうので、
独特の食感を活かすために、
野菜を束ねるときのような今の結び方になった
のだとか。

~おもたせとしての「西湖」~

その後、おもたせの店「紫野和久傳」が始まり、
料亭の「西湖」をお弁当に入れたところ、たちまち評判になりました。
そこで、単品での販売を考えたそうですが、
もとは料亭の生菓子なので日持ちしません
時間が経つと硬くなったり、色が濁ったりと
さまざまな問題が起こります。
そこで、いつでも料亭の味を美味しく食べられるようにと
当時の料理人さんが調合や材料を変えて試行錯誤を重ねた結果、
おもたせとして販売できるようになりました。

西湖の始まりが椀だねだったなんて驚きです!
料亭のお料理からお菓子に発展することもあるんですね!

では次に、西湖(せいこ)と名付けられた理由について探ってみましょう。


【「西湖」という名の由来】

名の由来について、和久傳さんのオンラインショップの「西湖」の説明では
以下のように書かれています。

〈西湖〉は中国・杭州の景勝地で、蓮の花が浄土のごとく咲き誇る美しい湖が名前の由来です。蓮は泥にまみれず清らかに咲くことから、花の君子として尊ばれ、愛されてきました。紙箱には、数ある花の中で蓮を最も愛した中国・北宋の儒学者・周敦頤の「愛蓮説」が記されています。
紫野 和久傳 オンラインショップ より
https://shop.wakuden.kyoto/shop/pages/column-seiko.aspx

中国の杭州(ハンジョウ)「西湖(シーフー)」と呼ばれる
蓮の花が咲き誇る美しい湖
があり、
和久傳さんの「西湖(せいこ)」はこの湖が名前の由来のようです。
(杭州の西湖がどんなところか気になる方はぜひこちらをどうぞ↓↓↓)

https://www.ana.co.jp/travelandlife/article/000266/

れんこん菓子だから、蓮が美しい湖の名を付けたという
その発想が素敵ですよね。
しかも「西湖」の紙箱に周敦頤の「愛蓮説」を記してあるなんて、
徹底した蓮へのこだわりに唸らされます!


というわけで、いろいろと興味深いことが知れたので
最後に、「れんこん菓子 西湖」を食べた感想を。

れんこん菓子 西湖

見た目はまさに蕨餅のようです。
でもプルプル感が蕨餅とは違いました。
同じようにぷるんとはしていますが、
蕨餅以上にねっとりしていています。
そして、食感も蕨餅のようなトロトロではなく、表面上はねっとりしているのに、
口に入れると案外スっととろけます
「これが蕨粉と蓮粉の違いか!」と実感しました。
さらに、その独特の甘さにも驚きました。
蓮粉に練り込まれている和三盆糖の甘さでしょうね。
ただ、この甘さは、
甘ったるい、くどさのある甘さではなく、
とても上品な甘さで、しかも、まろやかです。
普段から甘みの強いものがあまり好きではない私ですが、
このお菓子はなぜか嫌になりません
むしろやみつきになる甘さで、いくらでも食べたくなります。
不思議ですね。
お抹茶と共にいただきたいお菓子でした!


《紫野 和久傳》
オンラインショップ↓↓↓

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